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昔の親友、今彼女  作者: twilight
第2章「同好会編」
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第10話「部活勧誘」

こうして、始業式がやってきた。

クラス分けについて、特記する点はない。

別に佳音と同じクラスになったわけでもなく、またそれを悲しいとも思っていない。

非情なのではなく、慣れてしまったというだけなのだが。

むしろ、問題は始業式の後。

急に僕のクラスにやってきたと思ったら、ただ単についてきてと言う佳音。

逆らっても意味がないとわかっているのでそのままついていく。

「…ここは?」

「部室に決まってるじゃん。明日の入学式から1年生が部活に入部可能になるでしょ?

だから、今日のうちに部室の整理をしておこうと思って。」

「いやいや、話が飛びすぎだろ。なんで部室があるんだよ。そもそも、部活として認められてないだろ。」

「そのあたりはもう職員室に話を通してあるよ。顧問なしで正式な部活扱いじゃないけど、部室は使っていいって。

どうせ、使っていない部屋だからだろうけど。」

「それでも、破格だと思うけどな。先生方も可哀想に。」

「まあ、そんなことはいいんだって!とりあえず、掃除しようか。」

そう言って、僕の袖を引っ張る佳音。どうも、この部屋の惨状に耐えられないみたいだ。

「わかったわかった。とりあえず、使えるようにはしないとな。」

この部室にあるもの、机が数十個。以上。

というより、単純に机を置く物置だったらしい。

「じゃあ、とりあえず、使える程度には整理していこう!」

「りょーかい。」

僕と佳音のテンションの差がすごく印象的だった。


それから、1時間ぐらいだろうか。

机を必要な場所に移動し、埃まみれの教室を掃除した結果、

殺風景ではあるもののとりあえず、過ごせる程度には整理できた。

奥には、つまれた机が10個ほど。そして、手前に授業で使う机が4つくっつけられている。丁度小学校の給食のようなものだ。

4つある椅子のうちの2つに座る僕と佳音。

さすがに、急な仕事で疲労がたまってた。

「そもそも、これだけやって部員が入らなかったらどうするんだよ。」

「その時は、宗と2人きりで過ごすのもいいかなって。」

「いつもと変わらんな。というか、この部活自体が非公開なんだよな?」

「うん、そうだよ。」

「どうやって、部員を連れてくるんだ?」

「もちろん、スカウトしかないよ。」

「誰をスカウトしてくるん…ああ、あの時のカルテか。」

「そういうこと。これで、活動理由も説明しなくていいかな?」

「ああ。名目上の活動理由は欲しいところだけどな。」

「交友会じゃだめ?」

「だめというか、納得するような理由ではないね。」

「細かいことは気にしたら負け!

それよりも、明日のスカウトについて決めようよ。」

「決めるって言われてもなぁ。そもそも、あの時読んだ以外にはどんなやつか知らないんだぞ?」

「それは安心して。私が説得するから。」

そう言って、無い胸をはる佳音。いろんな意味で説得力はなかった。

「まぁ、こんなもんか…。」

僕のそんなつぶやきを証明するかのごとく、特に記念するべきでもない第1回の部活は、いつもの会話の場所を変えただけという結果に終わった。



次の日。予告通り、国枝くんの勧誘が始まった。

宣言通り佳音が話しかける。

「国枝くんだよね?」

「え…は、はい。先輩…ですよね?どうして僕の名前を?」

「いろいろと情報網があってね。少し相談したいことがあるんだけど、ついてきてもらえない?」

「えっと…部活についてはまだ決めてないので、出来れば今日は帰りたいのですが…。」

「うーん、それだと困っちゃうんだけどなぁ。君の中学時代を知ってるって言ったらついてきてくれる?」

その言葉を聞いて、明らかに怯えた表情を見せる国枝くん。どう考えても悪手だ。

「わ…わかりました。」

だが、その悪手は怯えと引換にどうにかついてこさせることに成功したようだった。不幸中の幸いか。

佳音の後ろをついていく翔也。そして、少し後ろをついていく僕。

意図せずして、連行しているかのようだった。…最も、実質的にもそうだったのだが。


部室でとりあえず、座らせたもののその顔からは緊張と怯えが強く浮かんでいる。

当たり前といえば当たり前だが、明らかに佳音の交渉が問題だ。

「ここなら、周りにばれないから聞くんだけど、国枝くんって中学まで女子として過ごしてたよね?」

急に核心へ突っ込む佳音。そして、更に怯えて言葉すらでない国枝くん。このあたりが限界か。

そう判断して、僕は佳音のサポートに回ることにした。

「とりあえず、佳音が色々と誤解させるような言い方をしているが、僕達は脅そうとかそういったつもりはない。

単純に助けになればいいなと思っているだけなんだ。」

「助け…ですか…?」

とりあえず、佳音に話すのを辞めさせて僕が説明をする。

こちらの方がまだ話がわかると判断してくれたのか、質問はしてくれるようになった。

「ああ。

いきなり、核心を話すけど、ここにいる佳音という女子。

彼女は、中学まで男子として過ごしていたんだ。丁度君と逆だ。」

「え…?」

僕の言葉にあっけに取られる国枝くん。ここまでは予想通りだったので、話を勧める。

「その上で、佳音は実体験から国枝くんの悩みをある程度解決できるんじゃないかと考えてるみたいだ。

僕にはわからない、特有の悩みもあると思うんだ。例えば、ホルモン異常による不安定。

特にこれなんかは他の人のサポートがあるといいと思ってる。

もし、余計なお世話だったらいいんだが、もしよかったらこの部活の後輩として所属してもらえないか?」

国枝くんは僕の言葉を理解しかねているようだった。まくしたてたから、ある意味で正しい反応か。

それから1分ほどの沈黙の後、ようやく言葉を発した。

「状況は…なんとなく分かりました。つまりは、先輩方は僕の相談相手としていてくれるってことですか?」

「そうそう。翔也くんが悩んでいることは、私も経験済みだったりするから助けてあげたいなって思うんだけど、だめかな…?」

そう言って、上目遣いで質問を投げかける佳音。というか、いきなり名前とは馴れ馴れしい…。

だが、その効果はあったようで、みるみるうちに赤くなる国枝くん。

「…1日考えさせて下さい。」

しかし、真っ赤になった国枝くんはそう言って、走って部室を出て行ってしまった。

そして取り残される先輩2名。1名呆れ顔、1名満面の笑み。

こうしてある意味で最悪の体面となった入部相談は、中断されることになった。



結論から行ってしまうと国枝くんは僕達の同好会に入部した。

1日考えてまとまったのか、怯えはなくただ緊張の色だけが見え隠れしていたが。

「呼び方は翔也くんでいいかな?」

「はい!翔也って読んで下さい。僕は先輩方をどうやって呼べばいいですか?」

そう佳音が聞くと、国枝くんはほとんど即答で答えた。

「そうだな…、僕と佳音もそれぞれ名前で呼び合ってるからそれでいいぞ。だよな?佳音。」

「うん。そのほうがフレンドリーな感じもするから私もそれがいいかな。」

「分かりました。佳音先輩に宗先輩ですよね。これからよろしくお願い致します。」

「こちらこそ。」

「よろしく!」

そこから、互いに自己紹介をしていき、今日の活動は終了した。

気弱だが、思ったよりも気楽に話してくれているようで出だしは良かったと言えるだろう。

少し不安があるとすれば、翔也が佳音と話す時、僕と話す時とは違った雰囲気が出ていた気がするが…佳音は気づいてないだろう。


若干違和感のある描写がありますが、書け次第直していきたいです。

まずは第2章の終了目指して頑張っていきます。

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