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あの日はもう……

戦闘音が聞こえなくなった。ブレイクとガブリエルは無事なのか、確かめる術を持たないノアは無事を祈り走り続けるしかない。


背負った騎士は未だに意識を取り戻さない。早く人里に出なければこの騎士も自分も長くは持たないだろう。


しかし、こんな所に人里があるのだろうか。一瞬不安がよぎるがノアはどこかに人里があると信じ、絡まりそうになる脚を必死に動かす。


足元が暗く見えにくくなり、日が沈み出していることに気がついた。


ひとまず身体を休ませようと場所を探す。


しばらく歩き、草が生い茂り身を隠せそうな場所を見つけた。ノアは草をかき分け進み茂みの奥に腰を下ろした。


息をついた瞬間、心臓が苦しくなり呼吸がしずらくなった。そして意識が遠くなり目の前が白くなり始めた。


ノアは目を閉じ、呼吸を安定させることに集中する。


耳鳴りがうるさい。声が出せない。息ができなくて心臓が痛い。徐々に白くなっていく視界が怖い。


そしてノアは意識を失った。

ーー


(ここはどこだ。)


ノアは真っ白な空間で目を覚ました。


徐々に白い空間に色がつき始め、自分がどこにいるのか分かり始めた。


白い空間が完全に消え、初めに見えたのは怪我をした自分が気を失い倒れている光景だった。


(俺は、死んだのか?)


驚きはあったが悲しみはなかった。こんなものかと飲み込めた。


(旅の目的を果たせず死ぬのか。まぁ、死んだらそんなことはどうでもいいことになるのか。トーマス、怒るだろうなぁ。)


しばらくして、自分の横に知らない人間の青年が立っていることに気づいた。


(君は、誰?)


青年はゆっくりとノアの方を向くと、何かを喋り始めた。だが、ノアには何も聞こえず何を言っているのか分からなかった。


もう少し近くに寄ろうとしたが身体が動かない。


青年が喋り終えると、意識が遠くなり始め目の前が真っ暗になった。

ーー


「はっっ!」


ノアが勢いよく目を開けると元の茂みに戻っていた。どうやらまだ死んではいないらしい。


「また、あの夢なのか…?」


混乱し辺りを見回してみる。あの青年の姿はない。やはり夢だったのだろうか。


その時、ノアはある違和感を感じた。違和感のする所を見てみると、右腕が元に戻っていた。


「えっ!?」


ノアは驚きのあまり思わず大声をあげてしまった。堕鎮だてんに気づかれていないだろうか、辺りを注視する。どうやら大丈夫なようだ。


ノアは右腕に視線を戻す。


ありえない。腕1本を元に戻すとなると、腕のパーツとそれを接着させる技術を持つ者がいなければならない。自然に戻るものではない。


暗くよく見えずすぐには気づかなかったが、腕だけではなく、身体中の傷が完治していた。


「あの人間と何か関係があるのか…?」


「そういえば、あの人間の顔、どこかで見たことがあるような気がする。どこだったか…。」


いくら思い出そうとしてもいつどこで見たか思い出せなかった。


「デジャブってやつか。まぁ、意識飛んでたし、気のせいかもな。」


ノアは騎士の様子を見てみた。まだ息をしていて安心した。だが脚は元に戻っていなかった。


「急がないと。」


ノアは騎士を背負い、十分に警戒をしながら歩き始めた。


木々が密集していて月明かりが全く入ってこず、辺りがほとんど見えない。今目の前に堕鎮がいたとしてもぶつかるまで気づけないかもしれない。


だがそれは相手も同じこと。万が一ぶつかったとしても、すぐさま隠れれば凌げる、と信じたい。


恐怖で震える脚と暗闇しか見えない眼に力を込め歩き続ける。


カサカサカサカサ


風の音ではない。何かが茂みを進んでくる音が聞こえる。


ノアはその場にしゃがみこみ、やり過ごせることを祈る。


何かは茂みから出たらしい。そして足音がこちらへ真っ直ぐに向かってくる。もしかして堕鎮は暗闇でも目が見えるのか。


恐怖と絶望がノアに襲いかかってくる。


足音がノアの目の前で止まった。


終わった。ノアは今度こそ死を覚悟した。


「ノア生きてたんだな。良かった。死に物狂いで頑張った甲斐があった。」


その声を聞きノアは安心した。


「ブレイク!良かった、ブレイクも生きてたんだね!」


「まぁな、もうけっこうボロボロだけどな。さっきまで心臓止まってたんだぜ、さすがに死ぬかと思った。」


「そうだったのか。ありがとう!お陰で助かったよ。……ガブリエルがどうなったかは、分かる…?」


「………けっこうな数の堕鎮に囲まれてたみたいだな。堕鎮の反応が完全に消えた直後にガブリエルの反応も消えた。」


「……………そう、か……。」


「少し休むか。」


「ううん。この人の脚を早く治さないと。急ごう。人里のありそうな方向ってわかる?」


「あぁ、ここから北東の方に、少数ではあるが機械の反応がある。行けるか?」


「うん。大丈夫。」


「そうか。無理はするなよ。生きてこそだからな。」


悲しんでいる暇はない。ガブリエルが作ってくれた時間を無駄にしないためにも、今は進むしかない。


3人は北東の目的地に向け歩き出す。


ブレイクの感知能力のお陰で暗闇でも安心して進める。ここら辺の堕鎮は全て倒したらしく、人里までは安全に進めるだろうとのことだ。


ノアの頭には、倒木にもたれかかり、気持ち良さそうに昼寝をするガブリエルの姿が浮かんでいた。

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