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第七魔導小隊戦記(仮)  作者: 仙崎無識
第一部:魔導師試験
3/54

宿探しは自己責任で

「以上をもちまして、試験説明会を終了いたします。この試験で怪我や万が一死亡といったことになっても、自己責任となっておりますのでご理解ください。それでは明日の午前九時に、再びこの講堂前でお会いしましょう。健闘を祈っております」



試験官の話が終わり、皆が席を立ちだす。再び試験前の雑然とした空気が戻ってきた。



カインが欠伸(あくび)を噛み殺しつつ大きく伸びをして立ちあがる。


「ふぁ~あ。あの試験官の話マジ眠かったぜ~。俺の一個前の席の奴なんか船漕ぎまくってたしな」

「確かに。・・・さっき最前列に座っていたおじいさんが眠っていたのかと思いきやどうやら生死の境を彷徨ってたらしく、試験官が慌てて医者を呼びに行ってるのを見た」




俺の話に大げさなリアクションを返すカイン。


「あの試験官の話の詰まらなさは殺人級かよ!?」


そういうことになるな。うん。




俺たちがくだらない立ち話をしていると、キイスが歩いてきた。


「ところで、アークにキイス」


カインが筆記用具などの片付けをする俺と、カインから飴を貰っているキイスに聞く。



「何だ?」


「お前ら、宿は取ってんのか?」











たらりと背中を嫌な汗が伝う。俺は自分の手相に集中しながら『魔導諸原則』の規則を思い出そうとし、ささやかな現実逃避を行う。キイスは素直に首を横に振っている。


いくら山育ちとはいえ、寒風吹きすさぶ首都の石畳の上で野宿をしていたら氷魔導を使わなくてもこの世とオサラバできそうだ。この場合も「自己責任」なんですか、試験官様。




俺とキイスの反応を見たカインは呆れたように肩を竦め、

「しゃ~ね~な~。どうせそんなことだろうと思ってたぜ。・・・今回は特別サービスだ、俺の家に三食飯付きで一晩泊めてやるよ」


もちろん無料(タダ)でな、と破格の条件を言ってのけるカインに礼を言う。やはり持つべきものは良き友人だ。



俺とキイスはカインの後について講堂を出た。


そんな俺たちの様子を女の子が見ていた、なんて、俺は気が付きもしなかった。



* * * * * * 


首都ファリアは中心にある王宮と主要施設の周囲を一本の大通りが囲んでおり、その大通りから網の目のように狭い路地や裏通りが走っている。なんでも、首都の防衛として、それが最適なんだそうだ。敵が侵入してきた際に、道が入り組んでいたら同士討ちや騙し討ちにあいやすくなるというのが一番の理由らしい。



「だから、王宮魔導騎士団は入団テストの際に首都全ての道を知っているかどうかテストされるんだ」


カインの家に着くまでに、俺たちは首都のことについて結構詳しくなった。首都の外門の抜け道とか、首都一美味い(カイン談)パン屋のパンの焼きあがり時刻の計り方とか、物価の変動とか、色々なことをカインは知っている。



そんなこんなで、講堂を出てから30分くらい歩き、

「着いたぜ~。ここが俺の家だ。ま、ゆっくりしていってくれよな!」

カインに案内された場所は、




三階建ての木造の建物に、広々とした玄関、入り口は開け放たれ、中からは陽気な音楽が聞こえてきている。一言でいえば、



「「・・・酒場?」」



「兼宿屋だ」

俺とキイスのハモリにカインが付け加えた。



よくよく見てみると、真鍮製の年季の入った看板がぶら下がっており、"戦乙女の宿木"亭~宿泊、宴会、何でもござれ~ とかろうじて読める文字が入っており、天使と、天使が寄りかかる樹のイラストが描かれている。オープンテラスにはまだ昼過ぎなのに酒を飲んで歌っているオッサンがいるが。



「と、取り敢えず入った入った!!」



カインに背中を押され、俺とキイスは "戦乙女の宿木"亭に足を踏み入れた。



登場人物紹介

アーク・トゥエイン:赤髪黒目の少年。山間の村ローン出身。15歳。

カイン・ソリダスター:黒髪黒目の少年。首都ファリア出身。15歳。

キイス・ハイヴェルト:金髪碧眼の少年。ローンの隣村ミクラン出身。10歳。

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