22話 王宮魔術師団の議論
王宮の深部、限られた者しか立ち入りを許されない魔術検証室。
そこでは、国王の密命を受けた王宮魔術師団の幹部数名が、アリア・リーゼンバーグの過去の判定データの再検証結果を前に、凍りついたような沈黙に包まれていた。
「ありえない……。北部の辺境伯、カイル・ローゼンベルク閣下の魔力波動が完全に安定している。暴虐な嵐が消え、鏡のような静寂が保たれているというのか」
団長は、極秘裏に持ち込まれた北部領からの観測報告書を震える手で握りしめた。カイルの魔力が正常化するなど、これまでの王宮魔術の常識では、天地が覆るほどの異常事態であった。
一人の若い魔術師が、厳重に保管されていた6年前――アリアが12歳だった当時の判定記録の解析結果を指差した。
「団長。当時の記録を当時の最高級判定器で再解析したところ、不可解な数値が検出されました。リリア様の判定時には驚異的な高出力を記録しましたが、アリア様の際には、針が『ゼロ』を示したままでした。しかし……」
若い魔術師は、解析チャートの一点を指した。
「詳細に解析したところ、針が振り切れる直前で、一瞬だけ判定器が機能停止に陥っていたことが判明しました。これは『出力がゼロ』だったのではなく、あまりの強大さに『判定できる範疇を瞬時に超え、回路が焼き切れる直前で止まった』状態を示している可能性があります」
団長は、その戦慄すべき可能性に息を呑んだ。
「判定できる範疇を超えた……? それはつまり、アリア様の聖女の力は、リリア様の力よりも遥かに強大だったというのか?」
「あるいは、その力の性質が我々の知る既存の聖女とは全く異なり、あまりに純粋で強大すぎる力が、かえって判定器の反応を無効化してしまった……。古代の文献にある真の聖女の伝説そのものです」
「……なんということだ!!!」
王宮魔術師団の権威たちは、今、取り返しのつかない真実に気づき始めていた。
王家がかつて辺境へ遠ざけたカイル・ローゼンベルク。彼はかつて制御不能な脅威であったが、今やその隣には、その荒ぶる魔力を完全に調和させ、さらに判定不能なほどの力を秘めた真の聖女アリア・リーゼンバーグ……いや、アリア・ローゼンベルクが寄り添っている。
二人は王家にとって、もはや無視できない、最強の夫婦となったのだ。
外部に漏れることのない王宮の深淵で、魔術師たちは自分たちが直視してしまった真実の重さに、ただ震えることしかできなかった。




