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京の里②

ノアは鬼一に畳の部屋へ案内された。


「まあ座って。とりあえず君の身体を調べてみるよ。」


鬼一はそう言いノアの背中に手を当てて目を閉じた。


外から涼しい風が吹き抜け、微かに入る陽の光は暖かい。小鳥の鳴き声は不安定な心を鎮める自然の音楽のようだ。


「終わったよ。」


鬼一は立ち上がりノアの前に座った。


「結論から言うと、よく分からない。心当たりが無いわけでもないんだけど、確証が無くてね。ただ、その異常について君の中に原因があるわけではないと思う。君の身体の隅々まで探ってみたけど、君の身体は正常だ。やはり、これはイヴに聞いてみるしかないかもしれないね。」


「そうですか…。わかりました。」


「ということで、予定通りイヴが見つかるまでノア君はこの里に滞在してもらう。いいね?」


「はい。よろしくお願いします。」


「部屋を用意したから風花に案内してもらって。夜にまた風花が迎えに行くからそれまで少し休むといいよ。」


鬼一の屋敷から出ると風花が待っていた。


「思ったより早かったね。その感じだと先生でも原因は分からなかったか。じゃあ部屋に案内するね!」


風花は部屋まで行く途中、ノアにこの里を案内した。


この里には300人近くの機械たちが住んでいるらしい。家屋は全て木造の3階建てになっており、里の入口から鬼一の屋敷に繋がる階段までの直線の道沿いにいくつも建っている。


「そういえば、この里の機械たちは鬼一さんや風花さんが機械じゃないってことを知っているんですね。」


「うん。最初から先生も私もこのまんまだよ。ハイドは隠してるみたいだけどね。威厳がどうのって、うちはそういうの気にしてないからね。」


そうこう話しているうちにノアが泊まる建物に着いた。里の入口から近い建物の3階の畳の部屋に案内された。


「じゃあ夜にまた来るから!ごゆっくり〜!」


ノアは窓を開け部屋に山の空気を入れた。窓の外には1面大自然が広がり程よい陽の光が差し込んでくる。


ノアは大きい背伸びをし、寝転がった。


これまでの数日間の旅を思い出し、怒りとも悲しみとも取れる感情が湧き上がり叫び出しそうになるのを堪えた。


畳と風の匂いを嗅いでいるうちにノアは落ち着くように眠った。

ーー



「ノアー!こっち来いよ!魚いるぞ!」


ガブリエルが小川で魚を眺めながらノアを呼んでいる。その横にはトーマスもいる。


「今日の晩飯は魚で決定な!ガブリエル、3匹ちゃんと捕れよ!」


「トーマス、お前も手伝えよ!」


「俺は調理担当だからな、捕るのはお前らの仕事だ。」


「だそうだぞノア、さっさと捕れ。」


「俺は眺めるの担当だから、頼んだよガブリエル。」


どうやら3人は今晩の食料調達をしているようだ。この後どうなったかはよく覚えていない。ガブリエルが魚を捕るのが下手すぎて1尾を3人で食べたんだっけか。3尾捕れたんだっけか。


目の前が霞み始めた。覚醒が近いのだろう。もう少しこの夢を見ていたい。ずっと起きたくない。

ーー


ノアは肌寒く感じ目を覚ました。


外はすでに暗くなっており、冷たい風が部屋の中に流れ込んでくる。


「ノアくーん、開けるよー!」


風花が迎えに来たみたいだ。


「起きてるね。よし!行くよ!」


「どこに行くんですか?」


「ノア君の歓迎会をするんだよ。まぁ、先生が呑みたいだけだろうけどね。」


2人は建物を出て里の広場に向かった。そこには焚き火を囲み大勢の機械たちが集まり楽しそうに騒いでいた。


「お〜、やっと来たか風花!先に始めてるよ!」


「先生もう呑んでるんですか?まぁいいですけど。ノア君!食べ物も飲み物もいっぱいあるから好きなだけ食べてよ!?」


ノアが火の傍に食べ物を取りに行くと他の機械が数人周りに寄ってきた。みんな優しく気さくで、もっと食べろもっと飲めと色々と持ってきてくれる。


ノアはすぐにその空気に溶け込めた。国を出てからここまで安心できたのは初めてだ。


「ノア、楽しんでるようでなにより。少し話があってね。」


鬼一法眼が酒を片手に近づいてくる。


「なんでしょうか。」


「君はこの先必ず、自分自身の力のみで切り抜けなければならない状況に出くわす。その時のために、明日からは君に強くなってもらうための訓練をしてもらう。いいかい?」


「はいっ。」


逃げることしかできないのはもう嫌だと強く思ったノアは、1呼吸の間も置かず即答した。


祭り騒ぎは明け方まで続き、昼からノアの訓練が開始された。

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