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また笑顔を見たくて

「逃げ延びてくれ。こっちはなんとかしてみる。だから、絶対にたどり着いてくれ。」


堕鎮だてんの集合体からの禍々しい圧は重く気持ち悪く、殺気は鋭く突き刺さり肌がヒリヒリする。


ブレイクは鎖を放つが全て弾かれた。間髪入れず猛攻を続けるがかすらせることもできない。


集合体からの攻撃がくる。無数の触手のようなものを伸ばし襲いかかってくる。ブレイクはそれを捌くので精一杯で反撃に出る隙がない。反撃したとしても全て弾かれるだろうと分かっているため、ただただ逃げ回ることしかできない。


「なんとか倒せる糸口を見つけないと。せめてあいつらが逃げ切るまで耐えないと。死ぬ気は毛頭ないけど、まぁ、その時は仕方ないしな!時間稼ぎしきって死ねば、問題はない!」


ブレイクはなんとか紙一重で攻撃を避けているがいくつかはかすってしまい、身体のあちこちから出血し服の下から血が滲んでいる。


「くそっ、少し無理をしてでもやるしかないか。」


ブレイクは神器の出力を上げた。集合体の猛攻を弾き返せるようになり、交わしやすくなった。


「これで死角に入れる!」


地面を思い切り踏みしめ触手の間を縫い、集合体の足元にたどり着いた。


「はあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああぁぁぁぁぁぁあああ!!!!!!!!」


神器の出力をさらに上げ、今出せる最大火力を放った。それと同時に集合体の足元にエネルギーが集まり始め、一気に放たれた。


ドオォォォォォォォォン!!!!!!!


ブレイクの放った攻撃と集合体の放った攻撃がぶつかり、大爆発が起きた。


辺りの木々や地面が吹き飛び、森林は一瞬で更地になった。


ブレイクはかなり吹き飛ばされた。額の右側から血を流し、左腕は折れ、脚には力が入らない。完全に満身創痍だ。


土煙で集合体の確認はできないが倒せたと思いたい。


「フッ、フラグは立てたくないが、倒れててもらわないとさすがに困るな。」


ぼんやりとした視界が徐々にはっきりとしてきて、土煙も消えてきた。


「はっ、はっはは。無理ゲー。」


ブレイクは遠くに見える巨大な影を見つけ、思わず笑ってしまった。無数の触手が蠢く様子が見える。


「あぁ、ここまでか。」


ブレイクはこれまでの人生を思い返した。


初めに浮かんだのは高校での記憶だ。ブレイクは授業をサボりがちな生徒だった。つまらない授業がある時は体育館の2階ギャラリーにある卓球台を使って壁打ちをしていた。


そんなある日、いつものように体育館に行くと知らない女子生徒が隅の方に座ってスマホをいじっていた。


初めはお互い干渉することもなく全く気にも留めていなかった。


しかし、夏が近くなり暑くなってきた頃、話す機会が訪れた。ギャラリーは窓が多く日光が入りやすいため、自ずと涼しい日陰に足が向く。その涼しい日陰の場所がこの体育館には1箇所しかなく、2人は並んでそこに座り何も話すこともなくスマホをいじっていた。


「ねぇ、あんた、隣のクラスのビートバークでしょ?成績いいって聞いたけど、そんな奴がなんでこんな所でサボってんの?」


女子生徒が急に話しかけてきた。ブレイクは少し驚いたが何ということもなく返答した。


「つまらないから。それだけ。勉強は家でもできるし。興味のある授業には出てるよ。」


「成績いい奴が言うと嫌味に聞こえるな。ほとんどずっとここにいる気がするんだけど、興味のある授業ってなに?」


「ホームルーム」


「それ授業じゃねぇじゃん!うける。あ、私はハナ。ハナ・クワーニョー、よろしく!」


ブレイクはなぜかハナに興味を持った。それからブレイクはよくハナと話すようになった。


ハナは最初はきちんと授業を受けていたらしいが友達が1人もできず、徐々に教室に足が向かなくなったという。好きな食べ物はクレープだそう。


「え!?クレープ食べたことないの!?」


ハナがうるさいほどに驚いた。


「そんなに驚くほどのことか?あんまり食には興味なくてな。」


「じゃあ今から食べに行こうよ!どうせ今日の授業全部サボるんでしょ?」


ということで2人は屋台が並ぶ通りに行くことにした。


「はい!これ私のおすすめ!」


「ん、美味しい。」


「あ!やっと笑った!初めて笑ったね、美味しそうで教えた甲斐があったよ!」


「あぁ、美味しい。またなんか美味しいのあったら教えくれ。」


「もちろん!」


バタッバタバタバタバタッ


次の瞬間、ハナを含め周りの人達が急に倒れ始めた。


「は、ハナ!大丈夫か!?どうしたんだ!」


「わかんない、なんか、身体に力が入んなくて、眠い。」


周りを見回してみても身体を動かせる人はブレイク以外に1人もいなかった。何が起きているのか分からないが、とりあえず救急車を呼ぼうと電話をしてみたが出なかった。


「うっ、うっ。」


ブレイクがどうすればいいか考えている間にハナの身体が消え始めた。


「ハナ!!!!!!」


「ブレイク…生きて、何があっても。そうすれば、またいつか会えるよ。」


「誰かぁぁぁ!!助けてくれ!!なんで…なんで…。何が起こってんだよっっっ!!」


「もうそろそろ限界みたい。またね、ブレイク。生きろよ!」


「ハナァァァァァァァァァァァァ!!!!!」


そして、ハナは消えた。


周りの人達も気がつくと誰もいなくなっていた。


ブレイクは跪きながら、ハナの最後の笑顔を繰り返し思い返していた。

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