07.領都
ようやく馬車が領都の門にたどり着く。
領都はぐるりと高い塀に囲まれていて、一般の街道と繋がっている門はここひとつだけらしい。というのはお父さまが説明してくれた。
兵士がふたり、門の両脇に立っていて、私たちの馬車の前で手に持っていた槍を交差させる。私たちの馬車はそれに従って停止した。
「ここはマイゼンブーク辺境伯領だ! ここにいかような用件があってまいられたのか」
兵士のひとりが大きな声で尋ねてくる。
私たちが乗っている馬車には、窓の上に家紋が付いている。だから、貴族のものだということは分かるのだろう。問いかけられた言葉は厳しいものの丁寧だった。
お父さまが窓をコンコンと叩き、続いてその窓を開ける。それを見て取って声を上げた兵士がお父さまの元へやってきた。
「私はアルフォンス・ライナー子爵だ。国王陛下の命で、今後マイゼンブーク辺境伯閣下のもとで働くことになった。同行しているのは家族と後ろの馬車に乗っているのは使用人だ」
そう言って、お父さまは兵士に書面を渡す。
受け取った兵士は、もう一人の兵士のもとへ行き、ふたりでその書面を開いて丁寧に確認した。
「確かに国王陛下のサインですね。では、ここはお通ししましょう。お手数おかけしました」
書面をもった兵士が、お父さまのいる方の窓へやってきて、頭を下げながら窓越しに書面を手渡す。
それが済むと、馬車が再びゆっくりと歩み出した。
マイゼンブークの領都は、ご領主さまの住まうお城を中心にして、それを囲むように、貴族街、平民街というような配置になっている。だから、門を入ったばかりの私たちが見ている光景はまだ平民街だ。
「あら、平民街から整った良い街じゃない」
お母さまが外の景色を見て笑顔になる。
つられて見てみると、子供が石を蹴って遊んだり、主婦たちがおしゃべりに興じたり。さらに先に進むと露店が軒を連ねて賑やかにやりとりをしている。
「ねえねえ、ボクもあのあそびやっていい?」
「ピアもぉ~」
さっきまで退屈で寝ていた双子たちは、街に入ると景色が変ったことに気付いて起き出し、子供たちが興じている遊びを真似したいとねだる。
「そうね、おうちに着いたらね」
お母さまが双子たちを交互に撫でて宥める。
「本当。みんな元気で楽しそう」
私は思わず笑顔になる。本当にこういうのはご領主さま次第で、ご領主さまがあまり領民のことを気にかけていらっしゃらないと、こういうふうにはいかないのだ。
──狼、だとか血濡れの、とか聞いてびっくりしたけど……。
「素敵なご領主さまなのかもしれない」
そして、目線はずっと先にある城へと移る。
──ここでの生活、楽しみだな。
私はそう思うのだった。
まだ始まったばかりの話をお読みくださり、ありがとうございます。
実はリアクション機能が実装されてから小説を書くの、初めてなんですよね。
なんだか、みなさんの反応の雰囲気が伝わってきて楽しいです。ありがとうございます^^
それと、もちろん、誤字報告や★くださる方も、感謝感謝です!