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天の鎖

日が昇り始め空が青白くなってきた。


ブレイクの息づかいが荒く、早く人里に着かなければとノアは焦る。


小高い丘を登り終えた時、遠くに海に面した小さな村が見えた。


「もうひと踏ん張りだな。ノア、まだ歩けそうか?」


「大丈夫、あそこまでならなんとか行けるよ。」


険しかったブレイクの表情が少し和らいだ気がした。


人も動物も通らないためか、草が生い茂り足場が悪い。2人は1歩1歩足元に注意しながら進んでいく。


小一時間で目的地の村に着いた。


村人達は初めは3人を警戒していたが、村長と呼ばれる機械が入村を許し、少しづつ警戒を解いていった。


負傷していた騎士は村の技術者の手当を受け意識を取り戻した。


「ノア、今日は身体を休めて明日村を発つことにしよう。」


「わかった。」


2人は村長が用意してくれた部屋に行き休息を取った。




翌日の朝、2人は日本に向け出発することにし、海へ向かった。


「これで日本まで行くぞ。」


ブレイクはオールの入った木製の舟を指さした。


「漕いで行くの……?」


ノアは恐る恐る聞いてみた。


「いや、俺の神器を使って行く。説明すんの難しいんだけど、日本列島と舟を磁石みたいに引っ張らせることで舟を日本に向かって進める、みたいな感じだな。」


ノアは説明を聞いてもよく解らなかったがとりあえず舟に乗り込んだ。


ブレイクが腕を伸ばすと舟は勢いよくその方向へ進みだした。


「海の上なら堕鎮もいないしあとは着くまでのんびりしよう。ノア、身体の調子はどうだ?」


「1日休んだらだいぶ楽になった。ブレイクこそ大丈夫なの?ひどい傷だったけど。」


「ああ、昨日1日かけて完治させたから大丈夫だ。一時はまじで死ぬかと思ったけど、死ねないってことを思い出して生き延びた。」


「俺も、死ぬって思ったけど、なんとか生き延びられた。意外と悪運強いかも。」


しばらく進み続け出発した陸地が小さくなった。そろそろ目的地も見えてくるだろうという所まで来たとき、急に海が荒れ始めた。


「ノア!どっかに掴まれ!絶対に離れるなよっ!」


空が曇りだし激しい風が吹き荒れる。ノアは何か嫌な気を感じ後方を振り返る。すると海の上に山ほどもあろうかという巨大な黒い影が現れた。


ノアは判断を仰ごうとブレイクに顔を向ける。ブレイクは顔を引きつらせ黒影を注視している。


「蛇、か。あの堕鎮の大群もお前の仕業だな。1人1人潰していくのにまずは1番弱い俺からってわけ?」


「そうだな。俺の目的はイヴを殺すことだ。だが、まずはそれの邪魔になりそうな神器の所有者どもを殺す。居場所が分かっているのはお前と盾と槍だけだ。槍を殺すのはさすがの俺でも骨が折れる。盾は攻撃を全て弾かれてしまう。盾に護られていたお前が外に出てきてくれて助かったよ。お前を殺し天の鎖を奪う。それがあれば、槍はおろか他の神器所有者を消すのも容易いことだ。」


蛇は喋り終わると同時に無数の光線を放った。それをブレイクが神器で弾く。弾いても弾いても途切れず光線が2人を襲う。


荒れる海の真ん中でどこにも逃げることができずブレイクは光線を凌ぐので精一杯だ。ただ見ていることしかできないノアは、海に落ちないように舟にしがみつき、光線が当たらないよう周囲を警戒している。


その時、下から何かが上がってくる気配がした。


「ノア!避けろっ!!」


直後、2人の乗っている舟を光線が貫きノアとブレイクは海に投げ出された。


「ノア!!!無事か!!!どこだ!!!」


「ここにいる!大丈夫!」


荒れる波に流され2人の距離がどんどん離れていく。


身動きの取れない2人の上に光線が降り注ぐ。このままでは2人とも死んでしまう。どうすべきかブレイクは頭をフル回転させて考えた。


「ノア!お前だけ安全圏まで飛ばす!俺がこいつの足止めするからその間にどうにか逃げ延びてくれ!」


そう言った次の瞬間、ノアの脚に鎖が巻き付き身体を持ち上げられた。


「ーーー!!」


待ってと言葉にする前にノアは遙か遠くに投げ飛ばされた。


「余計な真似を。あいつの死が先延ばしになっただけだぞ。ここで2人仲良く消されていればいいものを。まぁいい、どうせ殺すことに変わりはない。お前を先に殺すぞ、鎖。」


「殺されてたまるかよ。そしてあいつも殺させない。こんだけ強い殺気を撒き散らせばあいつも気づいただろう。必ずノアを保護してくれるさ。」


「ふん。それはおそらく天の馬の所有者のことだろ。そうすればそいつの居場所も割れて都合がいい。」


「あいつはそう簡単に殺されねぇよ。俺に負けるようじゃ他の神器持ちも殺すなんざ絶対にできない。」


「俺がお前に負けるわけがないだろう。海に落ちてまともに身動きもできない、神器の真価も発揮できない、それでどうやって俺に勝つ?」


ブレイクは光線を弾いていた鎖を引っ込め、水面から一瞬顔を出し大きく息を吸った。


防御をやめたブレイクの腕や脚を光線が掠める。


「つまり、神器の力を全て引き出せば、お前に勝てるってことだろ?」


ブレイクにそんなことはできないと踏み、蛇は薄ら笑いを浮かべる。


「神器、全開放!」


次の瞬間、ブレイクの周囲が黄金に輝き、7匹の金の龍が現れ蛇に巻きついた。


「ーーー!?」


龍のせいで蛇は身動きが取れず、光線も放てない。


龍の黄金の光が水面に反射し海が金色に輝いている。


龍の輝きは増し、蛇の足元からもう1匹の龍が現れ蛇を包み込み大爆発が起きた。


蛇は跡形もなく消し飛び、波は落ち着き、雲は消え始めた。


空には綺麗な虹が架かっている。

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