表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
呪法奇伝  作者: 武無由乃
序章
4/202

第一話 闇に蠢くモノ達 その4

操たちはビルの二階にやってきた。ここには、患者六人程が入れる大きな病室がある。

ただし、ここには今日は用はない。操たちはすぐに三階への階段を昇っていく。


「もうそろそろ、やばそうだよ…」


潤が不意にそうつぶやいた。霊感で何かを感じ取っているのか?

あいにく操には何も感じられなかったが、カメラを持つ手に汗が滲んできた。


そして、操たちは三階へとやってきた。この階に今日の目的の場所である院長室があるはずだ。

操たちは、埃の積もった廊下をソロソロと歩くと、院長室と札のある部屋の扉の前に立った。

操はドアのノブに手をかける…。


その時、不意に操の肩に手が置かれた。


「ひっ!」


操は引きつって声の出ない悲鳴を上げる。そっと振り返ると、その手は後ろを歩く潤のものだった。


「脅かさないでよ…潤くん…」


「ごめん操…でも…」


そうつぶやいた潤は顔に強い疲労を張り付かせている。


「やっぱり帰ろう…」


…と、それだけを口に出した。


「なに言ってるの!? ここまできて…」


「聞こえたんだ…」


操は『なにを?』とは聞かない。潤がこういう言い方をするなら、多分霊感に響く音なのだろう。

潤の次の言葉を待つ。


「何かがきしむ音…。おそらく縄で間違いないだろう…。そして、頭を強く引っ張られ、かつ闇の底に落ちていく感じ…。おそらく、この扉の向こうでは、まだ自殺当時の事象が再現されてると思う…」


こういった自殺現場では、死の前後の事象が土地の記憶として残滓していることがよくある。操はオカルト知識として、そのことは知っていた。


「……」


操はしばらく考え込むと結論を出した。


ならば…、なればこそ扉の向こうに進まねばなるまい。もともと、それを撮影に来たのだ。

潤は操の表情の変化を見てあきらめたようにため息をついた。


操は「ゴクリ」とつばを飲み込むと、扉のノブをひねった。そして、意を決して院長室の扉を開く。

何年もの間開くことのなかった扉が「ギギギ…」という不気味な音を立てて開いた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=984391252&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ