表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
第七魔導小隊戦記(仮)  作者: 仙崎無識
第一部:魔導師試験
6/54

賑やかな夜

階段を下りると、先程よりも人が増えており、カウンターもテーブルもほとんど埋まっていた。



さっきの女の人は俺たちを角の方にあるテーブルに案内すると奥の壇上に戻り、再び歌を歌いだした。


「あの女の人は何者なんだ?」


俺がカインに聞くと、

「ああ。サーシャ・マグノリア。ここの専属歌手で、傭兵・魔導師ギルド「戦乙女の魔剣(ヴァルキリーソード)」の看板娘兼ギルドメンバー。専門は魔導回転銃。もちろん魔導師」


カインがさっきカインの母さんが運んできた料理にありつきながら答えてくれた。



俺も出された食事に手を付ける。新鮮な野菜を使ったサラダに、根菜類をふんだんに使った牛乳ベースのスープと、昼間に食べたものと同じ甘辛いソースに漬け込まれた肉を炭火で炙ったもの、そして雑穀のご飯。どれも美味し過ぎる。


「やっぱり美味しいな、カイン。・・・カイン?」


カインが奥の壇上を見上げる。


「おー、あれ、今日だったのか」


何がだ?




「アーク。お前も見てみ」


カインに言われて見た先には、


キイスの頭ほどもあるパンと、ちょっとした本くらいの厚さのある肉、バケツほどの容量がありそうなジョッキに注がれた酒と、大食漢3点セットが壇上のテーブルの上に置かれていた。



「あれ、何なんだ?」

カインに問うと、


「ああ。うちの恒例行事。「戦料理完食大会」、まあ大食い大会だな、簡単に言えば」



なるほど。


「あれ全部食いきったら今晩の夕食代チャラ。時間制限は確か一時間。まあ今まで食いきった奴は一人しかいないけどな」


あんな量のパンと肉と酒を食える人類がこの世に存在するのか。



「どんな人なんだ?」

好奇心に負け、つい聞いてしまった。



「ああ、ここに出入りしているギルド登録傭兵の一人で、マックスっていうおっさん。マックスは魔導が全然使えねーけど、魔導師とバトっても負けないんだ。よく魔導師たちとチーム組んで仕事に行ってる」



一般の人で大食いで魔導師の魔導より強い?


今、俺の中で、ものすんごいマックス像が出来上がりつつある。



キイスは壇上に見向きもせずにもくもくと料理を食べ進めている。いつの間にかデザートまで頼んでいたようだ、美味しそうな果物を使った焼き菓子が皿の上に載っている。





「おい、おっさんはねーだろおっさんは」


急に声が聞こえたので声のする方向を見てみると、


「ちょいマックス!!締まってるって!」


カインが長身の男性に締め上げられていた。


話の流れからすると、くすんだ金髪に、茶色の目をした、この長身の男性がマックスというらしい。俺の中のマックス像からするとかなりかけ離れているので、心の中で謝っておいた。



「帰ってきてたんだな、マックスおにいさん」

カインがぜはぜはと息をしながらマックスさんの方を見る。



「まあな。っと、この二人は?」


マックスさんが俺とキイスに気付く。


「ああ、こっちがアークでそっちがキイス。試験会場で出会ったんだよ」


カインの大雑把な説明。一応頭を下げておく。


「ほえ~ん。子供でも魔導師試験を受けるとは・・・時代は変わったもんだな~」


マックスさんが手を差し出す。どうやら握手と見て良さそうだ。


「俺はマックス・ジェラール。マックスでいいぜ。よろしくな」


「よろしくお願いします」


「マックスお兄さんよろしくお願いします~」


マックスさんと握手すると、彼は瞬速でカインの方を振り返り、



「見な、キイスはちゃんとお兄さんって俺を呼んでくれたぜ」

と、ドヤ顔でカインに報告した。


「はいはい俺が悪かったですよ~マックスおにいさん~」

カインが投げやりな感じでいう。・・・このやり取りは見てて面白い。




「全く・・・ここに居たんですかマックス。いつもすぐに居なくなるから探すのに苦労しますよ」

「まーマックスに関しては日常茶飯事じゃん?」


新たに声が聞こえてきたので、振り返ると、眼鏡をかけた緑の髪の男と、紺色の髪の男が立っていた。


この人たちは誰なのかをカインに聞こうとしたら、


「あ!師匠達も帰ってきていたんですね!」




カインが立ちあがりお辞儀をする。さっきのマックスの時とは大違いだ。師匠ということはこの二人がカインに魔導やら短刀の扱い方やらを教えたのだろうか。



「師匠だなんて恥ずかしいことこの上ないですよ・・・」


「それはそーだな。で?この二人は何者なんだカイン?」


緑の髪の男と紺色の髪の男の視線がこちらに向く。


「ああ、この子らはカインの受験友達だってさ」


赤い髪がアークで、金髪がキイスだってよ、とマックスさんが酒を片手に戻ってきた。


一応頭を下げておく。



「成程。カインをよろしくお願いしますね、アーク君、キイス君。私はエヴァン・マグノリア。そこで歌っているサーシャの兄です。専門は鏡面(ミラージュ)魔導で、専ら後方支援が主な役割です」


緑の髪の律儀そうな男の人:エヴァンさんと握手をする。鏡面魔導ということは、反射したりするのだろうか?


「俺はザイン・フォント。マックスの幼馴染で、腐れ縁ってとこだ。ナイフ専門の傭兵で、カインに頼みこまれてナイフの扱いを教えてる。っつーことでよろしく!」


紺の髪のザインさんが勢いよく肩を叩く。キイスなんかは勢い余って先ほどの焼き菓子に顔をつっこみそうになっていた。


「なあ師匠とマックス!今回の任務の話をしてくれよ」


カインが好奇心にあふれたまなざしで三人の方を見る。




「俺らも積もる話をしたいところなんだが、なんせお前らは明日から試験だろ?だから話は試験終わってからな」


そう言ってマックスさんが酒を呷る。


「そうですね、カイン君もアーク君もキイス君もそろそろ切り上げて早めに休息を取ることをお勧めしますよ」


なんせ試験は長丁場ですから、とエヴァンさんが丁寧に諭す。


「うんうん。マックスとエヴァンの言うとおり!子供は早く寝た方が良いってことよ!」

ザインさんは・・・もうすでに出来上がりつつあるようだ。


カインは残念そうな顔をしていたが、キイスが舟を漕ぎつつあったのでしぶしぶ風呂に入りに行くことにしたようだ。


俺は頭を再び下げて、カインはキイスを背負っていったん部屋に戻り、三人で風呂に入りに行くことにした。


登場人物紹介

アーク・トゥエイン:赤髪黒目の少年。山間の村ローン出身。15歳。前衛職。

カイン・ソリダスター:黒髪黒目の少年。首都ファリア出身。15歳。前衛職。

キイス・ハイヴェルト:金髪碧眼の少年。ローンの隣村ミクラン出身。10歳。後方支援の回復系統。

サーシャ・マグノリア:緑髪茶色眼の女性。ギルド「戦乙女の魔剣」看板娘兼魔導師。24歳。

マックス・ジェラール:金髪茶色眼の男性。ギルド「戦乙女の魔剣」傭兵。27歳。大剣遣い。

エヴァン・マグノリア:緑髪茶色眼の男性。ギルド「戦乙女の魔剣」魔導師。28歳。後方支援の予知系統。鏡面魔導師。サーシャの兄。

ザイン・フォント:紺色の髪に群青色の眼の男性。ギルド「戦乙女の魔剣」傭兵。26歳。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ