第二話 正義の炎 その5
老婆は明らかに様子が変だった。なにか焦っているような、引き攣った表情を浮かべている。
老婆はスッ…っと潤の方に近づくと、夕方のときのように一回会釈をする。そして、何か訴えるように口をパクパクと動かす。
潤には老婆の声が聞こえなかったが、その思いは心に直接伝わってきた。どうやら近藤に何かあったらしい。自分には近藤を助けるような義理はないが、最近の火事の事もある。潤は老婆に頷くと言った。
「案内してくれ」
老婆はそれを聞くとうれしそうな表情をして、音も立てずススッっと滑るように児童公園の中を横切っていく。訳のわかっていない操を置いて潤は老婆の後を追った。
「なに~? いきなりどうしたの?」
操は慌てて潤を追いかける。
「何か嫌な予感がする」
潤はそれだけ言うと児童公園を抜けて反対側の道路へと駆ける。今は詳しく説明している暇はないだろう。操はそれを聞くと何かを悟ったような表情で潤の後に続く。老婆の後を追い、道路に出てそこを道なりに進み、T字路を右に曲がってしばらく。不意に潤を”ゾクリ”という感覚が襲った。
(…この先に何かいる! さっきのお婆さんじゃない何か!!)
そうして道なりにしばらく走っていくと、明らかに様子のおかしい家にたどり着いた。
「…!!」
それは操にもハッキリ見えた。『近藤』と表札のある二階建ての一軒家、その二階の窓の向こうが赤く瞬いており、窓の隙間から煙が漏れていたのだ。
「火事?!!!」
そう…近藤宅の二階の内部が燃えていたのだ。潤は急いで操に声をかける。
「消防に電話!!」
「うん!!」
操はそう答えると、急いでポケットから携帯電話を取り出してかけ始める。
潤が再び、煙が漏れている二階の窓に目を向けると、そこに怪しい何かの影を霊視た。
潤たちを案内してきた老婆はそれを指差してなにやら訴えると、玄関の扉をすり抜けて内部へと向かう。
中で何かが起こってる。明らかに普通ではない何かが。潤はシロウに「ここで待て」と命令すると、急いで玄関の扉をあけて中へと駆け込んでいった。
「ちょっと! 潤!?」
背後から操の焦ったような声が聞こえる。
その先で待ち受けていたモノが、自分のその後の運命を変えることになるとは、このときの潤はまったく気づいていなかった。




