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3種の鳥の密談とダアジリン

作者: 低反発
掲載日:2013/03/23

買い物帰りに通りゃんせを歌いながら、300円ほどで買ったトマットをアスファルトに投げつけてみた。曇り空の表情は微塵も変化しない。遠くの方で鳩が飛び立つ音が聞こえた。


赤い果皮は星形にアスファルトにこびりついた。

少し緑がかった果肉はその星から少し離れたところまで飛び散った。


この須臾しゅゆからトマットは人間的に変化したといえる。あるいは変化のベクトルが向きを変えた、とも。食べ物としての性能をほぼ失ったという意味でもあるが、むしろ記号としての意味を多分に発するようになった、ということである。彼女は、アスファルトにへばりつけられたトマット、という記号になったのだ。人間が植物にしてやれるのは、それを食らうことか、それに人間しか理解できない記号なるものを付与することくらいである。


私は先ほど買い倦ねて結局買わなかった鏡に関する本を思った。


飛び立った鳩が他の鳥を何羽か引き連れて帰ってきた。行きはよいよい、帰りは増えて。彼らの密談に耳をそばだてる(先ほどのトマットはいよいよアスファルトに飲み込まれつつあるようだ)。


「あの肌色がさっきあの赤いのをあの鼠色に投げつけたってのか。」

「そうだ、おいらはさっきしかと見たんだ。あの肌色に違いない。」

「それにしても赤いのってのはどれのことだ。」

「ほらあそこに...ん、もうあれは赤じゃねえな。鼠色になりかけてらぁ。今日はずいぶん鼠色が元気じゃねえか。」

「そうすっとあれはどうすんだい。赤鼠色とでもしておくかい。」

「そうだな。それがいい。赤鼠色にしよう。」

「それにしても赤鼠色ってのはいったい何色なんだい?」

「おい、赤いのが見当たらなくなってるぞ!」

「や、そんな...。」

「なんてこったい!鼠色が赤を食いやがったんだな!」

「ちっ!だから鼠色は苦手だい!ぼうっとしてっとオレらまで食われちまいそうだぜ!」

「そうだな。さっきから肌色もこっちをちらちら見やがるし。ずらかるとすっか!」


桜の花弁を時折ついばんでいた鳩たちは、シャンペーンの栓のように仕方なく飛び去った。アスファルトのおくびが右耳をくすぐった。



ティシューを買い忘れたことに気がつく。


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