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呪法奇伝  作者: 武無由乃
第一章 蘆屋の呪術師
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第七話 咲夜VSシルヴィア 術具職人の戦い

「まさか…あなた私に人一で勝てると思っているのデスか?」


シルヴィアはにやにや笑いながら言った。


「三人で挑んで来れば、万が一にも生き延びる可能性ぐらいはできたノニ。ほんとバカネ」


「バカは貴方ですわ吸血鬼…。わたくしを甘く見ると痛い目を見ますわよ」


それを聞いたシルヴィアは、一息ため息をつくとあきれ顔で言った。


「フフフ…私はネ。昔、日本の呪術師と戦ったことがアルのよ。

 そいつは、弟子をたくさん持ってた日本ではソレなりの術者だったようダケど、

 全然手ごたえがなかっタわ…」


「それで?」


「あなたは、そういつに比べて、霊威が弱すぎるワ。

 そんな、低レベルの術者が私に勝てると思うなんてバカというヨリ。

 頭が可笑しいワヨ…」


「……」


咲夜はシルヴィアを睨み付けながら考えていた。

自分の霊力が低いなんてことは昔から知っていることだ。だからこそ、土御門宗家の直系のくせに才能がないと、昔から陰口をたたかれてきたのだ。

そのことで、一時期荒れていたこともある。それが大きく変わったきっかけが、真名との出会いだった。

あの日から、自分は普通の呪術師とは違う道を選んだ。そう、それこそが術具職人アイテムクリエイターの道であった。


「だったら…」


「だったラ?」


「だったらてめえに見せてやんよ!

 術具職人アイテムクリエイターの戦い方ってやつを!!!」


咲夜は素早く印を結んで呪文を唱えた。


「オンバザラタラマキリクソワカ…」


その瞬間、咲夜の目の前に光が現れる。咲夜はその光に両手を入れると、何かを引き出してくる。


「銃?」


…そう、咲夜が光から引き出してきたのは、二丁のブルパップ式小銃であった。


「まさか、そんなもので私を殺そうなんて思っテルの?」


「フン…さあてな…」


そう言って咲夜は二丁の銃を構える。シルヴィアは余裕の表情である。

それも当然、シルヴィアには基本的に物理攻撃が効かないからである。


次の瞬間、咲夜の銃が火を噴いた。


ダダダン!! ダダダン!!


小銃から発射された弾丸がシルヴィアに吸い込まれていく。そして…


「がああああ!!!!!」


シルヴィアの体に風穴がいくつも空いた。

慌ててシルヴィアは空に飛翔して、銃弾を回避する。


「な…なんで? 銃が私に効くなんテ!」


「はは! それ! どうした?!

 もっと逃げ回れよ!!」


ダダダン!! ダダダン!!


咲夜はさらに弾丸をシルヴィアに向けて放つ。シルヴィアは弾丸を避けるために回避運動を開始した。


「そ、それは! ただの銃じゃないワね!」


「ははは! その通り!

 私が開発した多目的符弾投射システムだ。三点バーストで装填された符弾を投射する。

 今装填されてるのは、対アンデッド用調伏符弾だぜ!」


咲夜はさらに弾丸を放っていく。それを必死で回避するシルヴィア。


「くっ! 私をなめないでネ!」


シルヴィアは不規則蛇行しながら符弾を回避、咲夜に迫った。

シルヴィアの鉤爪がひらめく。


ガシャン!


咲夜が左手に持っていた一丁が砕け散る。しかし、咲夜は慌てなかった。


「モードフルバースト!」


その瞬間、右手の一丁の銃身がまばゆく輝いた。


ズドン!!!!


「がああああああああああ!!!!!!!!!」


まばゆい閃光とともに銃身から閃光が放たれる。それは、普通のアンデッドなら一瞬にして塵に返す力を有していた。


「そしてこれが、12発の符弾を連射して複合起動する大符術モード。

 フルバーストだ…」


シルヴィアはその身の芯まで焼き尽くす痛みを感じながら吹き飛ばされる。

その攻撃で塵に変わらなかったのはさすが真祖の吸血鬼というべきか。


「それ吸血鬼…次はこいつだぜ」


そう言って咲夜は銃を失った左手を空に掲げる。そして、その指を鳴らし叫んだ。


「来い! ヤタガラス!」


その時、空の彼方から高速飛行してくるものがあった。

それは、シルヴィアへと直進すると、その衝撃波でさらに遠方に吹き飛ばした。


高速飛行して現れたのは、機械仕掛けの巨大な鳥であった。

咲夜はさらに、その機械仕掛けの鳥に命令を下す。


「チェンジ! ヤタガラス!」


次の瞬間、機械仕掛けの鳥は複数のパーツに分解された。そして、その一つ一つが咲夜の体に装着されていった。


「な…?」


なんとか体勢を立て直そうとしていたシルヴィアは、咲夜のその姿に絶句した。


「こいつは機甲霊装ヤタガラス…

 装着者に高速飛行能力を付加すると同時に、強力な防御力とパワーを付与する鎧だ…

 こいつも私が開発した」


シルヴィアはギリと唇をかんだ。


「く…馬鹿にしてルワ! そんなおもちゃでこの私を倒せると思うナ!」


「フ…ならば来いよ吸血鬼!」


二人は一気に間合いを詰める。再びシルヴィアの鉤爪がひらめく。


ガキン!


その鉤爪は、霊装の腕から伸びた光の剣に受け止められていた。


「そら!」


ダダダン!!


再び小銃が火を噴く。シルヴィアはそれに耐えながら呪文を唱えた。


「sigelhagallrad wirdwirdwird…」


凄まじい閃光がシルヴィアの腕から発生する。それは、太い雷の帯であった。


ドン!!!!


それは的確に咲夜をとらえた。その雷の帯は一瞬で人を消し炭に変える威力があった。


「フン…これデ…」


そうシルヴィアが言ったとき、それを笑うものがいた。


「この程度か吸血鬼…」


「な!」


そう、咲夜はそのままの姿でシルヴィアの目の前に立っていた。


「対魔法防護結界・ヤタノカガミ…

 この霊装にはそれが装備されてるんだよ…」


咲夜はいつの間にか手に、手投げ弾を持っていた。そのピンを口で外して、シルヴィアの方に投げる。


「そんな閃光弾、いまさら効くわけが…」


ドン!


手投げ弾からすさまじい閃光が噴出し、今度はシルヴィアの全身を焼いた。


「があ!!!」


「そいつは、ただの閃光弾じゃない。

 複数のアンデッドを殲滅するために作った聖霊光弾だ。

 その聖なる光でアンデッドを焼き尽くす」


シルヴィアは全身が焼かれてひどい有様になっていた。その姿を見て咲夜は笑う。


「はははははは!!!! どうしたよ吸血鬼!

 それでも真祖か? もしかして、なんかの冗談なんじゃないだろうな?!!

 一遍死んでこいよ!!! …あ、もう死んでるんだっけか?

 クク…ははは!!!」


「…貴様…」


「あれ~なにかな? 真祖くん?

 何か言いたいなら早く言えよバ~カ」


「貴様…この」


「ん? なにかな?

 ほら、どうした」


「この私を…なめるななななななななななな嗚呼あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


次の瞬間、深山の一角にすさまじい光の柱が立った。その光は、遠く中国自動車道からも見えたという。


その光の中心にはシルヴィアがいた。

その全身はすさまじい速度で回復し、今までの傷などなかったかのように消えてしまっていた。


「この糞虫が!!!!!!!

 こっちが遊んでいればいい気になりやがって!!!!!!」


その全身から噴き出す妖力が、周囲の森を覆い尽くしていく。


「貴様の作ったおもちゃごときが!!!!!

 本当にこの私に通用すると思っていたのか!!!!!!」


顔には血管が浮き上がり、牙が凶悪に伸びていく。

腕は太く大きくなり、鉤爪も鋭く大きくなった。

それは、今までの少女の姿などなかったかのような変貌であった。


「く…」


咲夜はその妖力に圧倒されたかのように膝をつく。

咲夜は再び懐から手投げ弾を取り出すと、今度は自分の足元に投げた。

閃光が咲夜を覆い尽くす。


「なんのつもりだ糞虫。

 いまさら逃げるつもりか?」


そうシルヴィアが言うが早いか、咲夜が光の剣を振りかさして切りかかってきた。


「フン…」


シルヴィアはその巨大な鉤爪を横に薙ぐ。


バキン!!


その瞬間、咲夜の光の剣が砕けて消えた。

咲夜はさらに、右手の銃をシルヴィアに向けて言った。


「モードフルバースト!」


その銃身から再び閃光がほとばしり出る。

だが…


「!!」


咲夜は驚愕の表情でシルヴィアを見た。

先ほどは確かに効いていたフルバーストの閃光を受けて無傷で立っていたのである。


「言っただろう? そんなおもちゃはきかん!」


そういうとシルヴィアは腕の甲で咲夜を殴り飛ばした。

咲夜は激しい衝撃を受けて吹っ飛ばされた。その一撃で咲夜の霊装にひびが入った。


「sigelhagallrad wirdwirdwirdwirdwirdwirdwirdwirdwird…」


そうシルヴィアが呪文を唱えると、その腕から以前のモノよりもさらに太い雷の帯がほとばしり出た。


「ヤタノカガミ!」


咲夜は対魔法防護結界を起動して身を護ろうとした。しかし…


「ああああ!!!!!!」


その電光はヤタノカガミの防御限界をあっさり超えてしまった。咲夜は、全身を雷に打たれて吹き飛ばされる。


「おい…糞虫…。

 これで終わりだと思ったら大間違いだぞ…

 貴様には、もっと、もっと、もっと苦しんでもらう…」


シルヴィアはそう言うと、咲夜のもとに歩いていく。

咲夜はなんとか立ちあがって、手に持つ小銃の引き金を引いた。


ダダダン!! ダダダン!! ダダダン!!


だが、シルヴィアはまったく避けなかった。そして、弾丸はまったく効いた様子がなかった。


ダダダン!! ダダダン!! …カチカチ 


しばらくすると、咲夜の小銃の弾が切れてしまった。咲夜は慌てた様子で再装填しようとする。だが…


「フン…」


近づいてきていたシルヴィアの鉤爪が一閃、小銃を砕いてしまった。


「く…あ…」


咲夜は懐から手投げ弾を取り出そうとした。しかし…


「無駄だと言ってるだろう…」


シルヴィアの蹴りが飛んで、咲夜は思いっきり吹き飛ばされてしまった。


「あ…が…」


咲夜はそれで立ち上がれなくなったようで、その場で地面を爪でかきながら呻いた。


「…まだだ糞虫…

 もっと苦しめ…」


シルヴィアは、そんな咲夜に近づいていくと、その首をもって吊上げた。


「が…が…」


「それ!」


ドス!


シルヴィアの軽い蹴りが咲夜に入る。その一撃で咲夜の霊装のひびが大きくなった。


「ほら!」


ドス!


さらに咲夜に蹴りが飛ぶ。


「が!!」


咲夜はその衝撃に呻き声を上げることしかできない。

そうして、数分、シルヴィアは咲夜を蹴り続けた。


ガシャン!


どれだけ咲夜を蹴ったのだろうか。咲夜の霊装が音を立てて砕けた。


「フフ…おい糞虫…。

 なかなか楽しませてもらったよ。

 そのお礼と言っては何だが、貴様を私の下僕にしてやろう」


シルヴィアの牙がギラリと光る。


「く…あ…」


咲夜はその言葉に答えることが出来ない。


「さあ…契約だ…」


シルヴィアは口を大きく開けると、咲夜のその首筋に噛みついた。そして、その血液を吸い上げ始める。

吸血鬼にとって吸血は食事だけのものではない。吸血した者の霊質に特殊な刻印を刻み付けて、精神を縛ることが出来るのである。

シルヴィアは咲夜にその刻印を刻もうとした。


「?!!!!!」


…と、いきなりシルヴィアは咲夜から口を離した。


「なぜ? 契約が出来ん?」


そう、普通なら刻めるはずの刻印が刻めなかったのである。

シルヴィアは驚いた表情で咲夜を見た。そのとき…


「どうした? 何を驚いている?」


シルヴィアの真後ろの方向から声がした。その声は咲夜のものであった。


「?!」


シルヴィアは後ろを振り向いた。そこに、もう一人の咲夜が立っていた。


「よう吸血鬼。お前の驚いた顔はなかなか面白いな」 


「な…なんで? どういうことだ…」


「その答えを知りたかったら。そっちの私をよく”霊視”てみろ」


もう一人の咲夜はそう言ってにやりと笑う。シルヴィアは自分が捕まえている咲夜を”霊視”てみた。


「!!」


シルヴィアはその咲夜に違和感を感じた。


「説明してやろう…。

 そいつは、あたしが2年の歳月を費やして開発した、

 傀儡術・機械工学・生体工学を組み合わせた、あたしのコピーロボットだよ」


「な…」


「オーラまである程度コピーしてるから、なかなか気づかないだろ?」


「これが…ロボット?」


「そう…。そのお値段8億円也」


咲夜はそう言って笑った。


「まあ…それでも、霊視でばれる可能性があったんで。

 あんたには我を忘れてもらったけど」


「まさか…。私を挑発していたのは」


「…そう、その方がこっちは隠れやすかったんでね」


「いつの間に…。あ…」


シルヴィアは思い出す。自分が本気を出した直後、咲夜が閃光弾を使っていたことを。

咲夜はあの時入れ替わっていたのである。

逃げるために? …いやそれなら、今再び目の前に現れる意味が分からない。

シルヴィアはそこまでで考えるのをやめた。


「この糞虫が!」


シルヴィアはそう言って、手にしている咲夜のコピーロボットの首を握り砕く。そして、もう一人の咲夜の方に飛んだ。


バシ!!


だが、その突進は咲夜の目の前で、何かの障壁で防がれてしまった。


「なんだこれは…?」


「フン…。それこそがあたしが姿を隠していた理由の一つだよ。

 この障壁は魔王クラスの妖魔でも、少なくとも10分その場に閉じ込めておける対妖魔結界だ。

 そして…」


咲夜は手を上にあげて指を鳴らす。その音に反応して、結界の四方に巨大な機械が現れる。


「これがもう一つ、聖域クラスの浄化された土地を生み出すための浄化装置。

 もう…これから何をするのかわかるよな?」


「まさか…。私を…」


「そう…貴様の力の源である穢れをすべて浄化するんだよ」


咲夜はそういうと、懐から大麻おおぬさを取り出す。そして…


「高天原に神留座す。神魯伎神魯美の詔以て…」


祝詞を唱え始めた。その祝詞に反応して、四方の機械が稼働し始める。


「皇御祖神伊邪那岐大神」


「く…」


「筑紫の日向の橘の小戸の阿波岐原に…」


「があ…」


「御禊祓へ給ひし時に生座る祓戸の大神達…」


「やめろ…」


その祝詞を聞いて、シルヴィアの全身から妖力が消えていく。


「諸々の枉事罪穢れを…」


「やめ…」


「拂ひ賜へ…」


「やめろ…」


「清め賜へ…」


「ああああ!!!」


シルヴィアの全身から…穴という穴から妖力が抜け出て空中に消えていく。


「…と申す事の由を」


「ああああああああ!!!!!」


「天津神国津神」


「あああああああああああ!!!!!!!」


「八百萬の神達共に聞食せと恐み恐み申す…」


そう唱えた時、もはやシルヴィアは皺々の老婆の姿になっていた。

祝詞を唱え終えた咲夜は、白木の杭をどこからか取り出しつつ言った。


「悪いな吸血鬼、こんな方法で勝っちまって。

 …でも、術具職人アイテムクリエイターにとっては術具こそが力そのものなんだよ」


かくして、数百年にわたって生き続けた吸血鬼は、その生涯を閉じることとなった。



『第七話 咲夜VSシルヴィア 術具職人の戦い 了』

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