剣術大会
ノアが剣術の稽古をし始めてから2週間ほどが過ぎた頃、鬼一からある提案をされた。
「剣術大会、ですか?」
「うん。この里では剣術に対する意欲向上を促し、堕鎮に対抗する力を養わせる目的で年に1度剣術大会を催しているんだよ。お酒も飲めるしね。君の成長速度は凄まじい。剣の扱いもだいぶ上達した。」
「剣は友達に習っていたので。かじった程度ですけど。」
「そのお陰もあって君は強くなれた。腕試しとして大会に出てみるといいと思うのだが。どうだろうか。」
「やってみます。今の自分の実力がどこまで通じるのか、知りたいです。」
「よし、大会は3日後だ。準備しておいてね。」
ノアは緊張や不安と同時に高揚感も抱いた。
「やるからには1番だよな。目指せ優勝!」
それから3日後、広場に大きな台が設置された。周りには多くの機械が集まっている。
こんなに大勢の人の前に出たことのないノアはこれまでにないほど緊張していた。その緊張感に割って入るかのように風花の声が聞こえた。
「ノアー!調子どう?」
「風花。うん、けっこう緊張してる。人目は慣れてなくて。」
「まあそうだよね。相手もこの里でトップクラスの実力者たちだからねぇ。でもノアも負けてないと思うよ。けっこう動けるようになったじゃん!?あとは目の前の相手を倒すことに集中するだけ!」
ノアは深く息を吸い長く息を吐いた。
「行ってきますっ。」
「行ってらっしゃい!」
ノアの1戦目が始まる。ノアと相手は舞台に立ち開始の合図を待つ。
「審判は僕、鬼一法眼が務める。みんな頑張ってね。」
地面に座り、すでに酒を飲み始めている鬼一が片腕を上げ、下ろした直後に試合が始まった。
相手が真っ直ぐに走ってくる。
ノアは構え様子を伺う。
「はあっ!」
相手は振りかぶり真っ直ぐに振り下ろし、ノアはその重い一撃をいなし反撃する。
ノアの一撃はすんでのところでかわされ、追撃をする。
ノアの連撃は相手を舞台端まで追い詰めるが、相手も負けじと一手一手重い一撃を当てようとしてくる。
ノアの剣が下方へいなされ体制を崩したところを狙われ、相手の振り上げた剣がノアの頭目掛けて振り下ろされてくる。
ノアは思い切り剣を振り上げ相手の剣を飛ばした。
相手がよろけた隙をつきノアは剣先を相手の喉に向けた。
「そこまで!この勝負、ノアの勝利。」
歓声が上がる。その声を聞き、ノアはまず1勝したのだと自覚した。
他の試合が行われている間、ノアは観客の後ろの方で試合を眺めていた。左側から足音が向かってくるのが聞こえ、この気配は風花だろうと予測した。
「おめでとうノア。まずは1勝だね!」
「ありがとう。鬼一先生や風花のお陰だよ。特に風花の模擬戦が効いたのかもね。ありがとう。」
「どういたしまして。でも私はノアと1度戦ってみたかっただけだからなぁ。それに、結局頑張んなきゃ今の結果は無いし、頑張ったのはノアなんだから、1番お礼を言わなきゃいけないのは頑張った自分自身なんじゃない?」
「なるほど。風花は少し変わった考え方をするんだね。ありがとう!」
「一言余計だぞぉ!あ、終わったね。次でしょ?頑張んなよ。」
ノアは2回戦も勝ち続け、3回戦に駒を進めた。
だが、3回戦目の相手はこの里最強の機械の四という女性だそうだ。闘志が身体から溢れ出しそうなほどに感じられる。
鬼一の腕が振り下ろされる。
相手はこのまま真っ直ぐに距離を詰めてきそうだ、と思った次の瞬間、すでに四はノアの目の前にいた。
(ーーーーっっ!!??)
首を狙った一撃を間一髪で避け次に備え構え直す。しかし四の姿はどこにも見えない。
「そこまで。勝者、四。」
(えっ?)
ノアは何が起きたのか分からず混乱し、咄嗟に後ろ振り向いた。するとこちらを見下ろす四が立っていた。
四はノアに手を差し伸べた。ノアがその手を握ると四はその手を引っ張りノアを立たせた。
「この1ヶ月近くで別人のように強くなったね。次は楽しめそう。期待してるよ。」
「あ、はいっ!」
その後も大会は続き四が優勝した。
大会が終わったあとはいつも食ったり飲んだりのお祭り騒ぎになるらしい。
ノアも自分の分の食べ物を待ち椅子に座る。すると横に風花が座った。
「お疲れ様!どうだった?楽しめた?」
「うん。緊張もしてたんだけど、ワクワクもして。みんなの動きも見れて参考になった。」
「それは良かった。あ、あと四に気に入られてたね〜。あいつ人を気に入るとかほんっとに珍しいから、もしかしたら里にいる間は何回か模擬戦挑まれるかもよぉ?」
「え!戦えるのは参考になるから嬉しいんだけど、実力差がありすぎて…。」
「まぁねぇ。今のままじゃ勝てないわな。でも、ノアは絶対もっと強くなる!それは先生も私も確信してるっ!」
ノアは真っ直ぐに向けられた期待を受け、照れくさくなった。
「ということで、あそこで酔いつぶれてる先生から伝言。明日からの訓練は特別メニューをするから心身ともにしっかり休めておくように、だってさ。」
(特別メニュー。殺される……?)
「大丈夫だって!そこそこきついかもしれないけど、今まで頑張ってきたノアならきっと大丈夫!」
不安な気持ちが表情に出ていたのだろうか。その後も風花は励まし続けてくれた。
その夜は早くに床に就き、言われ通り明日に備え身体を休めることにした。
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