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呪法奇伝  作者: 武無由乃
序章
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第一話 闇に蠢くモノ達 その3

潤はたしかに『ここはアタリだ』と言った。将来、一流の怪奇ジャーナリスト(それがどういったものなのかは横において)になる事を夢見ていた操にとって、それほど嬉しい事はない。

勿論、得体の知れないものに対する恐怖がない訳ではない。事実、過去に”チビリ”そうになった事は何度もある。でも、そんなものより、常に好奇心が勝っていた。隣に、こういった方面に強い幼馴染がいる事も、彼女の好奇心を後押ししていた。なにより操はオカルトの類が大好きだった。

それこそ鼻歌を歌うかという気持ちで、廃ビルの廊下を奥に進んでいった。


今現在いるのは『森部東病院』という名の三階建ての小さなビルだ。

かつて、この病院で医療事故が起こり、マスコミにも取り上げられて大問題になった。操たちがまだ生れて間もない頃だ。 それが原因で急速に客足が遠のいた病院は経営不振に陥り、あげく院長が首吊り自殺した事が止めとなって廃院に追い込まれ、現在では誰も近寄らない幽霊ビルとなっていた。

ビルを取り壊すという話が無かったわけではない。当然、取り壊そうとした。だが、その工事の最中に事故が相次ぎ、工事会社が手を引くにいたりそのまま放置される事となった。

いつしか、この病院は『幽霊の出る呪われた病院』としてそこそこ有名になっていた。


オカルトが大好きで、ここ以外にも幾つもの心霊スポットの調査を繰返していた操は、この廃ビルを調査する事が一つの目標でもあった。


「む?」


操が玄関カウンターの横を通り、診察室の横を通り過ぎた時、 半開きになった診察室の扉の向こうで何かが動いた気配がした。操は慣れた手つきで古いフィルムカメラを構えて即座にシャッターをきる。


「何かあったの?」


心配そうに自分に話しかけてくる潤をほおって置いて操は診察室の扉を開ける。


…そこに、一匹のネズミがいた。


「……」


まあ、こんなもんだ。そもそも、霊感のある潤が反応していないのだ。当然だ。

霊感もなく今まで霊そのものを見た事のない操は素早く気分を切り替えた。


「操?」


潤がいぶかしげな顔で自分を見つめる。操はそれをポーカーフェイスでかわして、ビルの二階へ続く階段へと足をすすめる。その先に、院長が首を吊ったとされる院長室があるはずだ。 そこで、何枚か写真を撮影するのが”今日の”とりあえずの目標だ。

夜も遅いし急がねば親に怒られてしまう。


操、潤、シロウの順で階段を昇っていく。しばらく誰も通らなかった 階段の床の埃に足跡がついていく。


その時、すでにネズミが去った診察室の窓が、風もないのにカタカタと音を立てた。

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