異空間
早朝、ノアは鬼一の屋敷を訪れた。
「おはようノア。昨日はおつかれだったね。きちんと休めたかい?」
「はい、疲れていたのかぐっすりでした。」
「それは良かった。今から、いつ終わるかは君次第の訓練をしてもらうからね。」
「……それは、どういう…。」
「まぁ、行ってみれば分かるさ。」
次の瞬間、ノアの目の前は真っ白になった。次第に視界が戻ってくると屋敷とは別の場所にいることに気がついた。
全体的に白っぽい空間で斑に木が生えており、地面はどこまでも続いている。
「ノア、これから君には自力でその世界から脱出してもらう。がんばってね。」
鬼一の声が聞こえ上を見上げると黄色い空が広がっていた。
進もうにも四方八方同じ風景が続き、どの方向に進めばよいか全く検討がつかない。とりあえず、今向いている方向に歩いていくことにした。
5時間程歩いただろうか、未だに遠くに地平線が見え景色も全く変わらない。頭がおかしくなりそうだ。
ここら辺で一休みしようと腰を下ろした直後、地面が割れ白い堕鎮が3匹這い出てきた。
初めに這い出てきた1匹がノアに襲いかかってくる。ノアは迎え撃とうとエネルギーを巡らせようとするが上手くできない。
(はっ!?なんで…!)
攻撃を避け堕鎮が体制を崩している隙に一目散に反対方向へ走る。
だが、どこまで行っても木々が点在しているだけのこの場所に隠れられる所などない。
(くそっ、どうすれば……。)
堕鎮たちがどんどん距離を縮めてきている。このままではすぐに追いつかれてしまう。
ノアは一目散に走るがとうとう追いつかれてしまい、身体を両断されてしまい気を失った。
目を覚ますと身体は元通りになっていたが場所は変わらず奇妙な白い空間だ。追いかけてきていた3匹の堕鎮もいなくなっている。
「何が起きた。確かに身体を真っ二つにされたはずだが。それに、エネルギーが使えなくなってる…?」
戸惑っていると再び地面が割れ堕鎮が3匹現れた。
(仕方ない。やってみるか!)
先頭の堕鎮の攻撃を避け、脚の関節に蹴りを入れ体勢を崩した。2体目の突進をしゃがんで避け1体目の堕鎮に衝突させ転ばし、3体目の胴に先に一撃蹴りを入れよろけたところにもう一度蹴りを入れた。
堕鎮たちが地面に伏せている間にノアは木の裏に身を隠す。
ノアを見失った堕鎮たちはキョロキョロと周囲を見渡し、逆方向へ歩いていった。
ノアは堕鎮たちが小さくなるまで隠れていた。
「ふぅ、なんとかまいたか。」
ノアは堕鎮たちが行った方向とは逆に進み出す。
「やっぱり素手じゃ倒すことはできないか。しかも3匹でギリギリだな、増えられたら確実に負ける。」
空を見上げ腕を組み目を細めた。
(どうしたものかぁ。脱出と言ってもどこまで行っても同じ風景が続くだけだし。それに、エネルギーが巡らせられないだけじゃない、さっき戦って気づいたが動きすぎると身体を動かしづらくなる。)
何の説明もなくこんな所に飛ばされ、堕鎮が歩いている世界を戦う術もなく彷徨わなければならないなんて、ほんとに嫌になる。
(待て、俺次第で終わるということは、俺次第でいつでもここから元の場所へ戻れるってことなのか?もしかして…!)
ノアは立ち止まり目を瞑ってエネルギーを巡らすことに集中した。
(自分の内と外のエネルギーを感じ取るんだ。そしてそれを自身に集中させる。)
大きく息を吸い大きく息を吐いた。すると身体にエネルギーが湧いてくるのを感じた。
「来る。」
3匹の堕鎮が自分を取り囲むように現れたことに気づいた。3匹は同時にノアに襲いかかってきた。
まず、1体の後ろへ回り込み蹴り飛ばす。2体目の顎に一撃入れ、よろけている間に3体目の頭に蹴りを入れ倒した。
立ち上がってきた1体目の堕鎮にすかさず止めを刺し、次いで2体目を倒した。
「よし!できたっ!」
この世界でもエネルギーを使いこなせたことに歓喜したが、まだ脱出する算段がつかない。
ーー
その頃、鬼一と風花は屋敷でお茶を飲んでいた。
「先生、ノアはどんな感じですか?」
「時間の流れる早さが違うから覗き見るのがやっとなんだけど、うん、今少し見えたけど順調そうだよ。」
「そうですかぁ、良かったです。先生は言葉が足りないことがあるので、ほんとに困惑する時があるんでよねぇ。ノアに1番重要なとこ説明しなかったじゃないですか。」
「自分で気づいてほしいんだよ。その方が身になるからね。帰ってきた時にはきっと、君と同等かそれ以上に強くなっているんじゃないかな。」
「ですね、きっと。ノアは飲み込みが早いから。」
屋敷には暖かな風が吹きゆったりとした時間が過ぎていた。
ーー
ノアは30匹近くの堕鎮を倒した。
「はぁはぁはぁはぁ…キリがないな。相変わらず風景も変わらないし。」
ノアの体力もそろそろ限界が近い。隠れる場所がない以上、早くここから出なければ。
その時、周りの風景が消え、見たこともない場所に移された。
「ここは、どこだ…。なんだこの高い建物。」
ノアの目の前に現れたのは、硝子の窓が沢山あり硬そうですごく高い建物が建ち並ぶ街だった。
ーー
「ーーーっ!」
鬼一は少し険しい顔をした。
「どうしたんですか、先生。」
「…………、同調しているのか…?」
ーー
ノアは多数の堕鎮に囲まれ建物の中に逃げる。
(ここなら隠れる場所も多い。隠れながら1匹ずつ仕留めていこう。)
ノアは1匹1匹着実に倒していく。しかしいくら倒しても数が減っている気がしない。
「先生、なんて所に飛ばしてくれたんだ!もう限界だっ…!」
ドォォォォォォォン!!!!!
ノアは壁を突き破ってきた堕鎮に突撃され向かいの建物まで突き飛ばされた。その衝撃で意識を失っているノアを数え切れない程の堕鎮が包囲する。
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