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呪法奇伝  作者: 武無由乃
序章
22/202

第二話 正義の炎 その16

潤はシロウの首輪の破片を掴んだままその場から動かなくなった。

羽村はもう終わりだろう事を悟った。

少し調子に乗ってしまったところはあるが、本来羽村はサディストではない。

もう苦しまないよう一瞬で灰にして、飼い犬の元に送ってやるのが慈悲だろうと考えた。


羽村は手のひらを潤たちに向けた。これで終わるはずだった。

…だが、その時羽村は絶対にありえない声を聞いた。



「…これは…最悪だな…」



言葉を発したのは無論羽村ではない。

身動き一つしない潤でもない、動かなくなった潤に一生懸命呼びかけてる操でもない。

『火の壁』の向こうから聞こえてきたのだ。


『人払いの術』は効いてるはずだった。

普通の人間ではこの場所に近づくことはおろか、この状況に気づくことすらできないのだ。


ズドン!!!


そう音の響いた次の瞬間、炎の壁の一部が一瞬にして消滅した。そこに一つの人影があった。

その人影がはっきりとした足取りで羽村の方に歩いてきた。


それは…一人の少女だった。


「…?! な…何だ?」


羽村は戸惑っていた。これはありえない事態ではないのか?

そう思って傍らにいるはずのフェニックスを見た。


【…!!!!!!!!】


フェニックスの顔には驚愕の表情が張り付いていた。


「…ふむ…。間に合わなかったようだな…」


突如現れた少女が口を開く。

その少女は、年のころは潤たちと同じかそれより下に見えるだろうか。線の異様に細い少女だった。

髪は黒く長く、頭の左右で結い。服は黒いシャツ、黒いホットパンツ、黒いスニーカーと黒で統一し、その上に、肩に星と格子の紋様が描かれたジャンパーを身に着けている。

その腰に下げているのは、『蘆屋あしやのおいしい水』とラベルされた500mlペットボトルだ。


「…?」


突然現れた少女に、操も驚愕の表情を浮かべている。

羽村は、この少女が潤たちの知り合いではないことを理解した。


「…お、お前なんだ? どうやってここに入った…」


羽村のその言葉に少女は…


「この、火壁の『じん』を敷いたのはお前か?」


…疑問で答えた。


「…聞いてるのは僕だ! お前は誰だ!!」


羽村はイライラして少女に怒鳴り声を上げる。

少女はその姿を見て一瞬だけ逡巡すると、その疑問に対する答えを明かした。


「お前に言っても意味はないだろうが答えよう…

 私の名は『蘆屋真名あしやまな

 播磨法師陰陽師衆はりまほうしおんみょうじしゅう蘆屋一族あしやいちぞくに所属する…」


「え…?」


「正式な『陰陽法師おんみょうほうし』だ…

 …君のその首にかけている『呪物じゅぶつ』を回収するのが仕事だ」

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