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呪法奇伝  作者: 武無由乃
序章
30/202

第三話 そして僕は その1

「潤ちゃん! あ~そぼ?」


「……」


僕は操に無言の返事を返す。

しかし、操は僕に無視されても気にせず、携帯ゲーム機を起動して遊び始めた。


(…あの子…まだ、駄目なんだって?)


(…ええ、そうね…。でも仕方ないわ、目の前でお母さんが亡くなるところを見ちゃったんだから…)


(…そういえば、あの子のご両親…)


(…ええ、おそらくあの子は施設に引き取られることになると思う)


僕のお母さんが死んでから五日の時がたっている。

その時、僕はいまだ闇の中に心を沈めていた。



------------------



「潤! デートしましょう!!」


「……」


僕は操に無言の返事を返す。

しかし、操は僕に無視されても気にせず、勝手にデートの行き先を決め始める。


「…今度、『森のショッピングモール』で一大セールがあるらしいの!!」


「…やっぱり、いつもの荷物持ちじゃないか…。そいうのはデートとは言わない…」


「なにいってんの?! 女の子と買い物できるってだけでも手たたいて喜ばなきゃ! 青春は一度きりなんだからね?!」


「…なんか、昭和の香りのする台詞だね…。いつの時代の人だよ…」


本当は平成生まれの僕には昭和の香りなんか分からないが。




羽村誠はむらまことと対峙した夜からすでに三日がたっていた。

児童公園にはそのときの痕跡は一切残っておらず、あの夜のことは本当は夢だったんじゃないかと思える。

当の羽村誠は、あの夜、真名という少女に連れられていったまま学校に登校してくる気配もない。

風邪をひいて休んでいるらしいが、おそらくそれは真実ではないだろう。


「…っていうことだから。アンタ邪魔しないでね?」


…そう、操は僕ではなく、僕たちの背後にいる人物に言った。


「…別に邪魔しているつもりはないのだが?」


そこには、三日前、僕たちを助けてくれた蘆屋真名あしやまなさんがいた。

操はそんな彼女にジト目を向けて言う。


「邪魔してるじゃない! あれからずっと、潤のことつけまわして。…何のつもりなの?」


「…それは、すでにあの日の夜説明したはずだが? 聞いてなかったのか?」


「聞いてたわよ!! だけどあんなの納得できるわけないでしょ?!」


「…君が、納得できる、できないの問題なのか? 私は使命を果たしているだけだ…」


「…潤の事を……さらっていくのが使命って?」


「…さらって行くつもりはない。…だからこうして、期限を与えてるのだ」


操と真名さんの言い合いを聞いて僕はため息をついた。

あの事件からこっち、この二人はいつもこんな言い合いを繰り返している。


実は、僕は真名さんが所属する『蘆屋一族あしやいちぞく』の監視対象となっていた。

真名さんの話によると、僕の力は一般社会にあっては危険すぎる能力であり、本来は無理やりにでも保護されるべき対象なのだそうだ。

でも、真名さんは僕を無理やりは連れて行かなかった。

監視対象とすることによって、考える時間をくれたのだ。

もっとも、それは『考えた末拒否すれば無理やり保護する』ということだが。


「…悪いけど潤を連れてかせはしないわ」


「…無理だな。一般人では私を止めるどころか。潤くんの能力を受け入れてやることもできない」


「…!!!」


その言葉を聴くと、操は無言で僕の手を引いてその場を離れていく。

真名さんは困った表情でため息をついていた。



------------------



「ひめさま…。本当にこのままでいいんですか?」


潤たちが去っていった方向を見つめていた真名に、彼女の使鬼・静葉が話しかけてくる。


「…うむ。もうしばらくは…な」


「でも、あの子の能力を考えると、無理やり保護するのも仕方がないのでは?」


「…確かにそうかもしれん。しかし、あの潤とかいう少年…もう自分の能力の危険性に気づいている。おそらくは、近々決断するはずだ…」


「…それでは」


「だから、それまでは今の生活を送らせてやろうと思う」


「……」


「とりあえず…これからは間接的に監視するようにしよう」


あの操という娘は思ってたより勘がいい。監視するにもいろいろ手を使わねばならんだろう。

どうしたもんか、と真名は思案をめぐらし始めた。

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