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369の世界 〜12冊の魔導書〜  作者: ダーク創造神
第一章 小学校低学年
7/25

第6話 魔法

 暗がりの通路は、ひんやりとしていた。


 下へと続く石の階段。

 一歩踏み出すたびに、靴音が小さく反響する。


 そのとき。


 壁に掛けられていた古いランタンが、ひとつ、またひとつと――

 勝手に灯り始めた。


 橙色の光が、通路をゆらりと照らす。


 ミロクたちが息を呑む中、

 タカミザワだけは足を止めなかった。


 怖くないわけではない。

 だが、それ以上に。


 知りたい。


 この先に何があるのかを。


 ーーーーーーーー


 やがて辿り着いたのは、大広間だった。


 天井は高く、空気は乾いている。

 無数の本棚が並び、どれもホコリを被っている。

 まるで、忘れ去られた図書館の影。


 タカミザワは、ゆっくりと歩み寄り、

 一冊の本に手を伸ばした。


 指先が、革表紙に触れる。


「……これは」


 静かに呟く。


「魔法の本……」


 ページを開く。


 そこには、見慣れない古代文字と共に、基礎魔法の理論が記されていた。

 

 だか、あらゆる書物を熟読してきたタカミザワにとって、古代文字を解読するのは容易かった。


 魔力の循環。

 魔流の制御。

 詠唱の構造。


 タカミザワの瞳が、わずかに揺れる。


 夢中になって読み進める。


「魔法……? それって都市伝説のアレか?」


 ケイタロウが半笑いで言う。


 タカミザワはページから目を離さず、静かに返した。


「魔法は、実在する」


 空気が止まる。


「マジかよ……」


「すげー……」


「ほんとにあったんだな……」


 三人が小声でざわつく。


 タカミザワは、ゆっくりと本を閉じ、

 そして、振り返る。


「このことを、内緒にできるか?」


 真剣な眼差し。

 冗談ではない事がすぐに分かる。


 ケイタロウが口元を歪める。


「わかった。だが、条件がある」

「その魔法とやらを、俺たちに教えてくれるなら、黙っててやる」


 挑発とも交渉ともつかない声音。


 タカミザワは沈黙し、

 頭の中で、計算が走る。


 父。

 魔法教会。

 そして――魔力1。


 この本が本物なら。


 もしかしたら、

 何かが、変わるかもしれない。


「……わかった。教えてやる」


 小さく言う。


 三人の目が少しばかり輝く。


「だが、時間をくれ」

「魔法について、調べたい」


 再びページを開くと、

 ぶつぶつと独り言を呟きながら、次の書物へ手を伸ばす。


 そのとき。


 ――キーンコーンカーンコーン。


 チャイムが、大広間にも届いた。


「やべ! 昼休み終わった!」


「早く戻るぞ!」


 ミロクたちは慌てて階段を駆け上がる。


 足音が遠ざかる。


 タカミザワは、動かなかった。


 ランタンの光の下。


 本の文字が、ゆらりと揺れる。


 彼の指先が、ページをなぞる。


 "――魔力とは、生まれ持った素質ではない。"


 その一文に、彼の目が止まった。


 雨音が、遠くで鳴る中、

 タカミザワは、ただひとり、本を読み続けた。


 ーーーーーーーー


 放課後。


 雨はまだ止んでいなかった。


 三人は、再び図書館の奥へと足を踏み入れる。

 動く棚の先、地下の大広間。


 ランタンの光が、揺れている。


「――遅いぞ」


 腕を組み、本棚にもたれながら待っていたタカミザワが言った。


 その声は、どこか自信あり気だった。


「仕方ねぇだろ」

「さっき終礼が終わったばっかだ」


 ケイタロウが肩をすくめる。


「ふん――」


 タカミザワは小さく鼻を鳴らした。


 そして、一冊の本に指先を触れた。


「魔法について、教えてやる」


 その瞬間。

 本の表紙が、淡い光を帯びる。


 ふわりーーと。

 本が、宙へ浮かび上がった。


「――浮いてる!」


 ミロクの目が、大きく見開かれる。


 ページが、ゆっくりとめくられる。


「これは基礎魔術、“浮遊”だ」


 タカミザワは静かに説明する。


「空気中に存在する魔素を操作し、対象を持ち上げる」


 本が、彼の指示に従うように、左右へ移動する。


「軽い物なら動かせる。本をめくらせたり、ペンを操ったりな」


 声には、わずかな誇らしさが混じる。


 しかし。


「浮遊……? 違うな、それは手品だろ」


 ケイタロウが腕を組み、にやりとする。


「や、やめろよケイタロウ……」


 ミロクが小声で止める。

 そして、スコールは無言で観察している。


「――ふん」


 タカミザワは、再び鼻を鳴らした。


 そして。


 ――パチンッ。


 指が鳴る。


 その瞬間。


 黄緑色の小さな光が弾け、次の瞬間、

 地下の書庫に、あり得ない強風が巻き起こった。


 ランタンの炎が大きく揺れ、本棚の埃が舞い上がる。


「――うわっ!」


 ケイタロウが尻餅をつく。


 ミロクとスコールは目を丸くしたまま動けない。


 密閉されたはずの地下。


 どこからも空気は入らないはずなのに、

 確かに、風が吹いた。


 タカミザワの髪が、ふわりと揺れ、

 眼鏡の奥の瞳が、静かに光る。


「これが――魔法だ」


 不敵な笑み。


 その顔には、初めて見せる自信があった。


 ーーーーーーーー


 それから数日。


 放課後になると、四人は図書館の隠し部屋に集まるようになった。


 雨は相変わらず続いている。


 ランタンの灯りの下、

 タカミザワの声だけが静かに響く。


 ミロクは風の魔術を。

 スコールは水の魔術を。


 風は軽やかに巻き、

 水は空気中から滲むように集まる。


 だが――。


「……ダメだ」


 その場に座り込んだのはケイタロウだった。


「どうやっても魔法が使えねぇ……」


 何度試しても、何も起きない。


 空気は揺れず、光も生まれない。


 拳を握り、奥歯を噛む。


 才能が無い。

 いや、それ以前に魔法が“反応しない”。


 その沈黙が……重い。


「諦めるなよ」


 タカミザワが、にやりと笑った。


「良いものを作ったんだ」


 ポケットから取り出したのは、小さな水晶。

 内部には淡い光が揺らめいている。


「“潜在能力開示魔法ステータスオープン”レベル1だ」


 誇らしげに掲げる。


「これに触れれば、自分の能力や適性が分かる」


 ケイタロウが眉をひそめる。


「マジかよ……」


「試しに、ミロク。お前が触ってみろ」


 ミロクは躊躇なく手を伸ばした。

 好奇心の塊のような少年だ。


 指先が水晶に触れた瞬間、

 内部の光が強く瞬く。


 そして、空中に淡い文字が浮かび上がった。



 ミロク


 ・攻撃力 5

 ・魔力 2

 ・魔法適性 風/雷

 ・固有能力ユニークスキル 鳥飼い(バードマスター)



「……おお」


 ミロクが目を丸くする。


「雷もあるのか?」


 正直、風だけだと思っていた。


 タカミザワは静かに頷く。


「風と雷は相性がいい。珍しくはないが、悪くもない」


 スコールは黙って文字を見つめている。


 数値。

 才能。

 評価。


 そして、固有能力(ユニークスキル)"鳥飼い(バードマスター)"。


 その単語が、タカミザワの胸をわずかに締めつけた。


 魔力1。


 あの日、刻まれた数字。

 ミロクよりも低い数値。


「……次は俺だ」


 スコールが静かに前へ出る。

 

 水晶に触れ、光が強く揺れた。

キャラクター紹介

・ヒヨノ(小森 日和乃) 誕生日 8月29日 7歳

 一般家庭に生まれ、勉学に励む少女。

 家族構成は、父、母。

 父は学校の体育教師(シラトリ先生)。シラトリ先生の名前の由来は"あだ名"で、白鳥の柄が付いた白いTシャツを着ているところからきている。実際は"小森先生"。

 母はリモートワークで働く社長秘書。

 ヒヨノは、柔軟で堅物な父と勤勉で優しい母のもとで幸せに暮らしている。

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