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シスターエレナ

 永久の必死の修行の日々はつづいた。一方、シスターエレナは、ホームで子どもたちの世話をしながら、時間を見つけては相変わらず美琴のチラシ配りをつづけていた。しかし美琴の失踪から年数もたち、配りはじめこそいくばくかの「似た子を見かけた」という情報があったものの(結局それらは空振りの期待に終わったが)、近年ではよせられる情報は皆無だった。警察も、手がかりは得られなかった。

 一日を終え、簡素な自室で机の灯を前に座ると、シスターは悲しい疲れをいつもおぼえた。美琴への心配もあったが、ホームから永久という存在をうしなったことも大きかった。

 シスターは、ほおをそっと手でおさえながら、永久を真ん中に、子どもたちが写っている写真入りの写真立てをもう一方の手で取った。これを撮ったときも、永久がふざけたことを言って笑わせたので、どの子もみんな、顔じゅうを口にして笑っている。美琴がホームに来る直前の写真だ。そういえば、美琴がいる間はあまり写真を撮らなかったことに気づく。さびしそうな表情を撮ることは、気がひけるものだ。

 シスターはおもいついて、立ち上がると、かべぎわの本棚からアルバムを取り出す。表紙に書かれた年をたしかめ、ページをめくると、美琴の誕生日会の写真を見つける。ホームの子どもたちの誕生日は、おなじ誕生月の子どもで合同に祝うので、それはほかのふたりの子どもの誕生日会もかねていた。ホールケーキを前に、美琴とそのほかのふたりの子どもが写っている。美琴は、やはり固い表情だ。シスターは、おなじ日に撮ったほかの写真を見ていく。そして、ページの最後に貼られた一枚の写真に、目が止まる。

「まあ」

 そうちいさくつぶやいて、シスターは笑みをこぼす。その写真には、永久と向かい合った美琴が、雪どけに咲く花のような、かすかなかすかなほほ笑みをうかべているのが写っていた。


 永久は、シスターからの手紙を定期的に受け取った。それを読む時間はなんとかとれたが、とても返事を書く時間はなかった。しかし、なつかしいひとからの手紙は、いつも永久の心をあたためた。シスターは、手紙にいつも、永久の体への気づかいとひかえめな励ましと、便りのないのはよい証拠だということを書いた。芸能界の強い刺激のなかにすごす永久にとって、シスターからの手紙は、大自然のなかで深呼吸するような、深い安らぎを感じさせるものだった。

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