第二話 正義の炎 その1
…ユルサナイ
アイツラ…ゼッタイニ
ソウサ…コレハテンチュウダ
アンナクサッタヤツラ…イカシテオイテモイミハナイ
ソウダ…ボクハ
ボクハ…『セイギノミカタ』ニナッタンダ…
岐阜県森部市森部町
森部市立森部高校の体育館裏
「なー…聞いてるん? マコちゃんよ…」
「おいおいww いい加減にしないとマコちゃん泣いちゃうぜww」
生徒も下校をはじめた放課後。『僕』は三人のクラスメイトに囲まれていた。
クラスメイトといっても別に友達なわけじゃない。いつも、この三人は『僕』に絡んでくるのだ。
今日も、家に帰ろうと席を立ったときに、呼び止められここに連れてこられた。
「おい、誠…。今日はこんだけなのか?」
『僕』を囲んでいる三人のリーダー格『永瀬正人』が『僕』の財布を地面に捨てながら言った。
そんなことをしたら財布が土で汚れるだろうが! …なんて、その程度のことでわざわざ『僕』は怒ったりしない。
「…よお、明日はもっと持ってきてよね。マコちゃんw ボクタチお小遣いがほしいのww」
三人のうちのもう一人『国府勝』が『僕』の肩に馴れ馴れしく肩を回してくる。最後の一人『近藤敏明』 はタバコを口にくわえながらただ『僕』をイライラした表情で眺めている。
こいつ等は、まさしく糞蝿のように『僕』にたかって来るどうしようもない奴らだ。教師の前ではいい子面しているのがなお悪い。 『僕』がナイフでももって刺してやれば終わりだろうが、まあ『僕』はこんな奴らのために犯罪者になるのはごめんだ。
「おい…きいてんのか?」
永瀬が『僕』の襟をつかんで『僕』を引き寄せる。そんなことしなくても君の顔は見えてるよ…。
「わかてるよ…。持ってくるから…」
こういっておけば、たいていこの場は収まる。いつものことだ。
…と、その時、不意に足元に真っ白な犬がやってきた。毛が白いけど「柴犬」だろうか?
「…白柴か…珍しいな」
近藤がしみじみとそうつぶやく。そんなことを知ってるなんて犬が好きなんだろうか?
「おーい! シロウ! どこいったんだよ!!」
どうやら、この「白柴」の飼い主の登場のようだ。永瀬達はあからさまに苦い顔をしている。
「あ…いた…。シロウ…駄目だろ」
飼い主は『僕』と同年代だろうか…同じ森部高校の制服を身に着けている。名札には『矢凪潤』とある。
その姿を見た永瀬達はより強く苦い顔になった。
(…おい、こいつ…)
(…ああ、隣のクラスの矢凪だ…。幽霊の…)
(…下手にかかわると呪われるぞ…)
と、犬の飼い主には聞こえないようひそひそ話しをしている。そうして、しばらく話し合った後、『僕』に「そういうことだらか頼んだぞ…」とだけ呟いて永瀬達は去っていった。
「……」
『僕』がしばらく黙っていると、犬の飼い主が『僕』の顔を見て言った。
「…大丈夫?」
…なるほど。こいつは『僕』を助けたつもりなんだ。黙っててもすぐにこの場は収まっていたのに。
『僕』は黙ったまま地面に捨てられた財布を拾うと、何事もなかったようにその場から歩いていく。
そいつは、まだ『僕』を眺めているが…別にどうでもいい。
『僕』が学校の校門にたどり着くと、なにやら冷たいものが地面におちた。頬を触ってみるとそれは『僕』の涙だった。いつから泣いていたんだろう…あいつにも見られたか?
こんなことは『僕』にとっていつものことだ、泣くほどのことじゃないのに…。
『僕』は涙を袖でぬぐうと全力疾走で家への道を急いだ。
『僕』にはやらなければならない事があるんだ…。
翌日、学校の朝礼で『国府勝』の家が火事になって家族全員焼死したことが伝えられた。
出火の原因は『国府勝』の寝タバコらしい。あいつらしい死に方だと『僕』は思った。




