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第七魔導小隊戦記(仮)  作者: 仙崎無識
第一部:魔導師試験
15/54

魔導師試験一日目:系統別試験(5)~救世主?~

咄嗟に防御姿勢をとったが、何も起こっていないようである。





「アカン。アカンて。何ぼ敵わん相手でも、目ェ閉じてただ待つっちゅーんは」



前方から聞こえたやや西方海岸部訛りのある声に、恐る恐る目を開くと、



真っ白な見慣れない服に、


深青色の帯を巻いた長身の男性が、


これまた見慣れない形状の剣でもって、


(くすぶ)るサラーサの灼腕(しゃくわん)を目に見えないほど早い斬撃で斬り飛ばすところだった。



カインの方は、金色の長髪を(なび)かせた男性(?)が、魔導を全て封じていた。


周囲に悍ましいサラーサの絶叫が響く。



俺とカインは驚きのために言葉が出ない。



カインの方に居た男性が抉剣(フランベルジュ)をサラーサの心臓に突き立てると、


サラーサは大量の青いクリスタルと、透明なクリスタル二つをぶちまけ、倒れ伏した。



「はい、一丁終わり~♪。やっぱりエレスィはええとこばっか取るなぁ」


俺の前に居た男性が血振りをして、剣のようなものを収める。



カインの方に居たエレスィと呼ばれた男性(?)が品を作る。



「んも~、ヒサヒデったらあ❤何妬いちゃってんの~?」




エレスィさん?の口調に冗談でなく俺とカインの背に鳥肌が立ち、冷や汗が伝う。別な意味で心臓に悪い。



「妬いとらんっちゅうに。誰がお前なんかに妬くか」



ビシ、と中々な音を立ててヒサヒデと呼ばれた男性が、エレスィさんの脇腹を叩く。



「照れちゃって~❤ か♡わ♡い♡い~♡」


「照れとらんわ」




やばい、この空気、誰かが止めなければ永遠に続く。



カインもそう思ったらしく、口を開いた。




「あの~」




「ん?」

「どしたの?」


二人がカインの方を振り向く。


「助けてくださって、ありがとうございます」



カインが頭を下げる。


「危ないところを救っていただきありがとうございました」



俺も頭を下げる。



「ええってええって」


「私たちは最後ちょっと手伝っただけよ~❤」


謎の二人組?の謙遜。


「いや本当俺達だけじゃどうにもならなかったというか・・・」


「万事休す?危機一髪?的な状況だったので・・・」


俺たちは頭を上げられない。


本当に危ない状況だったからだ。




数瞬の後。


「二人とも頭上げぇ」


訛りのある方・・・ヒサヒデさんが俺たちの頭を撫でる。


「も❤ヒサヒデったらずる~い~」


私も頭撫でたいわぁ~❤


というエレスィさんの言葉に俺たちは一瞬固まったが、頭を上げる。



ヒサヒデさんは真っ黒な髪に群青色の眼の人だった。


エレスィさんは金髪に片目が桃色、片目が碧色という不思議な色合いだったが、見た目は完璧に女性である。・・・真偽は定かではない。




「俺らたまたまここらを通りすがっただけやし、なんや危なそうやったから助けただけやって」


「そうよぉ❤そんな気ィつかうことないじゃな~い❤」


「ですが・・・」


「それにな」


それでも言い募ろうとする俺の言葉を遮り、


「ええもん見せて(もろ)たから、それでチャラってことで」


ヒサヒデさんが俺の魔導剣をちょん、と触る。



「・・・」


『ええもん』って星天魔導のことか?



俺が疑問符を撒き散らしていると、




「ほらほら、君たちあの石を集めていたんじゃないの?」



エレスィさんが草むらに落ちている青や透明のクリスタルを指差す。




「いけね!忘れてた!!」


カインが急いで集めに行く。


「本当にありがとうございます、あのクリスタル、俺たちが取るのも何か気が引けますけど・・・」


俺はただただ礼を述べるしかない。


「それはええって。もし借りを返したいんやったら・・・」





ヒサヒデさんがゆっくり近づき、俺の額を小突く。



「もっと強なってな」


「じゃね~♪」



エレスィさんとヒサヒデさんが立ち去る。


「「ありがとうございました!!」」



俺たちは感謝の意を表して、見送るしかできなかった。


「あの人たち、何者なんだ?」


俺の問いにカインは肩を竦め、



「知らね。ただ、物凄く強いってことと、助かったってことは言えるぜ」


そう言った。



集まったクリスタルを上手に分けたら、ちょうど二人とも25個になったので、クリスタルを入れる袋にカインの罠を作動させて、俺たちは頂上を目指すことにした。






* * * * * * 



「珍しいじゃない?アナタが他人を助けるなんて」


アークとカインの居た台地から脇道に逸れたエレスィが、ヒサヒデに話しかける。


「そお?俺って普段から超いい人なんやけど」


エレスィは厳しいな~


と、茶化すヒサヒデ。



「冗談言ってないで。ねぇ、なんで?」


エレスィの追及に、ん~、としばらく逡巡して、




「これから、俺らの前に立ちはだかりそうやから?」


と、ヒサヒデが答える。


「だってエレスィも見たやろ?あの黄道魔導。伝説級の星天魔導の更に伝説級の黄道魔導やで?」



絶対相手したいわ~。


などと嬉しそうに言う姿は、まるでお気に入りの玩具(おもちゃ)を見つけた子供のようである。



「全くアンタは出会ったころから変わんないわねぇ~」


エレスィが肩を竦め、ため息を吐く。




そんな二人の所に、全身黒装束の小柄な人影が現れる。


「随分と、お探ししておりました。ヒサヒデ・サナダ様、エレスィ・ファナティコス様」


一礼。無駄のない動作。



「一刻も早く、オークヴァ―ン本国へお戻りください。ヴァンデラー様がお待ちです」



小柄な人影の言葉に、


「あ~はいはい。ま、あと2、3日の内には帰るわ」


「歩きは面倒だけど、リスティヒのおじ様にやっと会えるのね~❤」


やる気(?)の全く見えない二人。慣れたものなのか、人影は伝えるものは伝えたと全く動じずに立ち去る。



「やっぱり特殊部隊は愛想ないな~」


あの二人の方がよっぽどかしっかりしとるわ


と、愚痴を零すヒサヒデに、


「そうね~。黒髪のコなんかモロタイプだったわ~❤」


良い暗殺者(アサシン)になるわよ~❤


と、本人が聞いたら逃げ出しそうなことを嬉しそうに言うエレスィ。



「ま、仕事はしっかりせんとな」


「勿論❤」





二人はそう言うと、常人ならば目に留まらないほどの速さで走り出した。





それ以降、山の付近で彼らを見た者はいない。


登場人物紹介

アーク・トゥエイン:赤髪黒目の少年。山間の村ローン出身。15歳。前衛職。魔導剣、魔導杖使用。

カイン・ソリダスター:黒髪黒目の少年。首都ファリア出身。15歳。前衛職。魔導短剣の二刀流。

ヒサヒデ・サナダ:通りすがりの人。

エレスィ・ファナティコス:通りすがりの人。


魔物など

サラーサ:イムラーク成熟型第Ⅳ期。「山の主」


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