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第七魔導小隊戦記(仮)  作者: 仙崎無識
第一部:魔導師試験
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出会い

 眼前に、抜けるような高い青空を背景にした、目を瞠るほどの大きさの建物が堂々と立っている。




 ついに、俺は首都へとたどり着いたのだ。



 雪深い故郷ローンから、定期の乗合車を乗りついで、約2日。俺は今、首都ファリアに来ている。明日から始まる魔導師試験の説明会が、今日の午後、このファリアにあるスリアンヴォス城で始まるからだ。

 入り口に立っていた厳めしい門番に挨拶をし、受験票を見せる。門番は持っていた紙束に何かをかきこむと、座席表の一角を指差した。どうやら、そこが俺の席らしい。冬の弱々しいながらも温かみのある太陽の下から一転、荘厳な建物の内部に入る。石造りだから当たり前なのかもしれないが、中は寒々としていた。


 見た感じ、国中から集まってきたらしい様々な格好をした人――恐らくは魔導師候補――がざっと100人ほどいる。



 南部出身っぽい丈の長い上着に腰布を巻いている人や、西部出身っぽい頭から薄い布を被って全身を覆うゆったりとした衣服を着ている人。

編み上げ紐の革靴を履き、特徴的な文様が刺繍された上衣とシンプルな下衣を身に着けているのは、東部出身の人だろうか。

勿論というかやっぱりというか、きらびやかな衣装を身に(まと)っているのは首都育ちの人だろう。そして、俺は山がちな北部出身なので、歩きやすい狩猟靴に足首まで保護する厚手の下衣、動きやすいシャツの上から長袖の上着を着ている。



 魔導師、とはいえ昔のようにヒョロく後方から呪文を唱えているようでは今のご時世メシを食っていくことはできない。そんな魔導師はおとぎ話の中だけの存在だ。現代じゃ武器を振り回して炎や氷柱を飛ばさねばやってられないのだ。

 俺は村一番の鍛冶屋、ハンスさんが鍛えてくれた魔導剣と、村の最奥にある長老樹、ノルンからとってきた杖を持って、決められた座席に座っていた。


 すると、

「お!お前、俺と同い年ぐらいじゃん?ラッキー。俺、カインって言うんだ。よろしくな~」


 ハイテンションな声が左後ろから飛んできた。振り返ると、真っ黒な髪に真っ黒な眼の人懐っこそうな少年が立っていた。


「俺は、アーク・トゥエイン。こちらこそよろしく」


名前を名乗り、握手をする。


「でさ、アーク。お前歳いくつ?」


 カインは俺の隣に座ると、いきなり聞いてきた。妙齢の女子ではないので、訊かれたままに答えておく。


「15だけど」


 俺の返答に、カインの顔が輝く。


「俺も~。良かったぜ、俺の隣がムッサイおっさんとか干からびたジイさんじゃなくってよ~」


 微妙に失礼なことを言いながら悠々と伸びをするカイン。一年に一度の試験だというのに、緊張感が無さすぎる。


「俺の隣ってことは、カインの受験番号は俺の後ろ、なのか?」


 一応聞いてみると、おうよ、という返事が返ってきた。


「ま、3日間よろしくな~」


 座席が隣だからといって試験期間中ずっと一緒ということはあり得ないだろうが、取り敢えず頷いておいた。




 説明会開始半刻前の鐘が鳴り響いた。


登場人物紹介

・アーク・トゥエイン:主人公。赤髪・黒目の少年。15歳。山間の村ローンの出身。

・カイン・ソリダスター:黒髪・黒目の少年。アークと同じく15歳。首都ファリアの育ち。

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