研究/開発
約2年後、ワイアットはサマンサを殺した者を捕まえるため、両親の研究所で身体強化の研究をしていた。
「ワイアット、調子はどうだ?」
「父さん、全然だよ。並の人間の身体能力を超人的なまでに上げるには問題がありすぎる。」
「じゃあやはり、当初考えていた通り戦闘用機器の方がいいんじゃないか?」
「そっちも並行して研究を進めているけど、あの時見た怪物のような力は出せない。」
「そろそろ結果を出さなければ予算を回されなくなるぞ。」
「分かってるっ!分かってるけど…。」
「無理はするなよ。」
あの日からずっと、ワイアットはサマンサが殺された光景を忘れられず、いつまでも怒りと悲しみが消えずにいた。
「ワイアットさん、お疲れ様です。お先に失礼します。」
「はい、お疲れ様でした。明日もよろしくお願いします。」
ワイアットはその後も1人研究所に残り、作業を続けた。
「ふぅ、疲れたぁ。うわ、もうこんな時間か!帰ろう。」
ふと時計を見ると0時を回っていた。ワイアットは急いで帰り支度をして研究所を出た。
家に帰る途中、どこかで息抜きをしたくなり、近くの公園に寄り飲み物を買ってベンチに座った。
「はぁぁ、寒いな。そろそろ雪が降りそうだな。一緒に、見たかったな。」
ぼーっと遠くを見つめていると、左側から近づいてくる足音が聞こえた。
「初めまして。ワイアット・セイヴァーさん、で合ってる?」
深夜にいきなり声をかけられ、なぜ自分の名前を知っているのか疑問に思い、非常に警戒した。
「あぁ、ごめんなさい。警戒するよね。私はイヴって言います。単刀直入に言うと、あなたにある物を造ってもらいたいの。」
「あるもの…。」
「あなた、2年くらい前に不思議な体験をしなかった?常識じゃ考えられないようなこと。」
サマンサを殺した犯人の姿がワイアットの脳裏に浮かんだ。
「はい。それが何か?」
「その時に人間とは思えないような人影を見たと思うんだけど、それを封じるための物を造ってもらいたいの。」
「それは、俺も造りたいですけど、そんな知識も技術も俺にはないです。」
「私も手伝うから。造るための知識ならある程度はあるから、足りないところをあなたの力で埋めてほしい。」
ワイアットはしばらく考え込んだ。信じても良いのか、話が本当だったとして自分にできるのか、色々な考えが頭を過ぎる。
「ここ2年くらい、世界中で起きている謎の失踪事件、それもあの影の仕業なんですか?」
「うん、そうだよ。」
「分かりました。じゃあ明日からよろしくお願いします。」
「ありがとう!助かるよ。私もあいつを追っててさ、よろしくね!」
2人は朝にこの公園で待ち合わせをする約束をして別れた。
次の日の朝、約束通り2人は公園に集まった。
「おはようございます。特例でイヴさんが研究所に入れるようにしてもらったので、今から案内します。」
「ありがとう!じゃあよろしくね!」
そして2人は研究所へ向かった。
「わぁぁ、すごいね、色々揃ってるじゃん!これなら造れそうだね!」
「本当ですか?良かったです。それじゃあ始めましょうか。」
それから2人は毎日毎日、朝から晩まで研究に熱中し、研究所に泊まり徹夜する日もよくあった。
ワイアットはイヴの知識を元に試行錯誤を繰り返しながら、徐々にそれの完成に近づいていった。
イヴと研究を始めてから11年後、ワイアットが28歳になる年にそれは完成した。
「やっと完成したね、ワイアット!!」
「はい!イヴさんの貴重な情報のお陰でなんとか造れました。ありがとうございます!」
「こっちこそありがとうね!それで名前だけど、『機械』っていう名前がいいと思うんだけど、どう?」
「機械、日本語ですか?」
「うん、そう。気に入らない?」
「いえ。俺はあいつを捕まえられればそれでいいので、名前はイヴさんに任せます。」
「そう?じゃあ決まりね!あとは、どうやって機械に封じるかってことだね。」
「そうですねぇ。封じる物があっても封じる手段が無ければ意味無いですね。」
「うん。まぁ、手段が全くない訳じゃないんだけど、ある物を見つけないといけなくて…。」
「ある物ってなんですか?どこにあるんですか?」
「それが、どこにあるかが全く分からなくて。そもそも現代に残っているのかが怪しくて。今までずっと手がかりを探していたんだけど、情報が少なすぎて…。」
「でも、今のところ、それ以外に方法が無いんですよね?」
「うん…。」
「じゃあ俺、探します。また何年かかっても、必ず見つけ出しますっ。」
イヴは申し訳なさそうな眼差しをワイアットに向けた。
「分かった。私も引き続き情報を集めてみる。よろしくね。」
「それで、どんな物なんですか?」
「それは天の指輪っていう物で、所有者の願いを叶える力があるらしいの。その力を使えば、封じることができるかもしれない。」
それから1週間後、ワイアットとイヴは天の指輪を探すための旅に出た。
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