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昔の親友、今彼女  作者: twilight
第2章「同好会編」
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第13話「噂」

「あ!やっとかえってきたよ。おかえり!」

宗が家に帰ると、そこにいたのは宗の毛布にくるまった佳音だった。

毛布を見ると所々に濡れた箇所があり、佳音の目も若干腫れていた。

「この前から1時間延長か。頑張ったほうだな。」

「うん。宗ちゃん、宗ちゃん。だっこして!」

「わかった。」

そう言って、ベットの上に座り込む宗。そこに背中を向けるのでなく、前から佳音は抱きついた。

「うぅ~。」

この時間を待ち遠しく思っていた佳音からついうめき声が上がる。

特別なことがない普段は宗の前に背中を向けて座るのがいつもだが、このご褒美の間だけは違うのだった。

特に何も言わずに抱きしめる宗。佳音にとってこの時間は特に至福の時だった。

「今日はどんな感じだった?」

「うーん、午前中は大丈夫だったよ。ただ、午後から不安になってきちゃって…。

怖いから寝ちゃうんだけど、そうするとバスケ部の面々が出てきて口々に言うんだよ。

『なんで変わっちゃったんだ?』って。」

「そっか。大丈夫、安心して。誰もそんなこと言わないよ。

今までずっと協力して部活やってきた仲じゃないか。今更そんなこと行ったりするような奴らじゃないってわかってるだろ?」

「…うん。でも、やっぱり1人って怖いよ。」

「辛いとは思うけどそれを克服するための訓練だからな。

代わりにって訳じゃないが、今みたいに終わった後なら存分に甘えていいから。」

「うん!」

そう言って、再度抱き締しめてくる佳音。

「学校終わった後は部活やってたの?」

しばらく満足するまで抱きしめた佳音は腕を解いてそう尋ねた。

「部活というのかな…今日、翔也がおまえと同じ理由で学校休んでるのは知ってるか?」

「ううん。昨日まではメールしてたんだけど、今日来なかったのはそういう理由だったからだね。」

「ああ。それで、あかりと2人だったから2時間ほどお茶でもしながらいろいろ話してたかな。」

「あかりちゃんとデート?」

「まあ、間違ってはないかな。って、これで嫉妬したりはしないよな?」

少し悩むような仕草しながら佳音は言った。

「昔だったら、嫉妬してたね。でも、今は大丈夫だよ。信頼してるもん。」

「そう言ってくれるとすごく動きやすくなるからありがたいな。この程度で毎回あんなことやられたら身がもたないし。」

「あんなこと…で一括りにしないでほしい…かなぁ。」

「そうだな。すまなかった。」

「わかってくれれば良いんだよ。そういえば、翔也くんの悩みって聞いた?」

「あ、性転換がバレたってやつか。一応、あかりから噂だけは聞いたな。」

「私、一昨日ぐらいから相談されちゃって。メールでやり取りしてるんだけどなかなか解決しそうにないから、どうにかならないかなぁって。」

「一昨日?確か、その噂が流れたのが今日だったはずなんだが。」

「あれ、そうなの?私は、先週から悩んでるって聞いたんだけど違ったかな?」

「うーむ、明日本人に聞いてみるか。」

「そうだね。私、明日は学校行くよ!」

「それなら安心だな。さて、家に送ってくぞ。」

「えー、宗ちゃん。一緒に寝ようよ~。」

「いくらおまえが小柄だって言っても、もともと2人で寝るようには買ってないんだよ。」

「じゃあ、私がダブルベットを買えば…」

「おい、それはやめろよ…洒落にならないから。」

これこそ高校の同級生にバレたらなんて言われるかわからない。かなり危険な内容だった。

「今は、冗談だよ。未来は…知らないかな?」

「さて、送ってくから行くぞ。」

「うん!」

その後、佳音のお母さんが見たものは、お姫様だっこで連れてきてもらった佳音の姿だった。



「はぁはぁ…。」

次の日、部室に一番に来たのは息切れした翔也だった。

「まさか、こんなに早く結果が現れるなんて…。」

いつも座っている席に移動した後、誰も居ないことを確認してから翔也はつぶやいた。

それから、数分後。宗と佳音が部室に入ってきた。

「こんにちは。佳音さん、宗先輩。」

「よう。」

「こんにちは、翔也くん。」

翔也の挨拶にそれぞれの返事を返す宗と佳音。

そんな2人が座る前にあかりが走って駆け込んできた。

「翔也くん!大丈夫ですか!?」

きっと翔也のことが心配で走ってきたのだろう。翔也の存在を確認した途端その場に座り込んでしまった。

「あかりさん、大丈夫?僕は大丈夫だから、とりあえず落ち着いて。」

翔也のその言葉でやっと自分が動揺していたことと、宗と佳音がいることに気づいた。

「あ…ごめんなさい。佳音、宗さん。」

「いや、いいよ。とりあえず、座ろうか。」

宗のその言葉で今まで立っていた3人が座る。

「で、あかりちゃん。大丈夫ってどういうこと?」

「あ、それなんですけどね…」

歯切れの悪い言い方をしながら、翔也の方を見るあかり。翔也がうなづいたことで続きを話し始めた。

「実は翔也くんの性転換がバレちゃったみたいで、クラスの男子にいじめられてるみたいんです。

その中でリーダー格の男子が主導でやってるのでそれだけでも押さえ込めばなんとかなるとは思うんですが。」

「実はそうなんです。その男子に女々しいっていじめられてしまって…。」

あかりの説明を補足する翔也。その顔はよく見ると頬が腫れていた。

「そんな…まさか翔也くんがいじめられてるなんて…。それって、先週メールで相談してもらったことだよね?」

「はい、そうです。」

4人の間に少しの沈黙が走る。その沈黙を破ったのは宗だった。

「一応、昨日あかりから兆候は聞いてた。だが、起こるにしては早すぎるな。

そもそも、なんでバレたんだ?ここにいる3人がバラすとは考えにくいし、そもそもそのことを知ってる人が他にいないはずなんだが…。」

「ええ、それが疑問なんです。どうして、翔也くんの個人情報を知ったんでしょうか。」

「私みたいに特殊な情報網があったら可能かもしれないけど、普通は無いよね。」

「そもそも、よっぽど恨みでも持ってない限りそんなこと調べないだろう。佳音の場合はイレギュラーだから想定外で大丈夫だな。」

翔也以外の3人が思い思いの考えを話すが、納得のいく理由はでてこなかった。

一方、張本人である翔也は、頭を垂れてうなだれていた。

「翔也、大丈夫か?」

「あ…すいません。」

「傷ついてる中、急かして悪いのだが…おまえはどうしたい?」

その質問は、ショックを受けていた翔也の頭を覚まさせるものだった。

「宗ちゃん。もちろん、解決したいに決まってるじゃん。翔也くん、そうだよね?」

だが、翔也からの返事はなかった。いや、返事はなくても表情は少し歪んでいた。

「すいません…せっかく相談してもらっているんですが、どうも自分の中でショックが収まらないので今日は先に帰ってもいいですか?」

「ああ。いきなり聞くのは辛かったな。僕が、駅まででも送っていこう。」

翔也にとって、許可してもらえるのは想定範囲内だったが、まさか送っていくと言われるとは思っていなかった。

「いえ…大丈夫です。」

「じゃあ、うちが付き添って…」

だが、あかりの言葉は宗の手によって遮られた。

「すまない、あかり。今日は僕が送らせてくれ。」

その行動から察したのか、それ以上あかりが文句を言うことも自己主張することもなかった。

「じゃあ、行くぞ。」

ここまで強硬姿勢を崩さない宗を振り払うことは、余裕のない今の翔也にはできなかった。



このところ、ペース的に全然書けてなくて更新ができませんでした…。


放置しておくのもまずいので一部更新します。

13話分は終わってないので書き終え次第追加していきますのでよろしくお願いします。


追記

遅くなってしまいすいません。13話分完結しました。

もともと、区切りを付ける意味でしか考えていなかったので次の話で第2章は終了予定です。

その後の話については、14話終了後に詳しく話します。

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