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第七魔導小隊戦記(仮)  作者: 仙崎無識
第一部:魔導師試験
23/54

魔導師試験二日目:団体試験(4)~試験、開始~

"それでは、これより二日目の試験を開始する!!両小隊、それぞれの陣地へと移動せよ!"




強化魔導によって強化されたっぽい試験官の声が、練兵場内に響き渡る。



俺たちが控室を出ると、幅1km、長さ3kmほどの長方形のような形をした模擬戦場が設営されていた。


それぞれの両端に、陣地と思われる場所があり、遠距離魔導用の櫓台(やぐらだい)、自軍本部を模した簡易建物が設置されている。



もちろん、戦場の中央部に近づくにつれて平坦な砂地になっていくが、いくつかの(トラップ)仕掛け(ギミック)はありそうだ。


指示通りに自軍本部――――――『7』という数字が書かれた建物――――――に入ると、机の上に握り拳ほどの大きさの透明な玉が置いてあった。その玉にも数字が書かれている。



再び試験官の声が響く―――――――――今度は違う試験官の声だった。

"第一試験場の諸君。君たちには自軍の最奥の建物内にある玉を守ってもらう。ルールは簡単だ。その玉が相手に破壊された瞬間自軍の負けが決定する。逆に自軍が相手の玉を破壊すれば試験に合格する。もし試験終了時刻の12時まで両者共に玉を守り続けた場合、試験内での動きや戦略等で優劣を判断する。・・・それでは試験を楽しむように"




直後に響き渡る管楽器の音。どうやら試験開始のようだ。




小屋の外からは今の所何の音も聞こえない。


「視えました」



フラムさんが呟く。


「相手方の後衛が櫓台に登り始めました。ライラさん、準備を」


ライラが、中距離高角度用の矢を用意し、矢の先に火晶石を取り付ける。


「じゃ、私先に行くから。アンタ達、負けたら承知しないわよ!」



俺とカインの肩を盛大に叩き、ライラが小屋を出ていった。



「キイス君」


フラムさんの言葉に、キイスが笑顔で応じる。


「うん。エリアーデさんが動かし始めたみたいだね」


行ってきます~と言ってキイスも出ていった。



「アーク君、カイン君。バークレイズは左方から、ザッヘルドは右方から今こちらに向かって前進してきています。予想対面地点は・・・」


フラムさんが小屋の窓から見える練兵場の中央部を指す。



「じゃ、俺行くわ。先に中央付近の罠にこっちにだけわかる印でもつけといた方がいいか?」


カインが両の手に短剣を持つ。



流石にそれはカインに対して悪い。



「いや、いいよ。バークレイズ抑えててくれるだけで十分ありがたい」



そう答え、俺も出口に向かう。


「フラムさん、前衛が頼りなくて申し訳ないんですが、ここと、その玉、よろしくお願いします」



「ええ。此処は守りますから。気を付けて」



* * * * * * 



北風が吹きつける中、ひたすら中央まで走る。


とりあえず、何とかして向こうの前衛二人が俺たちの陣地に侵入することは避けなければならない。


向こうの玉を捕りに行くのはそれからだ。



幸いなことに、少し砂埃で練兵場自体の見通しが悪くなっている。向こうの後衛による遠距離狙撃の可能性は低いだろう。




作戦はこうだ。


まずはライラの遠距離射撃で相手の猟銃を無効化。これで俺たちが狙撃される確率が下がる。


で、ライラに余裕があれば向こうの陣地の破壊。


相手側の回復役が操岩人(ゴーレム)を使うらしいので、それはキイスに止めてもらう。(詳しい魔導の仕組みはよく分からないが、キイス曰くそれができるらしい)


フラムさんには玉の守護及び相手の予知妨害と敵陣視察を任せている。


で、俺とカインの前衛組は向こうの前衛の前進を全力で阻止、あわよくば無力化しようってことになっている。前衛を無力化させて、陣地を壊しておけば、あとは制圧、玉の捜索がしやすくなる。戦術の基本原則だと、師匠に教わった。



ある程度の余力を残して走りながら頭の中を整理。多分これでいけるはずだ。



途中いくつかの罠らしきものを避けていくと、だんだん茂みや灌木がまばらになってきた。そろそろ予想対面地点に近づいてきたようだ。



気を引き締め、鞘から剣を抜く。杖は背負ったままだ。


風は強い。陽光は随分と遠い。どこかからか爆発音が聞こえてくる。





すると。





シュッ。





鋭い風切り音が耳元で聞こえた。


反射で避け、反転し、風切り音の主に相対する。



「ふむ。(わず)かに()れたか。・・・まあいい。これから仕留めればいいのだから」



長大な槍を構えた男性――――――恐らくはこの人がザッヘルド・ノーマンだろう――――――が、立っていた。



「君か?俺の相手をするのは」



荒れ狂う強風も、舞う砂埃も一向に介さずに、静かな殺気を湛えた鳶色(とびいろ)の眼が俺を見据える。魔導大会優勝者も伊達じゃないってことかと心中で強がってみる。



「そうですが」


相手がフッと余裕を見せて笑う。


「ならばこの試験、俺が勝たせて頂こうか」





瞬間、構えられた槍の先端が揺らめいた。






* * * * * *



殆どの小隊員が出払った、第七小隊側の陣地にて。


フラムは精神統一をしていた。



「さて。受験生諸君のお手並み拝見といきましょうか・・・」




彼が持っていた紫色の数珠は、妖しく輝いていた。



登場人物紹介

アーク・トゥエイン:赤髪黒目の少年。山間の村ローン出身。15歳。前衛職。星天魔導遣い。武器は魔導剣。

カイン・ソリダスター:黒髪黒目の少年。首都ファリア出身。15歳。前衛職。幻惑魔導遣い。武器は魔導短剣。

キイス・ハイヴェルト:金髪碧眼の少年。ローンの隣村ミクラン出身。10歳。後方支援の回復系統。回復・操作魔導遣い。

ライラ・ホークウッド:青髪青目の少女。聖ノルウェン王国軍閥の一門、ホークウッド家のお嬢様。アークやカインより1、2歳年上。後衛職。武器は魔導弓。

フラム・マギラ:水色の髪に、左目が黄色、右目が蒼色という風貌の青年。18、19歳くらい。予知系統。武器は魔導数珠。

ザッヘルド・ノーマン:前衛職。第一小隊。武器は魔導槍。茶髪に鳶色の目の長身の男性。

バークレイズ・ノーマン:前衛職。第一小隊。武器は魔導抓。

エリアーデ・クラン:回復系統。第一小隊。

スフェラ・イェーガー:後衛職。第一小隊。武器は魔導猟銃。

ガルガド・ログリバー:予知系統。第一小隊。


語句説明

火晶石:魔導石産出の際の副産物である、封入石(ほうにゅうせき)に、火炎系の魔力を封入したもの。この石が割れるときに魔導が発動する。他にも水晶石、雷晶石など色々な種類のものがある。魔導が使えない人間にも使える。



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