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369の世界 〜12冊の魔導書〜  作者: ダーク創造神
第一章 小学校低学年
22/25

第21話 千里眼と仲間

ーーーー 魔眼と千里眼 ーーーー


台風が去ったあとの空は、妙に澄んでいた。

だが空気は冷たい。冬の匂いがする。


放課後の図書館。

地下書庫の灯りだけが、静かに机を照らしている。


ミロク、スコール、ケイタロウ。

三人は自然とタカミザワの前に座った。


タカミザワは椅子に腰かけ、足を組む。


「今日はお前らに色々と知らせておきたい」


三人は顔を見合わせ、とりあえず黙って頷いた。


「まずは、風の神殿で俺が倒した暗殺者」


静かな声。


「そいつの左手にあった魔眼。“千里眼”」


空気が少し張る。


「あれを“解析魔法”で分解し、“魔法陣化”した」

「本来ならば、"移植魔術"を使うところだったが…」


ミロクが首を傾げる。


「移植魔術?」


「あぁ、"移植魔術"は危険だ」


即答。


「成功すれば誰でも魔眼を使えるようになるが、失敗すれば身体が壊れる」


医療系の魔術。

だが、本質は闇属性魔法。


ケイタロウが頬杖をつく。


「なんか、平気で危ない事するよなお前」


「安心しろ。移植魔術は使用していない」


タカミザワは鼻で笑う。


「移植魔術は魔法教会が、“魔族研究”の延長で臨床実験していた歴史がある」


その言葉に、三人の表情が曇る。


「まぁいい…」

「結果論。俺の固有能力が反応した」

「二つ目の固有能力として“千里眼”を会得した」


沈黙。


スコールが口を開く。


「固有能力って……二つもあるのか?」


もっともな疑問。


「固有能力は一つとは限らない」


地下書庫の本を開く。


「条件を満たせば、複数解放される」


ページをめくる。


「最大で三つまで確認されている」


メガネを押し上げる。


「それで、千里眼は何ができるんだ?」


ケイタロウがやや面倒そうに聞く。


タカミザワは、わずかに口角を上げた。


「見たいものが見れる」


沈黙。


「……それって、覗き見できるってことか?」


ケイタロウが目を見開く。

ミロクとスコールも反応する。


「お前らの思う通りだ」

「だが、くだらない事には使わない」


さらり。

見下す視線。


一瞬で三人の好奇心がしぼむ。


「新たな仲間をスカウトしようと思う」


話題が変わる。

冷静な一言。


三人は顔を上げる。


風の神殿。

暗殺者。

死の恐怖。


あの感覚を思い出す。

そして、頷くしかない。


「今のままじゃ足りない」


タカミザワは続ける。


「前衛、後衛、情報屋、資金源」

「そして特定属性の適性者」


淡々と並ぶ条件。

人ではなく、役割。


ミロクが小さく息を吸う。


「……人を探すのか?」


「探す」

「千里眼で」


静かに言い切る。


図書館の空気が少し冷たくなる。


スコールが問いかける。


「俺たちは……仲間だよな?」


その言葉に、ほんの一瞬だけ、

タカミザワの視線が揺れる。


「……あぁ」


短い返事。

だがその声は、完全には冷たくなかった。


革命は準備段階に入った。


ーーーー 契約について ーーーー


タカミザワが、ふっと話題を切り替える。


「それはそうと、スコール」


名を呼ばれ、スコールが顔を上げる。


浮遊魔術で棚から二冊の本が抜け出し、音もなくタカミザワの手元へと滑り込む。


「お前の龍魚との“召喚契約”についてだ」


ページをめくる音。


スコールは小さく息を吐いた。


「ちょうど、その話が聞きたかったんだ」


タカミザワは淡々と続ける。


「召喚契約にはいくつかパターンがある。基本は、双方が条件を提示し合い、合意の上で結ぶ」


指先で文字をなぞる。


「龍魚側は“無条件契約”だ」


三人が目を見開く。


「スキルや魔法を完全共有。ただし龍魚は、お前の力を使用できない。お前にとって極めて都合の良い契約だ」


スコールがわずかに驚く。


「つまり……」


「好きな時に呼び出せる」


静かな断言。


「でも、あいつは戦闘中に消えた」


スコールの疑問。


タカミザワはページを閉じる。


「理由は二つ。敗北か、召喚者の魔力切れ」

「前者は緊急離脱、死亡ではない」

「後者は顕現維持不能、これも死亡ではない」


窓の光がメガネに反射する。


「再召喚は可能だ。ただしクールタイムがある」


「クールタイム?」


「レベル差とダメージ量だ」


本を軽く叩く。


「レベルの格差が大きいほど、召喚者の魔力に負荷が増し、召喚可能な魔力までの回復に時間がかかる」

「次に、龍魚の受けたダメージが深いほど、体力の回復に時間がかかる。それまでは召喚ができない」


短い沈黙。


「風の神殿では、お前の魔力不足と、龍魚とのレベル差が原因だ」


スコールは黙って頷いた。

あの感覚を、覚えている。


タカミザワの視線がミロクへ向く。


「ついでに言っておく。お前の鳥二匹は未契約だ」


「え?」


間の抜けた声。


「契約に“都合の悪さ”を感じている可能性が高い」


マルが、ミロクの頭の上で二度、コクコクと頷いた。


「契約すると自由が制限される場合があるからだ」


ミロクは少し寂しそうに笑う。


「そうか……」


タカミザワは足を組み直す。


「契約にも種類がある。“加護契約”“守人契約”」


“神”“加護”という言葉に、ミロクの胸がわずかにざわつく。

脳裏をよぎる死神"クロネコ"という存在。


「守人契約って?」


ケイタロウが前のめりになる。


タカミザワはわずかに口角を上げた。


「守人は魔法使いを守る存在だ。古代より、常にペアで行動していた」


「魔物との戦闘、魔法戦争、人魔大戦。全てに守人がいた」


ケイタロウの目が少し輝く。


「契約すれば、ステータスや成長度を共有できる。相互召喚も可能」


一瞬の間。


「ただし、守人は魔法は使えない」


ケイタロウの肩が少し落ちる。


「俺の提案だが、スコールと契約した方が合理的だ」


冷静な提案。


だが、ケイタロウは即答した。


「俺はミロクと契約する」


迷いがない。

幼い頃からの積み重ね。言葉より重い時間。


タカミザワは鼻で笑う。


「好きにしろ」


ミロクとケイタロウが向かい合う。


《守人契約》


白い光の円が足元に展開される。

静かな振動。


やがて光が収まる。


「契約完了だ」


「少し離れて、“守人召喚”と唱えろ」


二人は十五メートルほど距離を取る。


《守人召喚》


瞬間。


白光。


ケイタロウがミロクの足元から現れる。


「すげぇ!!」

「マジかよ!!」


テンションが跳ね上がる二人。


コホン、と咳払い。

タカミザワの声は静かだ。


「召喚契約とは異なり、深刻なダメージを受けても緊急離脱は無い」

「つまり、死んだらで終わりだ」

「気をつけろよ」


喜びの中、ミロク達は冷静さを取り戻す。


"死んだら終わり"

その言葉は、何より重い。


「次の話に移るぞ」


その声には、

わずかに焦りのようなものが混じっていた。


革命の布陣が、少しずつ整っていく。


ーーーー 仲間を増やす ーーーー


地下書庫の机の上に、校内の地図が広げられる。


タカミザワは指で校舎の位置をなぞった。


「俺の“鑑定魔術”と“千里眼”で仲間の候補を探した」


淡々とした声。


「とりあえず二人」


三人の視線が集まる。


「一人目はクロネコ。種族は死神」


ミロクの心臓がわずかに跳ねる。


「ステータスは低い。だが、神級スキルを保有している可能性が高い」


静かな断言。


「二人目はサイゴウ。種族はハーフ巨人。守人」


地図の一点を軽く叩く。


「基礎ステータスが高い。前衛として優秀だ。期待値は高い」


まるで市場の銘柄を語る口調。


ケイタロウが睨む。


「あまり、人を値踏みするなよ」


タカミザワは鼻で笑う。


「数字は嘘を吐かない」


短い。


「それに戦闘において、データは生存率を上げる」


理詰め。


ケイタロウは口を閉じるしかない。


タカミザワは続ける。


「それと、今マルオ達が学校にいない」


ミロクが反応する。


「居場所は不明だが、戦力としては優秀だ」


「雷魔法と炎魔法は火力要員になる」


「固有能力“分析”と“精密射撃”」


口元がわずかに歪む。


「仲間にしないのは勿体無い」


ミロクの脳裏にヒヨノの姿が浮かぶ。

胸の奥が少しざわつく。


スコールが問いかける。


「大人は仲間にしないのか?」


タカミザワは振り返る。


「いい質問だ」


少しだけ満足げ。


「大人は自由が利かない」

「立場を意識する」

「秘密を守る保証がない」


理路整然。


「魔法や魔素の話をすれば、通報される可能性もある」


誰も反論できない。


子どもは軽い。

だから動ける。


大人は重い。

だから縛られる。


「まぁ、難しい話じゃない」


浮遊魔術で本を棚に戻す。


「優先順位だ」


地図を指で叩く。


「まずは死神」


その声には、わずかな高揚が混じっている。


「“神”を仲間にできるなら、これほど心強い存在はない」


ミロクは黙る。


クロネコ。

あの砂浜での契約。


タカミザワの丸メガネが光る。

静かな笑み。


その笑みは、少しだけ——

楽しそうだった。


ーーーー 死神クロネコ ーーーー


次の日の放課後。


一年二組の教室の前に立ち、

ガラリと扉を開ける。


そこにいた。


黒髪。前髪で目は見えない。

口元は、猫みたいな形。


「ユンちゃーん、ニャーと一緒に帰らニャーい?」


……。


誘われた女子は、無言で去る。


そして、

クロネコは床に手と膝をつき、崩れ落ちた。


「にゃああああああああ……」


「あれが……死神なのか?」


ケイタロウの声が、

ミロクの心の声と完全に一致していた。


「いかにもだ」


タカミザワが呆れ顔で答える。


クロネコと同じクラスのスコールが小さく呟く。


「まさか、アイツだったのか……」


クロネコがこちらに気づく。


「お前ら誰ニャ?」


相変わらずな語尾。


タカミザワが一歩前に出る。


「お前に話がある」


「ニャーは男に用は無いニャ」


即答。


完全に背を向け、

空気が止まる。


「もう一度だけ言う。話がある」


タカミザワの声が低くなる。


「男は嫌ニャ」


完璧な拒絶。


しばらく沈黙。


「女がいれば良いんだな?」


タカミザワの声が変わる。


クロネコが振り向く。


「そうニャ」


ミロク達は疑問を浮かべながら、

廊下に出る。


「作戦がある」


タカミザワの嫌な笑み。


「幻術魔法だ」

「一人だけ女の子の見た目にする」

「スコール、お前だ」


「は?」


スコールの顔が引きつる。


「髪が長い。ちょうどいい」


杖をヒョイッと振ると、

影魔法の紫光がスコールを包む。


数秒。


そこに桜色の長髪の少女が現れる。


ミロクとケイタロウは、言葉を失った。


「本当に姉ちゃんだ……」


スコールが鏡を見つめている。

正直、完成度が高い。


「行くぞ」


背中を押され、教室へ。


ミロクとケイタロウは廊下から覗く。


クロネコが、桜色の少女を見つめる。


じぃ……。

舐めるような視線。


タカミザワが小さく息を呑む。


「連れてきたぞ」


沈黙。


そしてクロネコが、ふぅ、と息を吐いた。


「幻術だにゃ」


終わった。


「やはり死神の目は欺けなかったか……」


タカミザワが小さく舌打ちする。


クロネコが首を傾げる。


「ニャーの事、なんで死神って知ってるニャ?」


タカミザワの目が一瞬だけ細くなる。


「鑑定魔術だ」


即答。


クロネコは、しみじみとスコールを見つめた。


「いろんな魔法使えるんニャねぇ」


口元がにやりと歪む。


「気に入ったニャ」

「話を聞いてやる代わりに条件があるニャ」


タカミザワの眉がわずかに動く。


「鑑定魔術と幻術魔法を、ニャーに教えるニャ!」


教室が静まり返る。


そして。


「いいだろう……教えてやる」


静かな声。

タカミザワの横顔は、冷静だった。


交換条件とはいえ、

まだ仲間ではないヤツに魔法を教える。


それは、味方を増やすことなのか。


それとも――


クロネコは、楽しそうに笑っていた。

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