第二話 正義の炎 その13
「さて潤くん…。もし君が無抵抗でいるなら、苦しまないように一気に灰にしてあげるけど…どうする?」
潤は開いた口がふさがらない。そんなのどっちも嫌に決まってる。
シロウの唸りは大きくなり、操は怒り心頭で羽村に食って掛かる。
「何よさっきから! 正義、正義って、ただ目撃者を消そうとしているアンタが、正義をかたるなんて笑わせないでよ!」
「…何か勘違いしてない?」
羽村は心底あきれた表情で操に語る。
「僕は別に目撃者を消そうとしてるんじゃないよ? そんなの君たちが回りに言いふらしたところで、僕に実害があると思うの?」
「…じゃあ何のために」
羽村は疑問を投げかける操を諭すように、ゆっくりと話を続ける。
「その矢凪潤が持っている、邪悪な『魔眼』を消すためさ。そいつが持っている目は、霊が見えるだけのただの霊感とは違う、関わる回りに不幸を撒き散らし、最終的にはこの世を破滅に追い込む許されない存在だ。それを消すのが選ばれし僕の、今の使命なんだ…」
潤は自分が『魔眼』を持っているなんて、よくある噂でも聞いたことがなかった。
近づいたら不幸になるとは言われていたが。
それを聞いて操はあきれた表情になる。
「はあ? 誰がそんなこと言ったの? ありもしないこと…ただの噂を信じて潤を殺そうって?」
「噂だけを信じたわけじゃないよ…。聖霊・フェニックスがそういったんだ…」
『火の壁』やら『人払いの術』やら見た後だが、それを直接使ったところを見ていない上、フェニックスとやらがまるで見えない霊感のない操には、それはただの狂人の戯言にしか聞こえない。
案の定、操は羽村の傍らにフェニックスがいるのにも気づかず、彼の胸倉をつかみにいった。
「操!」
潤の警告は一息遅かった。羽村の傍らのフェニックスが軽く嘶くと、操の周りに火の粉が現れ、その上着に火をつけたのだ。
「…な?! ちょ…」
あわてて、操は上着についた火を消す。火は小さかったのですぐ消えた。
「…まだ分からないのかな? 自分の立場が。ほら、こんなことも…」
そう言うと、羽村は操のほうに手のひらを向けた。それにあわせるようにフェニックスの口が開く。
ドンッ!!!
爆発するような音とともに、羽村の手のひらから火球が飛んだ。潤の行動は…何とか間に合った。
操を抱えた潤は地面に転がった。操に向かって飛んだ火球を何とかよけることができた。
急いで心を落ち着かせてさっきまで操が立っていたところを見ると…
「…!」
…地面が軽く抉れていた。こんなもの命中したら操はどうなっていたか…。
同じく無事だったシロウが、心配して潤たちのところにやってくる。
「…もう一度聞いたほうがいいかな? 悪しき存在である『矢凪潤』に天誅を与えることを邪魔するなら…。君も死ぬことになるよ…?」
操とシロウはその言葉に…
強い意志の宿った睨みで答えた。
次の瞬間、羽村誠の周囲に無数の火球が現れた。




