第三話 そして僕は その4
時間は真名が男と対峙する数分前に戻る。
その時、潤は操に手を引かれながら、昔のことを思い出していた。
いつからだろうか、操が僕にしつこくついてくるようになったのは。
子供のころから確かに仲は良くて、一緒に遊びもしたが。近所の子供の友達集団の一人だったように思う。
それが変わったのはやはり、母が死んでからだろうか。自分は周りから心を閉ざし、霊能力に目覚めたゆえに妙な噂も立ち、それまで遊んでいた友達は一人また一人と自分から離れていった。そんな中で、一人だけ、心を閉ざす自分にしつこく付きまとってきたのが操だった。
操はいつも強引だった。せっかくの能力の有効利用と言いながら、いろんな所を連れまわされた。怖い経験をしたことも一度や二度ではない。はっきり言って、その当時の操のことは大嫌いだったと言ってもいい。でも、いつの頃か、それが操なりのおせっかいであることを知った。
そう、操はいつもおせっかいなのだ。誰かが困っていると走って行ってまとわりつく。いつもそうだ。操では解決できないことも多い、それで泣きを見たこともたくさんある。自分で解決できないくせに、関わるなんてどうかしてると思うが、それでも走っていく、それが操。
正直頭は悪いだろう。でも…
僕と違って、何事にも一所懸命…それが操。
僕はいつの間にか、そんな操をほおっておけない気持ちになっていた。心を閉ざし、自分の命すらどうでもいいと思っていた自分が。少なくとも、今笑えるようになったのは操のおかげだろう。
ふと、僕の手を引いていた操が止まった。その視線の先に、一人泣いている子供がいる。
ああまたか、僕はそう思った。
「どうしたのきみ? お父さんお母さんは?」
子供は答えない。ただ泣きじゃくるだけだ。操の困った視線が自分に向く。僕は一息ため息をついた。
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「?」
迷子センターに子供を連れて行ったあと、再び操と店舗を見て回っていた潤は、ふと周囲の異常を感じた。
自分たちの周りに人がいない。ついさっきまでたくさんの人がいたはずなのに。
潤は腕時計を見る。やはり閉店時間というわけでもなかった。
「え? あれ?」
操もまた異常に気付いたようで、潤の袖をつかんで周囲を見回している。
こんな現象を引き起こすことに覚えがあった。
(これはまさか…)
潤は慌てず、意識を集中し周りを”霊視”てみた。
それは、今まで見たこともない光景だった。周囲に規則正しく光の帯が流れている。文字らしきものを形作っている光の帯もある。それは、明らかに人間の手の入った人工的なもののように見えた。
(これが…人払い結界?)
周囲を”霊視”ていた潤の意識の片隅に、ふと動く人影があった。
それはゆっくりと、でも確実に自分たちの方に歩いてきていた。
はじめ潤は、それは蘆屋真名かと思った。だが、真名とは明らかに違う部分を感じて戦慄した。
それは強い穢れだった。これほどの穢れをまとった人間を潤は見たことがなかった。
「やあ…」
不気味な笑顔を張り付けた男がそこにいた。




