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10話 ただ一つの祈り

第10話になります。

第1章はここまでとなります。

 拓海の声は枯れていた。

 それでも尚、叫び続けた。

「………っ!!!!!!」

 辺りは百合の首から流れ出た血液で、大きな血だまりができていた。

「さ、回収して帰還しましょう。予定よりも時間を食ってしまった」

「なぁ、こいつもムカつくから殺して良いか?」

「ダメです」

「嫌だ、殺したい。でなきゃお前を殺す」

「全く、この問題児を押し付けた前任者には、厳重に抗議をさせてもらいましょう」

 男の方が百合の胴体を持ち上げる。

「…!!」

 拓海は右手で百合の頭を抱え、左手で百合の手を掴み引っ張る。

―百合姉を…返せ!!―

 男の冷たい視線が、拓海の手を見る。

「…そう言えは、生け捕りとは言われましたが、五体満足とは言われてませんでしたね」

 次の瞬間、左腕の肘から先が離れる。

「…!?!?」

 激痛と共に、切断面から大量の血が流れ出る。

「おい!何横取りしてんだ?!」

「残っているでしょう、あと3本。死なない程度なら、弄って良いでしょう」

「…言ったな、ならやるぞ。やっちまうぞ!」

 その言葉と共に、今度は右手と両足に激痛が走る。

「…っ!!ぁぁ…」

 余りの痛みに、意識が跳びそうになる。

「あひゃひゃひゃ!見たか?バラバラの細切れにしたぜぇ!」

「…さ、もう良いでしょう。回収しま―」

 突如、目の前が光に包まれる。

「あびゃっ?!」

「むっ…?」

 発光が収まると、二人組との距離は離れていた。

 代わりに、目の前には一人の少女が居た。

「…申し訳ありません。こんな事態になってしまい」

 ソフィアは抱えていた百合の体を下ろす。

「…何だてめぇ?」

「…まさか、こんな所でお目にかかるとは」

 二人組から、先程までの余裕が消えていた。

―『拓海様。捧げてください』―

―…何を?―

―『祈りを』―

―…何の?―

―『救って欲しいと』―

―…誰を?―

「お待ちなさい。まさか『秘宝』を…?」

「あ?横取りか?!」

「…『永劫(エーヴィヒ・)不破(ウンツェ)なる(ブレイヒリッヒ)白亜の城壁(・ヴァイス・ブルグ)』!」

 駆け出した二人組は、突如現れた半透明の壁に行く手を阻まれる。

「あだっ?!」

「これは…!」

―『さぁ、祈って下さい!最愛の人を救って欲しいと!』―

―最愛の…人―

 拓海の目線は、百合の顔に移る。

 かつて右腕だった肉塊に囲まれながらも、その表情は穏やかなであった。

―…百合姉を、誰よりも大切な人を…助けて…下さい!―

 瞬間、左目が燃える様に熱くなる。

 同時に、百合の胴体も激しく輝きだす。

「しまった…既に条件を…?!」

「その通り。悪戯に命を奪ったのが、あなた方の最大の誤りです」

 訳も分からぬまま、拓海の体は光に呑まれていく。

 痛みは、体の感覚は消え、光に溶けあっていく。

「拓海様。必ずや…百合様をお救いしましょう」

 ソフィアの言葉を聞き届けると、拓海は完全に光と同化した。

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