第十話 世界魔法結社(アカデミー) その3
「いやあ…世界魔法結社っていうのも喧嘩っ早い組織なんだね。
困ったもんだ…」
道禅はそう言って苦笑いする。イサはそれに返す。
「勘違いしないで下さいよ。我々は別にいつもこんなことをしているわけではありません。
いつも我々の友好の門は開いています。…もしあなた方が、世界魔法結社に所属するというなら、潰す意味はなくなるのです」
「要するに、潰れるか、自分達の傘下に入るか、選択しろということか」
道禅は心底呆れた顔で首を振った。
「悪いがどっちもNOだな。こっちにはこっちのやり方や立ち位置があるんでね、世界魔法結社には入らんよ」
「そうだぜ! それでいいんだ、なあおい!
これで心置きなく潰せるってもんだ!」
ウルズが嬉しそうに手を叩いて言った。それを見て道禅はにやりと笑う。
「さて…そううまくいきますかね?」
そう言ってパチンと指を鳴らした。その瞬間。
「!!」
突然足元から樹木の蔓が伸びて三人を絡めとろうとした。
「く!」
三人のうち二人は見事にからめとられ。そのまま地面へと吸い込まれていく。
その場に残ったのは、蔓の攻撃を避けたウルズ一人であった。
「は! 何のつもりだ? なあおい。
この程度で俺を絡めとろうなんて無駄だぜ」
「ほう…これは驚いた。今のを避けるとは」
道禅は心底感心した様子でウルズを見つめる。
「抵抗した以上、潰されても文句言えねえよな。なあおい」
「抵抗しなくても潰すんだろ?
それより、二人の心配はしなくていいのか?」
「はは…。あの二人は何があってもやられねえよ。なあおい。
心配なんて必要ねえな」
そう言ってウルズは空に手を掲げた。
「武装召喚! きやがれファング!」
その瞬間、ウルズの両手にそれぞれ一本ずつ、獣の牙のような形をした短剣が現れる。
「さあ! 行くぜ妖魔どもの親玉!
俺の牙で切り裂いてやるぜ。なあおい」
そう言ってウルズは武器を構えるが、それを遮るものがいた。
「そうはいかんぞ。貴様!」
それは真名であった。
「ふん…小娘が先に死にたいかよ! なあおい」
…と、不意にウルズの姿がかき消えた。
「何?!」
次の瞬間、真名の体から血しぶきが飛ぶ。
「が!! 速い?!」
そう、ウルズは目にも止まらない速さで、真名との間合いを詰めて、ファングで切り裂いたのである。
「はは! 俺は特務の中でも最高速のスピードを持つんだよ。
驚いたか? なあおい!」
「く…」
「今のは、挨拶代わりだ、次は確実に喉を切り裂くぜ!」
そう言ったが早いか、再びウルズの姿がかき消える。
(ならば!)
真名はすでに呪物を用意していた。それはある術の触媒であった。
<蘆屋流八天法・かさね>
その瞬間、真名もまたその場からかき消えていた。
ズドン!
超高速の攻防ののち、真名の拳がウルズの腹に突き刺さる。
「が!! なんだと!!!」
ウルズはたまらず後方に吹き飛ばされる。
「ばかな? 俺と同じスピードだと…」
ウルズは腹を抑えながらそう呻く。
「まあ…お前のスピードについていく方法はこっちも持ってるということだ」
そう言って真名はにやりと笑う。
『かさね』
それは、蘆屋一族の八つの秘術のうちの一つである。
相手と魂の波長を合わせることによって、相手の戦闘速度と同じ戦闘速度を獲得する術である。
それを使用するには、特別な触媒が必要であるため、そうほいほい使えないのが欠点だが、どんなスピードの敵とも互角に渡り合うことが出来る。
無論、一対一の時しか使用することはできない。
その時、どこからか話しかけてくるものがいた。
「すみません。お待たせしました」
いつの間にか、犬の仮面をかぶった女がウルズの後ろに立っていた。
(ばかな! この俺が気付かなかっただと?!)
驚き顔のウルズをほおっておいて真名が叫ぶ。
「瞬那!」
「はい姫様…。あとは私にお任せください」
そう、その女は蘆屋八大魔王の一人『狗神王代理・瞬那』であった。
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樹木の蔓に絡みとられ地中に消えた二人は、それぞれ鎮守の森の別のところにいた。
イサがふと呟く。
「なるほど…。貴方が私の相手ということですか」
イサの前には一人の男が立っていた。
「一応名乗っておこうかな? 俺様の名前は蘆屋八大魔王『狒々王・笑絃』だ」
イサの目の前の男はそう名乗ってにやりと笑った。
「では…ソウェイルの方には…」
「ああそっちなら…。うちらの筆頭が向かってるぜ」
「なるほど…それは手厚い歓迎ですね」
イサはそう言ってフフフと笑う。
そのころソウェイルは。
「…お前は…」
ソウェイルは、目の前に現れた龍頭の男に声をかける。それに対して、
「私は『毒水悪左衛門』と申します。
とりあえず、『蘆屋一族八大天』の筆頭を務めております。
よろしくお願いしますね。ソウェイル殿…」
ソウェイルの目の前の者はそう名乗ったのである。
此処、道摩府に、八人の魔王のうち三人が集結していた。
『第十話 世界魔法結社 了』




