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呪法奇伝  作者: 武無由乃
第一章 蘆屋の呪術師
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第六話 席番剥奪者(ロストナンバーズ) その3

潤たちは戦慄していた。目の前の少女の絶大な妖力の高まりを見たからである。

その妖力はかの、蘆屋八大天に迫るかと思われた。


「フフフ…誰からいただこうカシら」


そう言ってシルヴィアは三人を値踏みしている。


「ちっ…」


真名はこのままではまずいと思った。これほど強大な力を持つ妖魔と戦っていたら、他の二人には容易に逃げられてしまう。

それどころか、こちらの命まで危ないからだ。

真名はこの場をしのぐための策を考え始めた。…と、その時。


「ここは。わたくしに任せて、お二人は先に行ってくださいませ」


咲夜がそう言った。まさか、これほどの相手に一人で挑むつもりらしい。

真名は言った。


「おい、咲夜、こいつに一人は無謀だ。ここは我々三人で…」


「そんなことをしてる暇はありませんわ」


「だが…」


と、その時、真名は咲夜の体が震えていることに気づいた。


「咲夜…お前…震えて」


「フフフ…武者震いというやつですわね」


咲夜はニヤリとそう笑った。その顔は心なしか青ざめているように見える。


「…咲夜。やはりここは我ら三人で…」


「そんな暇はないと言ったはずですわ。

 それに…わたくしはこんなやつには負けません」


咲夜は真剣な表情になる。


「負けるつもりは欠片もありません」


「お前…」


「わたくしを信じてください…」


その咲夜の表情を真剣な目で見つめる真名。そして…


「わかった…お前を信じる」


「フフフ…ありがとうございます」


そう咲夜は笑った。

真名は潤に向かって目くばせする。しかし、潤は


「ほんとに大丈夫なんですか? 咲夜さんは」


「本人が大丈夫だと言ってる」


「でも…」


「大丈夫だ…」


真名はそうきっぱりと言い切った。潤はそれ以上反論できなくなった。

そんな二人に咲夜が話しかけてくる。


「では…今から隙を作りますので、先に進んでくださいまし」


潤と真名はその言葉にうなずいた。その時、シルヴィアは


「ねえ…なに三人で話し合ってるのカシら?

 誰が先に犠牲になるか順番を決めているの?」


そう言ってにやにや笑っている。

その時、咲夜がシルヴィアの前に出てきた。


「大丈夫ですわ。相談は終了いたしました」


「あれ? あなたが初めの犠牲者?」


「フフフ…どうでしょうか?

 確かあなたはシルヴィアさんでよかったのですわね?」


「うん…そうヨ」


「ではシルヴィアさん初対面のご挨拶ですわ」


そう言って咲夜が何かをほおって来た。シルヴィアは反射的にそれを受け取ってしまう。


「?」


始めそれは手のひらサイズのボールに見えた。しかし、それは明らかに違うものであった。

それは手投げ弾であった。


ドン!!!


次の瞬間、その手投げ弾からすさまじい閃光がほとばしり出た。


「きゃ!!!」


シルヴィアの目前が一瞬にして光に染まる。その手投げ弾は閃光弾だったのである。

シルヴィアは長い生の中で、光に対する耐性を獲得していた。しかし、目をくらませられることに関しては別である。

たまらず、目をおさえて呻いた。


「今ですわ!」


咲夜がそう叫ぶ。潤と真名はシルヴィアがうめいている隙にその横をすり抜けて行った。


「く…この…」


シルヴィアの目が何とか回復してくる。しかし、そのころにはもう二人の姿は森の向こうに見えなくなっていた。


「ちっ…やってくれたワネ」


シルヴィアはそれでも余裕のある表情で言った。


「まあ…いいワ。貴方を殺したらすぐに追いかければいいんですモノ」


「悪いですけど。そうはいきませんわよ」


「ククク…そんな事。足を震わせながら行っても説得力ないワヨ」


そう、咲夜はまだ震えていた。しかし、咲夜はにやりと笑って言った。


「確かに怖いわね…あなたは…

 でも、それは目に見える怖さ…

 あの子の怖さに比べたらどうでもいいほどのモノよ」


「あの子?」


「私の最強の好敵手のことですわ」


そう言ったころには、咲夜の震えは止まっていた。


「だから、わたくしはあなたに負けませんわ…

 真名以外に負けることはありえません」


咲夜はそうきっぱり言い切った。

それを聞いてシルヴィアは…


「ふ…つよがりですネ。

 いいわ…まずはあなたをなぶり殺しにしてあげる」


ギラリと赤い目を光らせていった。



-----------------------------



その時、切人はちっと舌打ちした。追っ手が迫っていることに気づいたからである。

シルヴィアはやはり油断して追っ手を逃がしたらしい。まあ、少し予想していたことだが。


「レスター」


「はい、わかってます」


切人は、レスターと二手に分かれることにした。

そうすれば追っ手も二手に分かれなければならず、その分こちらは対処しやすいからだ。


「本当に面倒なことになった」


切人は走りながらそう呟いた。



-----------------------------



「どうやら、二手に分かれたようだな」


切人達の気配を追って来た真名はそう言った。真名はすぐに潤に向き直る。


「潤…お前は、右に分かれた者を追え。私は左だ」


「え? 僕一人で?」


「ああそうだ…。出来るな?」


「は、はい!」


潤は急いで森を走っていく。真名はそれを見送った。

ふと、その時、真名の使鬼である静葉が話しかけてくる。


「ひめさま…潤一人で大丈夫?」


「大丈夫だ。シロウもいるし、それに…」


「それに?」


「もしもの時の『保険』をかけてあるんだ」


「それはいったい…」


「おそらく、潤にとって最も効果的な保険だ…」


そう言って真名は笑った。


「さて…私も追うぞ」


そう言って真名は森の中を駆けていく。


こうして、深山の森の奥、三か所で戦いが始まったのである。



『第六話 席番剥奪者(ロストナンバーズ) 了』

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