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第七魔導小隊戦記(仮)  作者: 仙崎無識
第一部:魔導師試験
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一夜漬けでは勝てない~系統別の受験生の会話

往々にして、一夜漬けというものはあまり成功しない。




特に、魔導師の世界では。


キイスのように日頃の訓練の延長線上にあるなら試験に向けての最後の調整、になるが、流石に出会う人全てが知り合いであるローンとは違いここは首都で今は友達の家に泊まらせてもらっている状態だ、下手に剣の素振りとか首都一周とかしたら迷惑がかかる。



というわけで、一応魔導書の読み直しと、鍛練を実施することにした。


「なあ、アーク」


俺の隣で短刀(ダガー)二本を器用に操るカインが片腕立て伏せをしている俺に聞く。


「・・・何だ?」


「アークはどの系統で受験するんだ?」



そういえば言っていなかったっけ。



魔導師試験は大きく分けて二つ、全部で四つの系統に分かれている。

大きな分類として敵陣突破と後方支援があり、敵陣突破には更に前衛職と後衛職がある。



前衛職は先陣を切って戦端を切り開いていくのがその役目である。もちろん一番体力も要るし、モロに敵の魔導を食らう可能性が高い。また、前衛職が倒れれば後衛職及び後方支援が窮地に陥るため、どんなに戦況が思わしくなくても退くことを許されない。過酷な役目だが、魔導師の花形だ。魔導師試験も受験人数が一番多いのがこの系統である。・・・その分死亡率が高いので受験生が多い方が都合が良いらしいという恐ろしい話をどこかで聞いたことがある。できれば早死にしたくない。



後衛職は逆に後方から攻撃支援を行う。遠距離魔導武器を使用しての前衛職のサポートがメインだが、前衛職が倒れたときは代わりに戦わなければならなくなる。部隊編成にもよるが中距離~遠距離をカバーしつつ万が一には近距離を務められるような柔軟さが求められる。また、敵に気付かれずに攻撃、調査を行えるので斥候などを任せられることもある。所謂オールラウンダーというものなんだろう、俺には向いていそうな気がしない。




後方支援には回復系と予知系がある。

回復系はその名の通り負傷した魔導師、一般兵を治療するのが主な目的である。自分の持っている魔力を治癒に特化した魔導に変えることはかなり難しく、扱える人間が少ないにもかかわらず、戦場で酷使される可能性が高い系統だ。普段ならば国中の治療院に配属されるが、現在は戦争中のため、国の多くの回復系魔導師が前線に駆り出されているようだ。 部隊の中では唯一の医務要員であるため、いかなる戦場においても部隊の人間を生き残らせるという絶対的な役目があるので、場合によっては前衛職よりも体力が求められる。 回復系の高位魔導師は自分の魔力を治癒から一歩進んで相手を操るレベルの魔導に変えられるらしく、いざというときは部隊の人間を操って戦ったり、敵を操って同士討ちさせることができるらしい。そしてこれも聞いた話だが、回復魔導師は数が少ないので試験に通りやすいとか。自分にはその能力は無いが、少し羨ましい。




予知系は回復系よりもさらに数が少ない。自分の魔力を微粒子状に変化させ、戦場にばらまいて相手の様子を探ったり、相手の思考を読み取ったりする。回復系が予知系を兼任することもあるらしいが、大体は予知ができないか、外れるかのどちらかである。予知系は大した攻撃力はなくてもいいらしい。というのも、相手の攻撃を事前に察知することが出来るからだそうだ。予知系の魔導師は血統であったり、特別な条件下でその能力を開花させるらしい。少なくとも俺には先は見えない。見えていたら、少なくともカインに迷惑をかけることにはならなかったはずだ。・・・この方が楽しいので俺としては問題ないのだが。




と、一次試験で問われたような内容を頭の中で整理したあと、


「俺は前衛職だよ。・・・カインは?」

自分の系統を答え、カインの系統も尋ねる。


「おう、奇遇だな。俺も前衛だよ」

カインがあっけらかんと言う。


「あ~確か、講堂で会った・・・誰だったっけな? あの、キイスに絡んでいた奴ら、も多分前衛だな」


やはり前衛職を目指す人間は多いようだ。


「まあ良かったぜ~。同じ系統の友人がいてさ~」

試験中退屈にならずに済むしな~♪と独りごちるカイン。



「俺も初めて首都に来たからどうかと思ってたけどさ、同じ系統でしかも宿に泊まらせてくれる友人ができて良かったと思う」


このままいけば、本当に三日間一緒に受験することになるかもしれない。それはとても嬉しいことだ。合格云々にかかわらず、良い友人ができたという点で試験に来てよかった。



「キイスは?」


カインが聞くと、キイスが振り向いて


「僕は回復~♪」

と、やはりというか何というか、凄い答えが返ってきた。


「お、おお・・・やっぱお前すげえ奴だぜ・・・」

カインが若干退き気味にキイスを褒める。


10歳かそこらで人間の魔力を読み取ってなおかつ回復系統志望とは。俺はもしかしたらとんでもない天才と出会っているのかもしれない。




すると、急に扉が開く。顔を覗かせているのは若い女性・・・さっき歌を歌っていた人であった。


「三人とも下に降りてきな。夕食の時間だよ」


俺たちはその人について部屋を出た。


登場人物紹介

アーク・トゥエイン:赤髪黒目の少年。山間の村ローン出身。15歳。前衛職。

カイン・ソリダスター:黒髪黒目の少年。首都ファリア出身。15歳。前衛職。

キイス・ハイヴェルト:金髪碧眼の少年。ローンの隣村ミクラン出身。10歳。後方支援の回復系統。

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