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原因

ノアとイヴはしばらく歩き大通りに出た。すると突然イヴが立ち止まった。


「どうしたんですか?」


「ノア君も並んで。」


イヴの前にも何人かが1列に並んでいた。なぜ皆こんな道端に並んでいるのかノアは見当もつかなかったが、とりあえず言われた通りに並んだ。


「何かあるんですか?他の人たちも並んでますけど。」


「あ〜そうか。ごめんね、説明不足だったね。ここからバスっていう乗り物に乗ってお城の近くまで行くの。」


「ばす…。ヘリとは違うんですか?」


「うん、違うよ。空飛ばないし。待っててみて、すぐ来ると思うから。」


待っている間、ノアは物珍しそうに辺りを見回した。


「イヴさん。さっきからずっと道を行ったり来たりしているあの箱はなんですか?武器かなんかですか?」


「あれは個人が所有する車っていう乗り物だよ。国内なら自分で好きな場所に行けるんだよ。今から来るバスも車だけど、所有しているのは国なんだ。国民がお金を払って決められた場所まで乗せてもらえるの。」


「俺のいた国では想像もできない…。」


「人口が桁違いだからね。こういう物がないと国内を移動できないんだよ。」


「ヘリにも乗れるんですか?」


「いや、一般人は乗れないはずだよ。哨戒任務とか掃討作戦とかの時に騎士が乗るくらいじゃないかな。」


2人が話していると、目の前に四角い大きな乗り物が止まった。


(これが、ばす!)


「私が2人分払うからそのまま着いてきて。」


ノアはイヴに着いていき、イヴに促され窓際の席に座った。


バスが動き出し徐々に速度を上げていく。


(速い!こんなに速く動けるなんて!)


30分ほど走ると、徐々に大きな城が近づき手前で止まった。


「降りるよノア君。」


2人はバスから降り、城へ向かった。


城門に着くと4人の門番が出迎えた。


「イヴ様、ようこそいらっしゃいました。陛下がお待ちです。」


「おじゃましま〜す!」


2人が広間に案内されると、先程犯人を連行した人間が椅子に座っていた。


「イヴ様、お待ちしておりました。そちらの方はどなたです?」


「ほんとに、久しぶりだねアンマ。この子はノア君。今日ここに来た理由はこの子なの。」


「あいさつが遅くなった。僕はアンマ・ユルグ。よろしく、ノア。」


「ノアです。よろしくお願いします。」


2人は座るよう促され椅子に座った。


「それで、今日来た理由がノアというのは?」


イヴは事の経緯をアンマに話した。


「それでアンマのとこにある設備を使わせてほしいの。ノア君の身体を隅々まで調べたいんだ。」


「そういうことですか。いいですよ。僕は行く所があるので、そこのリヤに案内させます。」


「ありがとう!よろしくね、リヤちゃん!」


「はい、よろしくお願いいたします。」


その後、2人は城の地下にある研究施設に案内された。そこにはたくさんの機材があり様々な研究が行われていた。


1番奥の部屋に案内されると、人1人が入れるくらいの水槽といくつかの機器が置いてあった。


「じゃあノア君、その水槽に入って。」


ノアが水槽に入るとイヴが機器を操作し、起動音が鳴った。


「そのまま動かないでねぇ。」


検査は10分程で終わった。


ノアは水槽から出るとリヤにタオルを渡され、それで全身を拭いた。


「イヴさん、これ動かせるんですね。すごいです。」


「まぁ、これ造るの少し手伝ったからね。他のは使い方知らないけど。あっ、解析結果出たよ。」


結果を読み進めるイヴの表情が次第に曇っていく。


「ノア君、落ち着いて聞いてほしい。」


そして、イヴはノアに身体の異常の原因を話した。


「私や鬼一さんが考えていた通り、君の魂が削られてきている。だから、君は近いうちに死ぬと思う。」


「間違いないんですか…。」


「うん。もうかなり進行してるみたい。仮にここまで進んでなかったとしても、防ぐ手段が無いから時間の問題だったんだよ。」


ノアは突然の余命宣告を受け、頭が真っ白になり何をすればいいのか分からなかった。


ノアは意識が遠いまま城の一室に案内された。どうやら1晩ここに泊まるようだ。


部屋の中央の椅子に座りテーブルを見つめたまま、ノアはずっと動かなかった。窓の外からは人々の話し声や車の走行音などが遠く聞こえる。





どれほど時間が経っただろうか。外が静かになり遅い時間なのだろうと分かった。


「風に当たろう。」


ノアはベランダに出て夜の街を眺めた。


「少し寒いな。まぁいいか。」


その時ノックが聞こえ、ノアが部屋の扉を開けるとアンマが立っていた。


「遅くにすまない。イヴ様から話を聞いてきたんだ。少し話さないか?」


そして2人はベランダに行きしばらく沈黙が続いた。先に口を開いたのはノアだった。


「どうして俺だけなんでしょうか。機械は無尽蔵のエネルギーで動いているから寿命が無い。なのになんで俺だけが寿命で死なないといけないんでしょうか。何か悪いことをしたんでしょうか。」


しばらく間を置き、アンマは話し始めた。


「この国では今までに1000人近くの機械が罪を犯し捕まっている。そのほとんどが道交法違反だ。」


「なんですか、それ?」


「車は見ただろ?あれが人や物に衝突したら大変だろう?そうならないためのルールが道交法だ。」


「捕まった人たちはどうなったんですか?」


「ある1つの施設に集め、1日に1度、無理の無い程度の決まった量のエネルギーを吸い取って街の電気などに還元している。そしてそこからは一生出れない。」


「それは、少しひどくないですか?一生だなんて…。」


「死刑や国外追放じゃないだけいいと思うんだが。多くの法は人を守るためにある。少なくともこの国ではそうだ。それを守らないということは法に守られたくないということだ。殺されても文句は言えないだろう。簡単な法も守れないやつを放っておくことはできない。」


「偏った考えですね。」


「実際それでこの国の秩序は保たれてる。まぁ、そんなことはどうでもいい。俺が見た感じ、お前はそんなやつらとは違う。お前はいいやつだ。残された時間で何をしたいか、何ができるか考えろ。お前が正しいと思うことをしろ。」


「したいこと…。」


「思ったより元気そうで良かったよ。じゃあな。」


アンマが部屋を出ていき、ノアは1人で夜空を見上げ続けた。


「夜空を見ても、眠れそうにないな。」


ノアの夜はまだ続く。

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