27話 愛と魔力の完全な調和
互いに愛称で呼び合い、心の壁を完全に取り払ったその夜。
カイルはアリアの手を取り、いつになく真剣な、しかし温かな瞳で見つめた。
「アリー。……今夜は、共に過ごしてほしい。魂だけでなく、貴女のすべてと向き合い、心から通じ合いたいのだ」
その言葉の意味を理解し、アリアの頬が微かに染まる。
しかし、そこに拒絶の色は微塵もなかった。彼女は信頼に満ちた瞳で、愛する夫を真っ直ぐに見つめ返した。
「はい……カイル様。私も、貴方様のお傍にいさせてください」
二人は寄り添うようにして、静かに寝室へと向かった。
扉が閉ざされたその部屋には、言葉など必要ないほどの、穏やかで深い愛の時間が流れていった。
◇ ◇ ◇
翌朝、二人は清々しい小鳥のさえずりと共に目覚めた。
カーテンの隙間から差し込む朝日が、部屋を明るく照らし出している。
アリアが目を覚ますと、そこには既に身支度を整えかけ、穏やかな微笑みを浮かべているカイルの姿があった。
「おはよう、アリー。……よく眠れたか?」
カイルの優しい声に、アリアは幸福感に包まれながら微笑んだ。
「おはようございます、カイル様。……はい、とても深く眠れました。なんだか、身体がとても軽いのです」
アリアがベッドから降り立つと、その変化は明らかだった。
彼女の表情は以前よりも晴れやかで、内側から力が湧いてくるように生き生きとしている。
カイルと共に過ごし、心からの安らぎを得たことで、彼女の聖女としての力は、かつてないほど高まっていたのだ。
そして、カイル自身にも劇的な変化が訪れていた。
「……信じられない。私の魔力が、完全に凪いでいる」
カイルは自身の掌を見つめ、驚嘆の声を漏らした。
これまで常に嵐のように渦巻き、彼を苛んでいたあの重苦しい魔力の奔流が、今は春の湖面のように静まり返っているのだ。
「アリー、君のおかげだ。君と深く心を通わせたことで、私の魔力は完全に浄化され、制御できるものへと変わった」
カイルは愛おしげにアリアの手を取り、その甲に感謝の口づけを落とした。
「君は私の光、そして私の命そのものだ」
「カイル様……。私も、貴方のお役に立てて、本当に幸せです」
二人は朝の光の中で微笑み合い、最強の辺境伯と、その力を調和させる無色の聖女として、真の意味で完成されたことを確信した。
この真実の結びつきこそが、やがて王国の運命を根底から変えていく、大いなる奇跡の始まりだったのだ。




