03.関係者会議
「マイゼンブーク辺境伯領、ですか……」
お父さまが、何やら思案げにブツブツと呟いている。そこはそんなにやっかいな土地なのだろうか。なにせ、私特製の爆弾が必要なくらいなのだから。
「お父さま、マイゼンなんちゃらって……」
「しっ!」
私が尋ねようとすると、険しい顔でお父さまに制止される。
「娘をマイゼンブーク辺境伯領へやる……というのは、ほぼ確定なのですよね?」
お父さまが国王陛下に尋ねた。
「そうだな。適材適所。あそこにその娘を置くのはあの地にとっても良いことだろう。それに王都を破壊されちゃ敵わん。そしてあの地は日々魔獣たちとの小競り合いが続いており、錬金術師が側に居れば大いに役立つだろう」
それを聞かされると、それはそうかとお父さまも反論はできないでいた。だが、しばしの思案の末、お父さまが顔を上げた。
「ですが娘はまだ十五です。その娘ひとりで辺境にやるというのは不憫でなりません。どうしてもアルマを辺境にやるというのなら、家族みんなでマイゼンブーク辺境伯領へ移り住むことを検討することをお許し願いたいのです……」
「えっ……」
思いもよらなかった言葉に、私は隣に居るお父さまの方に向き直る。
「なっ。お前までマイゼンブークに行くというのか!?」
国王陛下がうろたえる。なにせお父さまは師団長を務めるほどの魔導師だ。一個師団の長を失うとなれば王都としても手痛いに違いない。
「うむむ……」
悩み唸る国王陛下。
そこへ言葉を発したのは副錬金術師長さまだった。
「それも妙案かもしれません。彼の地は常に戦場であるといっても良いでしょう。そこに、ライナー子爵が赴けば、あちらは諸手を挙げて迎え入れるでしょう」
「それもそうか。確かに、十五のうら若き娘ひとりを国の外れに追放だなんてむごい事だしの。のう、ライナーよ」
国王陛下がお父さまに向かって顔を寄せる。
「よーく考え、家族とその身の振り方を考えるのじゃぞ」
そうして、私はお父さまと一緒に王都にある自宅に帰ることになったのである。
家に帰ると、お父さまが家族に事情を説明する。そして、煤だらけの私には、身を清めて着替えてくるように指摘した。そういえば私、ずうっと顔まで真っ黒けなままだった。