表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【全年齢版】呪われた辺境伯と無色の聖女  作者: 真紅愛


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

65/75

64話 初恋の再会と王太子の誓い



王太子アーサーは、周囲がリリアを完璧な聖女ともてはやす中で、ただ一人、彼女の瞳の奥に潜む影に気づいていた。

 


彼女が放つ眩い光の裏には、聖女の力を発現させられなかった姉アリアへの複雑な葛藤と、リーゼンバーグ侯爵家の名誉を一人で背負わねばならないという、押し潰されそうなほどの重圧があった。


 

アーサーは、非の打ち所がない振る舞いを見せるリリアの中に、人間的な脆さと、それを隠して懸命に足掻く健気さを見出し、いつしか深く心を惹かれていったのである。



アーサーにとってのリリアは、単なる未来の妃候補ではなかった。

 

彼女の持つ高潔な強さと優しさは、彼が理想とする王国の未来そのものと結びついていた。



しかし、当時のアーサーは、泥沼のような王宮の現実に搦め取られていた。王太子として、終わりの見えない権力争い、母である王妃の度重なる浪費、そして虎視眈々と兄の座を狙う弟アルフレッドの野心。


これらに対抗するための冷徹な策略を優先せざるを得ず、リリアへの情愛は常に国政の憂慮という名の厚い壁の奥底に隠し続けた。

 


(私が彼女に近づけば、リリア嬢をこの醜い権力闘争の渦中に引きずり込むことになる……) 

愛ゆえの躊躇。アーサーは、彼女を泥沼から遠ざけるために、あえて距離を置き、静かに見守る道を選んだ。 


だが、その配慮こそが二人の運命を狂わせる。

 

アリアが辺境へ追いやられ、アルフレッドがリリアを自らの婚約者として迎え入れた際、アーサーは絶望と共に身を引いた。


リリアがアルフレッドの手を取ったのは、彼女の意思だと信じ込み、「自分の初恋は独りよがりな錯覚だった」と結論づけてしまったのだ。


一方のリリアも、アーサーの頑なな冷たい態度を見て、、「彼は私に一欠片の興味もないのだ」 



そして、熱烈な言葉で自分を誘うアルフレッドの姿に、幼い頃に焦がれた初恋の相手の幻影を重ね、自分を欺くようにして婚約を受け入れたのである。

 

 

時を経て、アルフレッドらの悪事が暴かれ、暗雲が立ち込めていた王宮にようやく真実の光が差し込んだ。



リリアの釈放。そして、アルフレッドとの間に結ばれていた歪な婚約の解消。



アーサーは独り、深い自省に沈んでいた。



自身の無関心という名の傲慢さと、立場を盾にした卑屈さが、大切な人をどれほど孤独にし、二人の初恋を遠回りさせてしまったか。



そして、ついに訪れた。

  


リリアが、幼い頃から慕い続けていた真実の相手はアーサーであったと告白し、長年の誤解が氷解したあの夜。



アーサーは、王位継承の重圧も、国政の打算も、すべてをその場に脱ぎ捨てた。王太子としてではなく、ただ一人の男として、愛するリリアの前に跪いた。



「リリア。私は、立場を恐れるあまり貴女を孤独に突き落とし、あのような男に預けるという大罪を犯した。だが、もう二度と貴女を離さない。私と貴女の間に生まれる愛こそが、この国の繁栄を支える真の秩序となると信じている。……今一度、私と真実の愛を築き、生涯をかけて共に歩んではくれないか?」



アーサーの真摯な眼差しと、国を憂い、人を慈しむその優しい心。それは、幼い頃にリリアが初めて恋に落ちた、あの日のアーサーそのものだった。



「……はい。喜んで、貴方と共に」



リリアは涙ながらに頷き、その温かな胸に飛び込んだ。



二人は、初恋という名の真実の絆を握り締め、王国の腐敗という闇を完全に拭い去った。


辺境で同じく真実の愛を貫いたカイルとアリア夫妻、そして王都を支えるアーサーとリリア。二組の夫妻が固く手を取り合うことで、アルカディアス王国には、愛と秩序に満ちた新たな黄金時代が幕を開けようとしていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ