出発
「にほんれっとーっていうのは近いんですか?」
「海を渡らなきゃいけない。」
ノアは海というものを見たことは無いが、知識として非常に広い水溜まりで、歩くことができないということは知っていた。
「どうやってそこまで行けばいいんでしょうか。私は泳ぎ方を知らないのですが。そもそも国の外には堕鎮が沢山いるじゃないですか。あそこをどうやって進めば…。」
「ヘリで行くよ。大丈夫、カ〇コン製じゃないから落ちないよ。操縦士の腕はいいから安心して!」
ヘリという物がどんな物かは知らないが、国王がそこまで言うのならとノアは安心した。
「じゃあ、準備を整えて明日の朝に城に来てくれるかな。」
ノアは家に帰りトーマスに国の外に行くことになったと告げた。
「はぁ!?外!?堕鎮がうじゃうじゃしてるあの外に行くって!?正気か!?」
トーマスは驚きを隠せず身を乗り出した。
「本気で行くのか?」
「うん。行かないと治まらないと思うし、行かない方が良くないことになりそうな気がする。」
「そうか…。まぁ、お前が決めたんなら止めれねぇな。でもいいか、絶対に生きて帰ってこい。それまでに料理の腕上げて美味いもん用意して待ってるからよ!」
2人は握手をし、トーマスは帰っていった。
翌日、ノアが城に行くとハイドともう1人人間がいた。
「おはようノア。こっちにいるのがブレイク。僕の友人だよ。君の護衛に付けるから仲良くしてやってほしい。」
ブレイクという人間は高校生くらいで小柄な体格をしている。フードを被っていて隙間から薄い水色の髪が覗いている。
「初めまして、ブレイク・ビートバークです。よろしく。」
「あ、ノアです。よろしくお願いします。」
ノアはヘリコプターの所まで案内された。ヘリを初めて見て、こんなのが本当に飛ぶのかと疑った。
ヘリをじっと見ていると後ろから複数の足音が聞こえてきた。振り返ると3人の騎士が歩いてきていた。そこにはガブリエルもいた。ハイドから3人の紹介があった。
「ノアの護衛をしてもらう3人だよ。ガブリエルが友達って聞いたから一緒に行ってもらうことにしたよ。ガブリエルはこの国で3番目に強いからね、戦闘面的にも問題ないと思うし、頼んだよ。」
そうこうしているうちに出発の時間になった。
「じゃあ、幸運を祈ってるよ。」
そう言うハイドの目を見てノアは頷いた。
5人はヘリに乗り、ヘリが浮き始めた。ノアは本当にヘリが浮いていることに感動して言葉も出なかった。
飛び始めて城壁を超える。下には堕鎮がうじゃうじゃと群がっている。この高さなら大丈夫だとノアは一安心した。
「このヘリ、は、何を燃料にしているんですか?」
しばらく飛び続け、疑問に思ったノアが質問した。それにブレイクが答える。
「操縦席に座ってる機械の無尽蔵のエネルギーをヘリに回してるんだ。だから長時間飛行し続けられる。」
「そうなんですね。こんなのが造られてるなんて全然知らなかったです。」
「まぁ、極秘だったし、まだ試験段階だしで情報は全く出てなかったからね。今回のことで知られちゃったけど。」
ブレイクは落ち着いて静かに喋る人だ。表情もあまり動かない。
ノアは何か話題を出そうと思ったが他に何も浮かばず静かにしているしかなかった。
1時間ほど沈黙が続いた。耐えきれなくなったノアは何でもいいからブレイクに質問してみようと思った。
「ブレイクさん、人間がまだ普通にいた頃の話聞いてもいいですか?」
「さん付けなくていいよ。敬語もいいよ、めんどくさいから。」
ブレイクはそう言い、話を続けた。
「そうだなぁ、何を話せばいいんだろ。数は機械より圧倒的に多かったよ。あ、でも、自然環境は今の方がいいかな。あとは、物がいっぱいあったね、今はない物がいっぱいあった。」
ブレイクは懐かしそうに話し続けた。
ノアや他の機械もブレイクの話を聞いた。
「あいすくりーむってやつ、食べてみたいな!冷たくて甘くて柔らかいって、想像できねぇ!」
操縦席の騎士が言った。
みんなブレイクの話に興味津々だった。固かった空気も少し和んだ。
その時、ヘリに何かが当たり、ヘリはバランスを崩し燃えながら落下していく。
「何かに捕まれ!!!」
ガブリエルが叫んだ。
ヘリは制御を失い森林に墜落した。
しばらくしてノアは目を覚ました。後ろの方ではヘリが燃えている。
「目を覚ましたか。」
ヘリの方からガブリエルとブレイクが歩いてきた。ガブリエルは騎士を1人背負っている。
「生きてるのは4人だ。何かが操縦席にぶつかったみたいでな、操縦席の騎士は即死だった。」
ガブリエルが悔しそうに言った。
「ごめん、反応に気づくのが遅れた。早く気づけていれば全員生きてたかもしれない。生き残った4人を安全にヘリの外に出すことはできたけど、海を渡る前にヘリが大破してしまった。」
あんなに表情が変わらなかったブレイクでもさすがに今回は険しい顔つきだ。
ブレイクが続けて言う。
「連絡手段もないし、徒歩で行くのも帰るのも自殺行為だ。とりあえず、姿を隠せる場所に行こう。さっきのは偶然じゃない、何かを飛ばされた。ヘリが落下したのを見たはず。だとするともう近くにいるかもしれない。急いでここを離れよう。」
4人は移動を始めた。特に変わったことはなく、堕鎮の気配も無いように思われる。
20分くらい歩くと洞穴を見つけた。ひとまずここに身を隠す。
負傷した騎士は両脚を折ってしまったらしく、今の状況では修復は不可能だ。
ここで身を隠しながら今後の方針を話し合い、1晩ここで過ごすことになった。
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