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第七魔導小隊戦記(仮)  作者: 仙崎無識
第一部:魔導師試験
18/54

作戦会議

"戦乙女の宿木"亭に帰り着く頃には、既に7時を過ぎており、辺りは暗闇に包まれていた。


ローンならば一歩先も見えないような雪&闇に閉ざされるが、流石は首都、辺りは恒常魔導で造られた魔導街灯(メイガスランプ)によって照らされている。



宿兼食堂の一階の扉を開けると、ふわりと良い匂いが漂ってきた。


今更ながらに、謎の三人組との遭遇及びイムラークとの戦い以前にちょっとした食事しかとっていなかったことを思い出し、俺の腹の虫がぐう、と鳴いた。




「おかえり~。三人ともお疲れ様」



俺たちが帰ってきたことに気が付いた店主がカウンターの向こうから入り口まで出てくる。



「ご飯まだでしょ?今出来たところだからちょっと待ってて」



俺たちの空腹具合を見てとってか、店主は昨日と同じテーブルに俺たちが着いたのを確認すると、手早く皿に料理をよそい始めた。



俺たちがテーブルに着くと、隣のテーブルには昨日見たマックスさんとザインさんが座っていた。



「あ、師匠とマックス・・・お兄さん」


カインがマックスさんの眼は笑っていない笑みに「お兄さん」を付け足す。



「マックスお兄ちゃんと、ザインお兄ちゃんだ~」


「こんばんは、マックスさんとザインさん」


キイスと俺も挨拶を返す。


「おう。少年ども。その感じじゃあ試験は上手くいったっぽいな」


「おめっとさん~」


俺たちの表情を見てマックスさんとザインさんは試験通過を読み取ったらしい。



「まだ一日目が終了しただけですけどね」

「そうそう。まだあと二日も残ってんだよな~」

「明日は僕たち一緒に戦うんだ~」



俺とカインの疲れきった声に、キイスの楽しそうな声が重なる。


「ん?それってどういうことだ?」

「一緒に戦うってこたぁ、団体戦?」



マックスさんとザインさんはキイスの発言に興味を持ったらしく、身を乗り出して詳しい話を聞こうとする。


「えっと、二日目は前衛二人、後衛・回復・予知それぞれ一人ずつの計五人でチームを組んで模擬戦をさせられるらしいんですが」



俺が説明をすると、マックスさんとザインさんは大いに盛り上がる。


「それって超楽しいヤツじゃね~か!!」


「アークとカインは前衛、キイスは回復だろ?あとの二人はどんな人たちなんだよ?」


「後衛がライラっていう女の子で、予知がフラムさんっていうマックスさんたちより少し若い男の人なんです」


なんか偶然と成り行きでチームが決まりまして・・・と空笑いを返す。



マックスさんとザインさんが急に真剣(マジ)な顔になる。



「結論から言おう。模擬戦は―――――






ドン。






神妙な顔をしてマックスさんの話を聞いていた俺たちの前に、


バカラの乳を発酵させた食品であるガランを一面にまぶした根菜、

緑菜を刻んだ緑のスープ、エンテのルンパ煮が次々と並べられていく。



「お!うっまそ~」


「いただきます」


「いただきま~す」


カイン、俺、キイスは空腹に完敗したので目の前の料理(ごちそう)を食すことにした。



「姐さん、俺の出番奪うなんてそりゃないぜ・・・」


店主兼ギルドマスターの方を恨みがましく見つめるマックスさん。


「食べながらでも話は出来るからね。まずは試験を終えてきたこの子たちをお腹一杯にするのが最優先だろ」


彼女のもっともな論理に敢え無く撃沈したが、気を取り直してマックスさんが口を開いた。


「模擬戦に限らず、大体の戦いは予知魔導師の良し悪しで決まる」


根菜をつつきながら相槌を打つ。


「まあ予知魔導師自体数が少ないから、居るだけで優位には立てるんだが、腕の悪い予知魔導師が居た場合下手すりゃ全滅、ということになるな」


その予知が外れた場合が怖えからな、とガランを揚げたつまみを食べつつ言うマックスさん。



「次に前衛職がどれ程機動力を保っていられるかがカギだ。特に模擬戦では」


ザインさんが真面目な顔をして言う。今日はまだ酔っていないようだ。



「前衛がしっかり攻めつつ攻撃も喰らわなければ回復は危険な目に遭わずに済むし、後衛も守りに専念できる」



なるほど。


「だからキイス君は余裕があれば二人に魔導防護壁(シールド)を張ってやんな」


ザインがキイスの頭を撫でる。


「そうするね~」


キイスの笑顔。余程頭を撫でられるのが好きらしい。


「で、お前ら二人は確実に護りつつ攻めろ。間違ってもレディを危険な目に遭わせたりすんじゃねーぞ」



これはかなり重要なアドバイスなんだろう、俺たち前衛組はしっかり頷いておいた。



「よし。まーこんなもんだろ。後は対戦相手を見て冷静に分析するこった。強そうだからってビビッてりゃ出る実力も出ねえし弱そうだからって舐めてかかりゃ足元掬われっからな」


「ありがとうございます」


俺が感謝の言葉を述べると、マックスさんもザインさんも破顔した。



* * * * * * 



食事を終え、食器をカインのお母さんの所に持って行くと、「そこらの酒飲みよりもよっぽどか偉大」という称号を与えられ、テーブルに戻ると、カインが眠そうにするキイスをマックスさんに預けているところだった。




「なあアーク」


「何だ?」


「ちょっと付き合ってくんね?」






「っはあ?」






謎の申し出の後、俺が何かを答える前にカインは母親に外出の許可を取り、俺の手を取って歩き出した。





登場人物紹介

アーク・トゥエイン:赤髪黒目の少年。山間の村ローン出身。15歳。前衛職。星天魔導遣い。武器は魔導剣。

カイン・ソリダスター:黒髪黒目の少年。首都ファリア出身。15歳。前衛職。幻惑魔導遣い。武器は魔導短剣。

キイス・ハイヴェルト:金髪碧眼の少年。ローンの隣村ミクラン出身。10歳。後方支援の回復系統。回復・操作魔導遣い。

マックス・ジェラール:金髪茶色眼の男性。ギルド「戦乙女の魔剣」傭兵。27歳。大剣遣い。

ザイン・フォント:紺色の髪に群青色の眼の男性。ギルド「戦乙女の魔剣」傭兵。26歳。


食物名など

バカラ:牛に似た大型草食動物。乳が飲料、発酵食品に、肉は食用になる。

ガラン:バカラからとれる乳を発酵させて作った食品。チーズのようなもの。産地によって味が異なる。

エンテ:食用の鳥類。鴨のような味がする。

ルンパ:多種多様な香辛料をすり潰し、動植物の出汁をからめたソース。


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