第二話 正義の炎 その2
森部高校の放課後、下校途中
あの『森部東病院』の事件からすでに四日が過ぎていた。
潤は、事件の翌日すぐに操を連れて近所の神社へと向かいお払いをしてもらった。そのついでに、あの病院の調査をあきらめるよう操を説得するのも忘れない。しかし、操は相変わらず隣で不満げな様子で文句をもらしている。
あんな目にあったというのに、この精神の図太さだけは見習ってもいいのかもと潤は思う。
その四日の間にちょっとした事件もあった。
昨日、隣のクラスの男子生徒の家が火事になり、その生徒も家族もまとめて亡くなったのだ。今月に入ってこれで二人目になる。おまけにその前に焼死したのも、今回と同じクラスの生徒というなんとも気味の悪い話だった。
この二つの火事のことを聞いた操が、案の定「これは臭いわ! 調査をしましょ、潤くん!!」などといったが、僕はあえて無視していた。
潤達が森部商店街のコンビニの前に差し掛かったとき、潤はいつもの”ゾクリ”という、
背筋を冷たいものが走る感覚を得た。潤がこの世ならざる存在を知覚するときいつもこうなるのだ。
潤がコンビニ脇の路地を霊視ると、そこに一人の老婆が佇んでいた。なにやら悲しげな様子で路地の奥を覗いている。
その老婆からは、まったくいやな感じは得られなかった。潤が普段からよく見る浮遊霊や誰かの守護霊の類だろう。ただその表情が曇っているのが潤は気になった。
…ふとその老婆の霊が潤の方を向いた。潤に自分が見えていることを理解したのか、その霊はひとつ頭を下げると、路地の方を指差す。どうやらそちらに何かあるようだ。
潤は隣に立って携帯をいじっている操をほおって置いて老婆のいる路地に向かった。
「…! …!」
路地の奥からなにやら男の怒鳴り声が聞こえてくる。老婆の横から路地の奥を覗くとそこに見知った顔を見た。
「…てめえ! さっき俺のこと笑ったろ!」
「すいません。…笑ってないです。勘弁してください」
怒鳴りつけてるのは数日前、学校の体育館裏で他生徒に絡んでいた三人組の一人だ。絡まれているのは見知らぬ生徒だが、うちの制服を着ているので同じ森部校生だろう。
どうやら老婆の霊はこれを見ていたようだ。絡まれている生徒の守護霊だろうか?
「嘘を言うな! 俺はわかってn…」
怒鳴っている男がさらに詰め寄ろうとしたとき、潤が見ていることに気づいたようで怒鳴るのをやめた。その男はあからさまな渋い顔をすると「チッ…」と舌打ちをする。絡まれていた生徒はほっとした表情になって、こちらを救世主を見るかのような目で見た。




