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第七魔導小隊戦記(仮)  作者: 仙崎無識
第一部:魔導師試験
24/54

魔導師試験二日目:団体試験(5)~各々の戦い(上)~

首都ファリア北区にて。


一人の強面の大男が、息せき切ってカインの実家にして宿屋兼食堂「"戦乙女の宿木"亭」に入ってきた。



「姐さん!!大変なことが起こってるぜ!!」


そんな大男の様子を気にもかけずに、姐さんと呼ばれた女性――――――ティナ・ソリダスター――――――は、夕食の仕込みをしている。何せ彼女の甥とその友人は現在試験真っただ中だ。今日も帰ってきた彼らはお腹を空かせているに違いない、彼女はそう考えていた。


「なんだい、チャーリー。また奥さんに逃げられた?」


ティナの冗談に飲み仲間(別名:昼間っから酒飲んでる暇人)、が笑う。



息を整えもせずに、チャーリーと呼ばれた男は頭を振り、



「カインが、というよりカインのチームが、あの(・・)ノーマン兄弟のチームと試験で戦ってるんだって!!!」


と叫ぶ。



その知らせに対し、その場にいた酔客(ひまじん)達がどよめく。


「なんだって!?」



* * * * * *



ザッヘルドの持つ槍の先端が揺らめいた瞬間、咄嗟に槍の延長線上から逃れる。


数刹那後には、奴の前後50m程にわたって火焔が(はし)り抜けていった。






しばし俺、唖然。






「そんなに驚くほどのことではないだろう?俺が使っているのは只の火炎魔導の一種だ」



槍の回転。



俺の側頭部を狙う石突に、咄嗟に身を屈めて避けることで対処する。



ええ、知ってます。知ってますとも!ザッヘルド(アンタ)の使ってる魔導が単に武器に火焔を纏わせただけだってことは!!



ただ、範囲の桁が違いすぎるだろ!!


そう心中で絶叫しつつも、意外と頭の中は冷静なようで、ザッヘルドの槍を避けたり魔導剣で防いだりしながらもさっきまで背中に差していた魔導杖を手に持ち、淡々と補助発動語を紡ぐ。




「相似なる一対 模倣の想像 双子(そうし)の踊り 豪雨の(ぼや)き―――――



双子の幻影(ジェミニ)』」




魔導杖が、俺に姿を変える。



双子(ふたご)の幻影」は、俺の模倣(コピー)を作ることが出来る黄道魔導だ。



「いかなる手を使ったのかは分からないが・・・分身(ダブル)か。ふん、面白いな」




だが、所詮は、偽物(コピー)




そう言うと、俺と俺の分身との攻撃を受けながらもザッヘルドは二言三言何かを呟き、青い炎で槍全体を覆った。




* * * * * *



「はい、おしまい」




始めに(つが)えた矢で相手の後衛職:スフェラ・イェーガーの猟銃を使い物にならないようにし、


続いて(つが)えた矢で相手の陣地の半分を破壊せしめたライラは、一息つくと、櫓台(やぐらだい)の上から

中央部を見下ろした。


右側――――――ライラから見て王城側――――――では、アークとザッヘルドが戦っており、左側――――――ライラから見て市街地側――――――では、カインとバークレイズが戦っている。



「援護射撃は必要無さそうね」



二人の様子をみてそう判断したライラは、玉さえ壊すことが出来れば第七小隊(こちら)が勝利するだろうと考えていた。



『何としてでもここで魔導師試験に合格しないとね・・・訳分かんないどこぞの御曹司と政略結婚させられちゃうし、何よりお祖父ちゃんやお父さんと一緒に戦えないもの!』


ライラは拳を握りしめ、戦況の確認を続けることにした。




* * * * * *




「エリアーデさん♪」


エリアーデが操岩人(ゴーレム)を作り上げ、いざ出陣せんと意気込んでところに、そんな声が降ってきた。



「その声は、キイス・ハイヴェルト!?」


エリアーデが顔を上げると、砂で出来た巨大な体躯の(ドラゴン)が、第一小隊陣地の上空を飛んでいることに気が付いた。



「何なのよ一体!!」


少々ヒステリック気味にエリアーデが叫ぶ。今見ている現実が、エリアーデの予想をはるかに超えていた。


と、竜の背中から金髪の頭がひょっこり現れた。




「えへへ。エリアーデさんが操岩人(ゴーレム)作ってたから、僕も竜作っちゃった♪」



非常に楽しげに笑うキイス。その様子が、エリアーデには悪魔の微笑みにしか見えない。


自分の知っている現実(じょうしき)以外を信じ切れず、エリアーデが呟く。



「そんなすぐに竜が作れるわけが・・・」





「作れるよ?竜に(・・)必要な分の(・・・・・)砂粒に(・・・)操作魔導を(・・・・・)かけさえすれば(・・・・・・・)



回復系統の魔導師ならば確実にえげつないと分かるような芸当を、いとも簡単に言ってのけるキイス。



「出来たからって普通やってみようと思うわけ?あなたがここで勝っても私たちの玉を壊せなければ試験は合格にはならないのよ!」


最初は随分と取り乱していたエリアーデではあったが、試験の本質(・・・・・)を思い出し、逆に開き直っていく。



「そうよ。そうだからこそ、私はザッヘルドが居る組に頼み込んで入れてもらったの・・・」


そんなことを呟くエリアーデの様子を気にもかけずに、



「知ってるよ」

変わらぬ笑顔でキイスはエリアーデの言を肯定する。



「だから、僕は操岩人(ゴーレム)を押さえに来たんだ。玉はアークお兄ちゃんやカインお兄ちゃんに任せるよ」


だから、その岩の塊は消えてね♪


キイスの砂竜が、エリアーデの操岩人(ゴーレム)を破壊する。なす術のないエリアーデもそれ諸共に落下する。




「終わった~。後はアークお兄ちゃんとカインお兄ちゃんの援護だね♪」




その様子を上空から見届けたキイスが竜の背中に乗って練兵場中心部へと舞い戻っていく中、エリアーデは操岩人(ゴーレム)の残骸の間で一人笑みを浮かべていた。









「何があったとしても、勝つのは第一小隊(私たち)よ。だって第七小隊(あなたたち)には玉は見つけられないもの」


登場人物紹介

アーク・トゥエイン:赤髪黒目の少年。山間の村ローン出身。15歳。前衛職。星天魔導遣い。武器は魔導剣。

カイン・ソリダスター:黒髪黒目の少年。首都ファリア出身。15歳。前衛職。幻惑魔導遣い。武器は魔導短剣。

キイス・ハイヴェルト:金髪碧眼の少年。ローンの隣村ミクラン出身。10歳。後方支援の回復系統。回復・操作魔導遣い。

ライラ・ホークウッド:青髪青目の少女。聖ノルウェン王国軍閥の一門、ホークウッド家のお嬢様。アークやカインより1、2歳年上。後衛職。武器は魔導弓。

フラム・マギラ:水色の髪に、左目が黄色、右目が蒼色という風貌の青年。18、19歳くらい。予知系統。武器は魔導数珠。

ザッヘルド・ノーマン:前衛職。第一小隊。武器は魔導槍。茶髪に鳶色の目の長身の男性。火炎魔導遣い。

バークレイズ・ノーマン:前衛職。第一小隊。武器は魔導抓。雷撃魔導遣い。

エリアーデ・クラン:回復系統。第一小隊。回復・操作魔導遣い。

スフェラ・イェーガー:後衛職。第一小隊。武器は魔導猟銃。

ガルガド・ログリバー:予知系統。第一小隊。予知魔導遣い。

ティナ・ソリダスター:「戦乙女の宿木」亭オーナーにして「戦乙女の魔剣」マスター。『炎術師』の異名を持つ。

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