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エネルギーの使い方

広場では昨夜の宴の後片付けをしている。


ノアと鬼一は屋敷裏の竹林にいた。


「じゃあまず、機械は無尽蔵のエネルギーで動いているのは知っているかい?」


「はい。ここまで来る間に乗ったヘリコプターという乗り物にも使っていたらしいですが。」


「ほぉ、それは興味深い。今度ハイドに見せてもらおう。できればバラさせてほしいが、今は忘れよう。話を戻すよ。堕鎮たちと戦う機械たちはそのエネルギーを使って身体能力を上げている。それを今から君に習得してもらう。」


エネルギーを自分の意思で使ったことなど1度もない。そんな自分に使いこなすことができるのだろうか、そんな考えが脳裏を過った。


「大丈夫だよ。最初から上手くできた人を僕は見たことがない。時間がたっぷりあるわけではないけど、焦らず落ち着いてやってみよう。落ち着くのが肝心だよ。」


ノアは深く深呼吸をした。そして鬼一に促され岩の上に腰を下ろした。


「目を瞑り深く息を吸ってごらん。そして外界からの情報を遮り、己の中の情報に感覚を研ぎ澄ませて。」


ノアは呼吸を整え自分の中の意識に集中する。鳥の鳴き声や風が草を揺らす音が聞こえ、岩に体温を奪われた身体を陽の光が温める。次第にその音も熱も感じなくなり、身体の内側から何かが込み上げてくるのを感じる。


「そのまま集中し続けてみて。」


その日はそれ以上何事もなく1日が終わった。


次の日もその次の日も岩の上に座り続け半月が過ぎた頃、自分の中のエネルギーを感じ取れるまでにはなった。


「うん、いい感じだね。早い方だと思うよ。遅いと3ヶ月かかる人もいるからね。あとは感じ取れるようになったエネルギーを意識的に身体中に巡らせられるようになればいいんだけど、これが難しいんだよねぇ。感じ取れるようにはなっても使いこなせない人がけっこういるんだ。頑張ってね。」


ノアは岩の上に立ち、エネルギーを全身に巡らせるイメージをする。しかし、エネルギーが身体を巡る感覚は全くせず、1日が終わった。


その後1週間が経っても感覚がつかめなかった。


「まぁそんなもんだよ。少し手助けしてあげるね。」


そう言い鬼一はノアの背中に触れた。すると、自分の体の中でエネルギーが循環するのをノアは感じた。


「少し君のエネルギーをいじってみたよ。これでエネルギーが流れる感覚は分かったかな。」


「はい、ありがとうございます。頑張ってみます。」


それから数日が経過した。ノアがいつも通り岩の上で意識を集中させていると風花がやってきた。


「やぁ!大変そうだね。」


「はい。微量ですがなんとかエネルギーを巡らせられるようになったんですが、長続きしなくて。」


「んーそうだねぇ。こればっかしは慣れしかないからなぁ。感覚的な話だし。でも感覚つかむの早いからセンスはあると思うんだよね。……そうだ!私と少し模擬戦してみよ?」


その突飛な提案にノアはひどく驚いた。戦闘経験が全くないノアは非常に混乱した。


「それはいい案かもしれないね。」


鬼一が屋敷の方から歩いてきた。


「鬼一先生!?俺、戦闘なんてやったことないですよ?」


「ちょうどいいじゃないか。いつかは戦闘訓練もしなければいけないからね。風花と模擬戦をしてエネルギーの使い方と戦闘技能が伸びれば一石二鳥じゃないか。」


(このニコニコ顔がだんだんと怖くなってきた…。)


ノアが横を見ると風花が目を輝かせていた。「早く始めよう!すっごい楽しみ!」という声が聞こえてきそうだ。


「早く始めよう!すっごい楽しみ!」


(言った…。)


「風花は少々戦闘狂じみたところがあるからね、気をつけた方がいいよノア。風花も模擬戦をするときは手加減をすること、いいね。興が乗ると手がつけられなくなるからね。」


「わ、分かってますよぉ先生。きちんと気をつけるので、ノアと模擬戦していいですか!?」


「あぁ、いいとも。ノア、私が見てるから1度模擬戦をしてごらん。」


「わかりました。やってみます。」


3人は屋敷の裏庭へ移動した。


ノアは緊張のあまり脚が震えてきたがしっかりと地面を踏みしめ、唾を飲み込んだ。


「では、始め。」


鬼一の合図と共に風花が一直線にノア目掛けて突進してきた。


ノアは腰を落とし、構え、まずはどう攻撃してくるか様子を見た。


まずは右ストレート。ノアはギリギリで避けカウンターを狙うが風花の蹴りの方が速く、顔に当たりそうな脚を両腕で防ぐ。


続いて胴を狙ってきた打撃を防ぎ、その後の連続攻撃を紙一重で避けた。


「いいねぇ、動体視力と反応速度は文句なし!ちょっとギア上げちゃおうかなっ!」


風花の攻撃速度が上がった。もうほとんど見えず、後ろに下がり続けるので精一杯だ。


「ノア、これも訓練だよ。身体の中のエネルギーを全身に隈なく巡らせるんだ。それができたら一瞬でもいい、エネルギーの出力を上げるんだ。エネルギーを出し尽くしてしまうくらいに思い切りしてごらん。」


鬼一の説明を聞き、やけくそでも1回くらいは成功させたいと思い、全身に力を入れエネルギーを巡らせた。


すると、身体が少し軽くなり攻撃が避けやすくなった。


(これを、持続させるんだっ)


風花の攻撃を防げるようになり、反撃する余裕が生まれ始めた。


だが全く当らずかすりもしない。ノアの攻撃は全て軽々と避けられてしまう。


(出力を、上げるっ…!!)


次の瞬間、ノアの速度が急に上がり拳が風花の左肩をかすった。


「やるねっ、ならっ!」


「そこまで!」


笑みを浮かべながらノアに突進していく風花の右肩を掴み鬼一が止めた。鬼一がいつの間に風花の後ろに移動したのか、ノアには全く見えなかった。


「風花、興奮しすぎだよ。落ち着いて。」


「はい、すみません。つい…。」


「ノア、なんとなく分かったんじゃないかな。エネルギーの使い方。」


鬼一がノアに微笑みかける。


「はい。一瞬でしたけど、エネルギーが自分の力を底上げしてくれたのを感じました。」


「うん。やっぱり模擬戦を許可して良かった。明日からは剣術の稽古もしていこう。」


ノアは自分の成長に驚き、そして喜んだ。

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