19話 聖女の力のさらなる覚醒
アリアがカイルの魔力を受け入れ、魂を共鳴させるたび、
彼女の内側――魔力が通り抜ける“器”そのものに、
確かな変化が積み重なっていった。
ある日、彼女が中庭で精霊たちと対話していると、その声が以前よりも遥かに鮮明で、立体的な響きを帯びていることに気づいた。
「アリア! おめでとう! あなたの器が、さらに大きく、深くなったわ!」
精霊の声は、もはや単なる思考の残響ではなく、実体を持った美しい音色のように鼓膜を震わせた。
そして、彼女は城の周囲に集う妖精たちの姿も、空気の揺らぎではなく、その色彩までもがはっきりと見えるようになった。
かつては変人扱いされることを恐れて隠し続けてきた力を、彼女は今、完全に制御できる段階に入りつつあった。
(これは、辺境伯様の魔力を通すことで、
私の“聖女としての感受性”が、極限まで研ぎ澄まされている証拠だわ……)
かつて、王都の判定で光を発さなかったがゆえにできそこないと蔑まれてきたアリア。
だがその真実は、
他者の魔力を無限に受け入れ、浄化し、
生命と大地を潤す清浄な流れへと変えて循環させるあまりに稀有で強大な聖女の資質だったのだ。
アリアの身体は、カイルの莫大な魔力という最高の触媒を得て、本来の判定器では捉えきれないほど巨大な聖女の器へと、真の覚醒を始めていた。
アリアは城内を歩きながら、ふと廊下に飾られていた花瓶に目をやった。
そこにあった枯れかけていた花が、彼女がそばを通り過ぎた瞬間、まるで命を吹き込まれたかのように生き生きと色を取り戻し、瑞々しく咲き誇った。
アリアは、自分の内側から微かな、けれど温かなエネルギーが放出されたのを感じ、足を止めた。
(私……もしかして、触れるものに生命力を与えられるようになっているの?)
彼女は確信した。
自分の能力は、単に魔力を無害化するだけではない。枯れた大地や弱った命に活力を与える真の聖女の力へと進化しているのだ。
王都の判定器が反応しなかったのは、彼女の力が既存の魔術の枠組みを遥かに超えた、根源的な生命の力そのものだったからだと直感的に悟った。
(……この力は、まだ内緒にしておこう。もっと確実に辺境伯様を守れるようになるまで)
アリアはこの力を、まだカイルに明かさないことに決めた。
この覚醒した力こそが、カイルの安定を盤石なものにし、過酷な辺境の地を楽園へと変えるための、彼女にとって最も大切な切り札になるはずだから。




