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温泉ツーリング同好会へようこそ  作者: 秋山如雪
第2章 ほったらかし温泉
6/41

6湯目 温泉と彼女たちと(前編)

 最初は、「こっちの湯」に向かうことになった。

 まどか先輩によれば、こちらは富士山が真正面に見えるというロケーションらしい。

 もっとも、私自身はこの温泉には来たことがなかったが。


 そして、脱衣所から温泉に向かうと。


 洗い場は意外と狭く、内湯も申し訳程度にしかなかった。

 もっとも、まどか先輩に言わせれば、


「ここの醍醐味は、なんと言っても露天風呂だからな」

 だった。


 互いに手早く、体を洗い、髪を洗うが。

 すぐ隣にいる、フィオの身体が、驚くべきほどに、「綺麗」だった。きめ細やかで色白の肌。

 西洋人の血を引いているため、違和感のない美しいブロンドの髪。


 文字通り、人形のようだ。

 私が思わず、見とれていると、


「何、やってるの、瑠美? 速く洗わないとダメネ」

 と、笑顔でたしなめられていた。


 洗い終わると、そのまま内湯に向かうか、と思いきや、まどか先輩も琴葉先輩も、フィオもいきなり扉を開けて、外に出てしまった。


 露天風呂だ。

 後に続いた私が見たものは。


 丸太の縁で仕切られた、小さな露天浴槽があった。意外なくらいに小さかった。

 この二つには意味があるのか、と思い、眺めていると、すでに来たことがあるまどか先輩は、迷わずに右側に、琴葉先輩は同じく迷わずに左側に、フィオは一瞬迷ったような仕草を見せたが、やはり左側に向かった。


 1対2だ。私も左側に向かった。


 そちらは、ぬるいお湯だった。

 これはこれで気持ちいいのだが、まどか先輩は、


「お前ら。揃いも揃って、ぬるいお湯かよ。風呂なんて、熱い方がいいに決まってる」

 と、わずかに不満そうに顔を歪めていた。


 それを見て、

「まどか先輩、江戸っ子みたい」

 と思わず呟いていた私に、琴葉先輩は、


「やっぱ大田さんもそう思うのね。まどかったら、昔から熱いお湯ばかり入るの。わたしは、のぼせるから、これくらいのお湯の方がいいわ」

 と嘆息していたが、よく見ると、メガネを外した彼女もまた綺麗な顔立ちをしている。おまけに長身で、手足が長い。

 モデル体型にも見える。


 おまけにその隣のフィオは、誰もが振り返るくらいの、まるでアイドルのような美少女だ。

 つくづく綺麗な子が多い、同好会だと思った。


 目の前には、富士山が見えたが、その日は曇っており、頂上付近は雲に覆われていたが、甲府盆地は見下ろすことが出来るのだった。

 お湯としては、ヌルヌルとしており、無色透明。ただ、はっきりとした硫黄臭を感じ、逆に消毒臭は感じなかった。


 しばらく浸かっていたが、やがて琴葉先輩が、

「大田さん。この下にも浴槽があるのよ。行ってみない?」

 と私を誘ってきた。


 よく見ると、下にもまだ浴槽があるようだったが、こちらからは行けないようだ。

「はい」

 頷くと、フィオもまたついてきた。


 ところが、まどか先輩だけはついてこない。

「放っておきましょう」

 呆れたような表情で、琴葉先輩は、一瞬だけ彼女の方に目をやった後、脱衣所方面に戻って行った。


 ついて行くと、脱衣所のウッドデッキ側に降りる石階段から下に降りて行った。


 そこには、軽く2、30人は入れるであろう、広い浴槽があり、岩をダイナミックに組んだ大きな露天風呂が広がっていた。


 そこに入ってみると、浴槽の温度は、上の左側の浴槽。つまり私と琴葉先輩とフィオが入った、40度くらいのぬるいお湯と同じように思えた。


 だが、何かが違う。

 そう思った私は、岩の上にある竹筒から、浴槽に向けて、お湯がダイナミックに注がれていることに気づいた。


 おもむろにそこに近づいて、下に手をかざす。


 思ったよりぬるかった。

(これは、真冬はちょっと厳しいかも)

 そう感じたのは、湯口付近はそこそこの温度が保たれているが、少し離れると、思いきりぬるいからだ。


 何故、まどか先輩がこちらに来なかったのかがわかる気がした。


 客自体は、日曜日ということもあり、そこそこ混んでいた。客層も親子連れや友人同士、お年寄りなど様々だったが、予想していたよりは、「芋洗い」状態ではなかったのが幸いした。


 ところが、この後、予想外の展開になっていくのだった。

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