73話 一途な愛の証明
辺境伯城の最上階に位置する、最高級の調度品で整えられた貴賓客室。
アリアとリリア――長年すれ違ってきた姉妹が、ついに心を通わせ、過去の呪縛を解いたという劇的な再会は、彼女たちの人生において最大の節目となった。 その余韻が城全体を優しく包み込む中、アーサーとリリアはようやく、二人きりで向き合う静かな時間を迎えていた。
窓の外には、収穫を終えた大地を静かに照らす秋の星空が広がり、サロンの暖炉が柔らかな光で二人を包み込んでいる。
アーサーは、隣に座るリリアの手をそっと取り、これまで胸の奥に閉じ込めてきた想いを打ち明けた。
「リリア。改めて、もう一度きちんと伝えさせてほしい。私は、君の初恋の相手がアルフレッドだと信じ込み、勝手に傷ついて君を遠ざけてしまった。本当に、すまなかった」
アーサーの瞳には、次期国王としての責任感だけでなく、一人の男としての誠実な後悔が宿っていた。
「でも、私がずっと想い続けてきたのは、世界中で君だけなんだ。君が『王都の星』として誰よりも気高く輝く姿に、私は何度も救われていた。私が王位を継ごうと戦ってきたのは、君を誰の手にも渡したくない、君をこの手で守りたいと願ったからなんだ」
その真っ直ぐな告白に、リリアの胸は熱く高鳴った。アーサーが自分を必要な存在としてだけでなく、一人の女性として愛してくれていたのだと知り、視界が涙で滲んでいく。
「アーサー様……。私も、ずっと貴方をお慕いしていました。貴方にとっても私が初恋の相手だったと知ったとき、どれほど嬉しかったか……。貴方の強さと、王としての責任感ゆえに、私への想いを封印されていたのですね」
リリアはアーサーの手に自分の手をぎゅっと重ね、潤んだ瞳で真っ直ぐに見つめ返した。
「これからは、私の持つ力のすべてで貴方を支えます。王妃としてもですが……唯一、愛する貴方を想う一人の、ただの女性として。アーサー様こそが、私の世界の光であり、真の秩序なのです」
「リリア……」
二人はどちらからともなく引き寄せられ、強く抱きしめ合った。
すでに結婚を見据えた婚約者同士ではあったが、アーサーは溢れる愛おしさを抑えきれないように、リリアの唇へ優しく触れるだけの、清らかな口づけを贈った。
あまりの幸せに、リリアの目からは大粒の涙がポロポロとこぼれ出した。
その震える身体を、アーサーはより一層強く、慈しむように抱き寄せた。
「リリア。泣かないでくれ……。君の涙を見ると、胸が締め付けられるんだ」
アーサーは困ったように眉を下げ、愛おしそうにその涙を指先で、そしてそっと唇で拭った。
「ううっ、……ごめんなさい。幸せすぎて、止まらなくて……。だって、やっと本当にアーサー様と結ばれたんだって思ったら……」
その健気な姿に、アーサーは愛しさが極まり、彼女の涙が止まるまで大切に抱きしめ続けた。そして、彼女の額や髪、涙の跡に、幾度も慈しみのこもった口づけを落とした。
長年の誤解がようやく解け、二人の純粋で一途な初恋が、婚約という形だけでなく、心と心の底から、真実の結びつきとなった瞬間だった。




