3話 転校生
連続投稿、3話目です。
日常が続きます。
「お、生川オーッス!」
「生川君、おはよう!」
「拓ちゃん、おっはよー!」
教室に入ると、クラスメイトから次々と挨拶が送られる。
「お、おはようみんな」
「なぁなぁ拓ちゃん!今日も百合先輩と一緒に登校したん?」
クラスのお調子者、沢田が声を掛けてくる。
「うん。今日も一緒だよ」
「だよな~!なら見たんだろ?先輩の夏服を!一番乗りで!」
「え、えっと」
「さ~わ~だ~っ!朝っぱらから何聞いてんの!」
「げげっ!委員長!?」
逃げようとする沢田の首根っこを、クラス委員長の守屋が掴む。
「本っ当にあんたは、学校の風紀を乱す事しかしないんだから!また先生に言いつけて、反省文かかせるわよ!」
「そ、それだけはご勘弁を~!」
そんな風に騒がしくしていると、担任が教室に入ってくる。
「おやおや、相変わらず元気だねぇ。みんなが元気だと、先生も張り切ってしまうよ~」
穏やかな口調の担任、海老原教諭の言葉に、クラス全員が静かになる。
「お、おはようございます、先生…」
「沢田君、おはよう。君程元気が有り余っているようなら、今日の授業も楽しく進められそうだ」
「そ、それはご勘弁を…、先生が張り切りすぎると…宿題が…エライ事に…」
恐怖におののき、平謝りする沢田。
―海老原先生、去年騒いでた生徒に範囲が3倍の宿題を出したって噂を聞いたな―
その噂が事実である事を、拓海は沢田の反応から理解した。
「では皆さん、席に着いて。今日はまず、皆さんに紹介したい人が居ます」
全員が席に着いたところで、海老原教諭が教室の入り口を開ける。
「さぁ、入って自己紹介をお願いね」
教諭の後に続いて入って来た人物を見て、クラス全体がどよめき出す。
白い肌、プラチナブロンドの髪、青く大きな瞳、堀の深い顔立ち。
背は高く、タイツに覆われた美脚がスカートから覗いていた。
「みなさん、初めまして。今日からこのクラスで一緒に勉強をさせてもらいます。ソフィア・ヴァイスブルグです。一日も早く、皆さんと打ち解けられるように頑張ります」
流暢な日本語で挨拶をし、一礼をする。
途端に、クラスは拍手と歓声に包まれる。
「はいはい、気持ちは分かるよ~。その熱量を今日の授業に向けようね~」
海老原教諭の言葉は歓声に掻き消される。
そんな中、拓海は頭を上げたソフィアと目が合う。
そこから数秒間、彼女は視線を外さなかった。
―…ああ、外国の人から見ても、僕のは異様に映るんだ―
ソフィアから目を背け、拓海は窓の向こうの空を見上げた。