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6話 終わりの始まり

6話目になります。

ここから残酷描写注意になります。

―何が、起きた?―

 轟音で聴覚が麻痺し、視界も薄暗い倉庫では役に立たない。

―『お二人とも、起きてください。すぐに移動します』―

 頭の中に、声が響く。

―『扉を開けます。どうか、心の準備を』―

「こ、こころの…?」

「そ、ソフィアちゃん?」

 薄暗い中、ソフィアが倉庫の扉を開ける。

 そこにあったのは、灼熱の世界だった。

「あづっ…!」

「な、何が起きてるの…?!」

 グラウンドが、校舎が、周辺の木々が、赤く燃えていた。

「…あ、ああ」

「急いで移動しましょう。幸い、まだ生存者が居る内は、彼らを()に使う事ができます」

「生存…はぁ!」

 校舎の窓に、遠目だが拓海は見てしまった。

 黒こげの人影。

「そ、んな…みんな…」

「あ、あ、あ…」

 断続的に漏れる声。

 百合が目を見開き、頭を掻きむしっていた。

「いやぁぁぁぁあああああああああああ!!!!!!!」

 校舎に向かって駆けだす百合を、ソフィアが組み伏せる。

「離して!!みんなが!みんながぁぁぁぁ!!」

「申し訳ございません。少し、手荒な事をします」

 ソフィアが何かを口にすると、途端に百合は大人しくなった。

「ゆ、百合姉!?」

「ご安心ください、眠っておられるだけです」

 そう言いながら、ソフィアが百合を軽々と担ぎ上げる。

「行きましょう」

「行くって…学校のみんなは?」

「…今はご自身の命を優先してください」

 そう言い残すと、ソフィアは学校の外に向けて走り出す。

「何だよ…何だよ…、何だよちくしょう!」

 地に伏して涙を流す拓海。

「やっぱり…僕が不幸を…?」

―『拓っくんは何も悪い事してないでしょ?』―

 絶望の中、脳裏に浮かんだのは、今朝百合に言われた言葉。

―『拓っくんは優しいから、あたしの嫌がる事はしないと思う!』―

「…っ!百合…姉…っ!」

―そうだ、ここで僕が死ねば、百合姉を悲しませる…!―

 涙で頬を濡らしながら、拓海は立ち上がる。

「逃げ…なきゃ。追いつか…なきゃ…!」

 一歩、また一歩。

足を運び、やがて走り出す。

「はぁ…はぁ…はぁぁっ!」

 程なくして、先を行くソフィアに追いつく。

「もう大丈夫ですか?」

「大丈夫…じゃないよ」

「…左様ですか」

「けど、今は生き延びないと!」

「…かしこまりました。生き延びましょう」

 燃え盛る校舎を背に、二人は走り出す。

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