表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
第七魔導小隊戦記(仮)  作者: 仙崎無識
第一部:魔導師試験
2/54

知り合い?

 試験説明会開始半刻前の鐘が鳴っても、人々の話し声は消えない。むしろ、盛り上がっているみたいだ。



「なんだか騒がしいな」


 ざわざわとする講堂内が新鮮だ。そんなことを言うと、カインは驚いて俺の方を見て、


「そうか~?首都の市場はここの5倍は騒がしいぜ?」

と返す。


 ここより騒がしいのは、山育ちの俺からすると想像もつかない。

「カインは首都育ちなのか?」

 俺の問いに、

「ああ。そーいうお前は・・・首都育ちじゃなさそうだな」

 乾いた笑いを返すカイン。


 俺は人混みその他諸々の人の多い状況に慣れていないだけだ。という心苦しい言い訳を心の中で考える。


「北部の村ローン出身だよ。・・・つっても分からないか・・・」


 カインの聞いたこともないぜ的な顔を見て俺も乾いた笑いを見せる。出身地の話で俺たち二人が微妙な感じになっていると、



「ぼく~?おうちはどこでしゅか~?」


「ガキは家に帰った方が身のためだぜ~?」



 講堂の後ろの方で、数人の少年(多分俺より2、3歳は年上)が、金髪の男の子(10歳くらい?)を囲んでいた。


 隣を見ると、カインが呆れ返っている。

「全く・・・お約束だぜ・・・」


 俺もその意見には全面的に肯定する。


 少年たちの幼稚な発言(?)に比べると、次に聞こえてきた金髪の男の子の発言は年の割に的を射た魔導分析だった。


「お兄ちゃんたちこそ・・・元の魔導石は質が悪いし、魔力に変な癖があるね。どこで習ったの?」

 若干、いやかなり喧嘩を売っているような内容だが、先に喧嘩を売っているのは向こうだ。案外肝の据わった子かもしれない。



 案の定、


「んだとこのガキ・・・」


 少年の一人が男の子に殴りかかろうとする。試験場での乱闘騒ぎは試験監督に良い印象を与えないとこの少年たちは知らないのだろうか?そんなことを思いつつも金髪の少年を救出しようと立ちあがりかけたとき、


「おいおい、そいつの言ってることは本当だぜ?大人気ね~なぁ~?」


 短刀(ダガー)を二本持ったカインが既に少年の動きを止めていた。動きに無駄が無い上に、速い。

 俺も残りの奴らを剣を鞘から抜かない状態で打ち、男の子に近づく。


「大丈夫か?」


 男の子は振り返って俺を見上げると、こう言った。


「あ!!あの時のおにーちゃん!!」



 ・・・どの時だ?全く記憶にないんだが。


「ええっと・・・」


 俺が返答に困っていると、



「お前、北区のカインか!!」

 カインに動きを止められた少年がカインの方を見て叫んでいた。対するカインは首を傾げ、


「俺のことを知ってるっぽいけど、誰だ?アンタ」

 少年を指差す。少年の方はもちろん怒り狂い、額に青筋を立てている。どうやら向こうも向こうで記憶にないらしい。


 金髪の男の子は自分が持っている鍼を俺に見せた。それぞれについている小さな魔導石をみて、確信する。



「もしかして、隣村の子?」

 ようやく合点がいった。数年前の豪雪の時に雪落としを手伝った家の子供だ。


その子がにっこりと笑う。


「うん!僕の名前はキイス。キイス・ハイヴェルト。よろしくね!」


「俺はアーク・トゥエイン。よろしく、キイス」


 俺たちが仲良くなっている間、向こうでは、


「お前・・・二週間前のことすら覚えてねえのか?」


「二週間前?・・・散歩してたら喧嘩ふっかけられたっつーあれか?」

 カインと少年がまだ話を繰り広げていた。


「それだ!あん時に俺らの仲間は大変な目に遭ったんだぞ!!」


「あ?んなもん知るかよ。俺は正当防衛だ。難癖つけんなっての」


「難癖じゃねえ、抗議だ。こ・う・ぎ!!」


「うっせ~な~。またおんなじ目に遭いたいのかよ~」

 傍で聞いているが、なんとも不毛な話である。



 俺がさっき軽くあしらった少年の仲間も、

「もうやめとけよバルー!!」


「俺らもう三日間便所から出られなくなりたくねえよ!!」

と少年を止めようとしている。というか、一体何をしたんだ、カイン。


「お仲間さんの言うとおり、大人しくしといた方が良いぜ?」

 カインが完璧に舐めきった感じで少年を追い払う。


「くっそ・・・試験中覚えとけよ・・・」

 少年は恨みがましく呟いた後、仲間とともに去って行った。





「お待たせ~。悪いな、面倒な奴に絡まれちまってよぉ」

 カインが全く悪びれずに俺たちの所へやってくる。


「そんなに待ってないけどな。キイス、このお兄ちゃんがカインだ、今しがた俺も知り合いになったところだ」


 キイスはカインを見ると

「よろしくね、速いお兄ちゃん」

と言って、カインと握手する。


「キイス、よろしくな。・・・はぁ~、彼らにもこういったオトナな対応を求めたいもんだぜ。っと、キイスの席はどこだ?」

 カインが聞くと、キイスは結構前の方を指差す。

 この会場は一次試験である筆記試験の成績順に座席が決められている。つまり、キイスは一次試験の成績が相当良かったということになる。キイスの頭の良さに少し驚いたが、これで先ほどの魔導分析に合点がいった。と同時に、俺達はキイスよりも試験の出来が悪かったのか、と少し落ち込んだ。



 先程と同じ鐘が再び鳴る。どうやらそろそろ説明が始まるらしい。

俺たちはキイスと別れ、慌てて座席に座った。

登場人物紹介

アーク・トゥエイン:赤髪黒目の少年。山間の村ローン出身。15歳。

カイン・ソリダスター:黒髪黒目の少年。首都ファリア出身。15歳。

キイス・ハイヴェルト:金髪碧眼の少年。ローンの隣村ミクラン出身。10歳。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ