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異変

なかなか眠れないノアは街を歩いて気を紛らわそうとした。


この国の夜は自国とは違い、街中が明るく人も普通に歩いている。


「この国は眠らないんだな。まだ開いてる店もある。眠くないのかな。」


ノアは行く先を決めず、ただ道なりに進んでいく。道はどこまでも明るいため歩くのに困らなかった。


(つまらないな…。)


見慣れない街を歩き回るのにも飽きふと目線を上げると、建物と建物の間に薄暗く細い道を見つけた。ノアはなんとなくその方向が気になり進んでいった。


等間隔に街灯が並び、たまにベンチが設置されてある。どこかのベンチに腰掛けようと思い歩いていると、数メートル離れたベンチに黒いローブを羽織り、フードで顔を覆った人が座っていた。


「あの、どうかされたんですか?」


その人物から異様な気配を感じ、ノアは気がついたら声をかけていた。


「いや、少し歩き疲れただけだよ。心配してくれてありがとうね。」


機械には珍しい嗄れた声だ。


「あなた、人間ですね。」


「ああ、そうだよ。君は人間を見慣れているのかい?」


そう言いフードを脱ぐと、白髪で髭を生やした老人が顔を覗かせた。


「一般の機械では全身を覆い隠した人間と機械を区別できない。」


「何人かの人間と会ったことがあります。あなたも、イヴさんやブレイクたちのような生き残りなんですか。」


「確かに私も人間だが、その人たちとは生き残っている理由が違う。私はただ死なないだけ。彼らは世界を繋ぐために延命された。」


「死なない。いいですね。俺、もうすぐ死ぬらしいです。機械なのに、俺だけ死ぬみたいです。」


「永遠はない。始まりがあれば、いつかは終わる。大切なのは何を残し、次に何を繋ぐか。そして、自分自身がそれに満足すること。いつかは終わるのなら、今この一瞬足りとも無駄にできない。嫌なことを無理してする必要は無い。結局、楽しんだもん勝ちだよ。人に迷惑をかけない程度でやりたいことを思いっきりやりなさい。それが財産になる。」


「やりたいことなんて、ないですよ。」


「なら、それが見つかるまで色んなことをしてみればいい。駄目だったらやめてもいいんだよ。君の命の時間は、無駄にできないんだから。」


「ありがとうございます。そろそろ行きますね。」


ノアがベンチから立ち上がり来た道を戻ろうとした瞬間、立っているのが困難なほど大きく地面が揺れ始めた。


「なんだっ!?おじいさっ……」


ノアが振り返ると先程までベンチに座っていた老人は消えていた。


数十秒で地響きは止み、静かになった。


状況を把握するため、ノアは走って大通りに向かった。大通りに近づくとたくさんの悲鳴が聞こえてきた。


(何が起きてるんだ!また蛇が出たのか?)


ノアが大通りに着き周囲を見回してみると、機械たちが一斉に堕鎮に変化していっていた。


「何が…起きているんだ…。」


堕鎮になった機械たちはまだ堕鎮になりきっていない機械たちを襲い始めた。ノアは斬ることができず、堕鎮を蹴り飛ばし押さえつける。


「早く逃げて下さい!」


堕鎮に襲われていた機械に叫ぶが、その時には既に全身が黒く染まり、しばらくして堕鎮に変化しノアに襲いかかってきた。


「ーーーっっ!!」


周辺にはもう機械はいなくなっており、ノアは諦め城へ向かった。


「ノア君、急いで!閉めるよ!」


城門の前にはイヴと風花が立っていた。


ノアが城門を通り過ぎるとすぐさま扉が閉まった。


「ノア大丈夫!?怪我とかしてない!?」


「大丈夫。ありがとう風花。」


3人は城の広間へ行きアンマと合流した。


「堕鎮に変化した城の機械たちは全員拘束しました。イヴ様、他の地域ではどうなっているのでしょうか。」


「今確認してみるね。」


イヴは天の鏡をテーブルに置きしばらく眺めた。


「世界中で同じことが起きてる。ハイドの国と鬼一さんの村は結界のお陰で機械たちの堕鎮化は起きていないみたい。」


「イヴさん、何が起きているんですか!?また蛇の仕業なんですか!?」


「ノア君、落ち着いて。君はなぜか堕鎮化していない。きっと何か理由があるんだろう。だから、君には話そうと思う。なぜ人類が滅び、機械や堕鎮が生まれたのか。私が知っていることを今から伝えます。」


そして、イヴは過去に起きたことを話し始めた。

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