06.新居への道のり
あの辺境伯閣下、私とお父さま、そして家族を受け入れることは、実利に叶うとして、快諾してくれたものの……。
「うちの領都だって、吹っ飛ばされたら困る!」
とおっしゃったそうで。
まあでも、実際に私は王宮でそれをやらかしたわけだし、辺境伯閣下のお言葉はごもっともということで、うちの館を建てる場所は様々検討された。
そしてその結果、子爵という一応貴族としては真ん中くらいの立場にもかかわらず、例外中の例外として、うちの館は貴族街の端も端に建てられることになったのだ。
やっぱり厄介者なのよね、私、なんてそんなことを考えて、ちょっとうんざりしてきた私に、お母さまが声をかけてきた。
「アルマ。領都での住まいなんだけれどね、ちゃんとあなたがデザインしていたアトリエも、別宅として頼んでおいたわよ!」
それを聞いて、一気に胸が躍る。
──やったぁ! 私がデザインしたとおりってことは、調合室に保管室、そして接客スペースもある、ゆとりのあるアトリエが家に出来るはず!
そして、その立地は下級貴族層とはいえ、貴族街と平民街のちょうど際辺り。
──あれ、ってことは……。
お客さん、平民も貴族の人も相手に出来るよね?
思わぬ私の商売にとっては理想的な立地に、グッと拳を握り込んだ。
それを見て、お母さまがおっとりと不思議そうに首を傾げた。
「どうしたの? アルマ」
私は慌てて両手を振りながら首を横に振る。
まさか、中流貴族ながら下流貴族の住まう地区になったことが嬉しいだなんて、この引越しの元凶を作った私が言えるはずもない。
「う、ううん。私のせいでこんな遠い辺境にまで引っ越しをするハメになったのに、私の希望のアトリエまで作ってくれるなんて、お母さまたちの気持ちが嬉しくて」
そう言って笑顔で返すと、お母さまは私のほうへ腕を伸ばしてきて、優しく私の頭を撫でてくれた。
「自分のせいだなんて思わなくて良いのよ、アルマ。家族みんながそこにいれば、そこがどこであろうと家なんだから。いい?」
優しく諭されて、私は柔らかい心持ちになりながら、うん、と頷く。
「それに、十分な設備を備えたアトリエを構えるのは、お前の生業上、そして、受け入れてくださる辺境のみなさんのためにも必要なことなんだ。あっちへ行っても、しっかり受け入れてくれたことを感謝して働かないとダメだぞ?」
お父さまがそう私に教え諭す。
「そうですね。……あんな爆破事件を起こした私を受け入れてくださるんだもの。ちゃんと、アトリエで地域のみんなに、そして、ご領主さまに貢献出来るように頑張ります!」
そして、ようやく見えてきた街並みと、その奥に見えるご領主さまの城と思える建物を窓から眺めるのだった。